「2021年の聖火ランナー」として走るための決意したこと

社会 スポーツ 東京2020

東京2020オリンピックの聖火ランナーに内定していた筆者が、五輪開催が1年延期されたことを受け、複雑な感情と2021年の開催に向けた意気込みと台湾との交流にかける思いをつづった。

石川県と台湾のつながり

私が聖火を持って走る石川県は台湾と深いつながりがある。金沢市出身の八田與一が戦前の台湾・台南で烏山頭ダムを建設して農業振興に貢献し、毎年、彼の命日には石川県から多数の人が墓前祭に訪れている。2020年は、奇しくも烏山頭ダム着工100年、完成90年となる節目の年となり、大々的に記念事業を開くことも予定されていた。

金沢市議会と台南市議会は友好交流協定を結び、台南市は金沢市や加賀市と友好関係を結んでいる。私は台南市初の親善大使でもあるので、台湾と石川をつなぐ役割を微力ながら果たしてきたつもりだ。

石川県と台湾の間には直行便が飛んでいる。北陸新幹線も開通し、交通の便が一段とよくなった「石川県」は、憧れの観光地として定着しつつある。温泉旅館の加賀屋の知名度も高い。ただ、例えば、風光明美な能登半島など石川県全体に足を伸ばす台湾人はまだまだ少ない。金沢と能登半島の中間にあり、古い歴史と文化に恵まれた中能登町のことをもっと台湾人に知ってもらいたい。

台湾への恩返し

振り返れば、2013年の9月、56年ぶりの2回目の東京五輪——2020年東京五輪——が決まった。滝川クリステルさんが行ったプレゼンスピーチでの「お・も・て・な・し」が流行したことは大勢の記憶に残っている。2011年に起きた東日本大震災による悲哀を背負った日本は、今回の東京五輪を「復興五輪」と位置づけ、7年間、希望の光として進んできたようにも思える。東日本大震災においては、台湾から莫大な義援金を受け、物資面でも、精神面でも大きな支えとなってくれた台湾人には感謝の言葉しか思い浮かばない。

今回の新型コロナウイルスをめぐっては、2003年のSARSを経験したことのある台湾は、防疫という点で日本よりも一歩も二歩も前を進んでおり、その対応策は世界から称賛されている。真の友人として、日本を心配してくれている台湾に応えるためにも、1日も早い新型コロナ問題の収束を切に願っている。そして2021年は、大勢の台湾人と一緒に東京オリンピック聖火ランナーとして走り、中能登町と台湾を世界に見てもらいたい。

バナー写真=トーチを掲げる柔道男子の野村忠宏さん(右)とレスリング女子の吉田沙保里さん、2020年3月20日、宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地(時事)

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