インタビューで垣間見たオードリー・タンの素顔

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近藤 弥生子 【Profile】

台湾のデジタル大臣、オードリー・タン(唐鳳)氏に今、日本から熱い視線が注がれている。筆者は2019年12月に公開されたYahooニュースの特集記事『「国民が参加するからこそ、政治は前に進める」――38歳の台湾「デジタル大臣」オードリー・タンに聞く』で彼女へのインタビューを行った。そこで垣間見たオードリーさんの素顔とは。

「オードリー・タンは台湾の希望」 

特集記事への感想で、「オードリーさんのような大臣がいる台湾がうらやましい。」という声を数多くいただく。

確かに、台湾人は口々に「オードリー・タンは台湾の希望」と語る。

それは彼女が天才的な頭脳や技術を持ちながらも「公僕の公僕」として公益のために身を投じ続けていることに対する賛辞だ。

オードリーさんは常に特定の団体に帰属するということはなく、官民や、意見の異なる人々がスムーズに合意に至れるようサポートするといったスタンスで政治に参加している。

それは2016年に史上最年少で入閣する前、2014年の「ひまわり運動」で民間と議会の対話をデジタル技術でバックアップした頃からずっと続いている。

そして、筆者は日本にもオードリーさんのような人材がきっと存在すると思っている。

肝心なのはそのような人材が、たとえ皆が思い描く政治家のイメージと幾ばくか違っていたとしても、より良い社会のためにその人物を起用できるかということなのではないだろうか。

オードリーさんが起用される台湾とは

台湾に移住してから「台湾は常に、手に持っているカードで精一杯戦っている」と感じている。

強国・中国の存在を常に感じ、世界から国として認められないことによる不利益を飲み込みながらもくじけることなく、自分たちにどれだけ実力があるかを国民や世界に対して示している。

オードリーさんの実績や能力に注目し、確固たる姿勢で大臣として迎え入れる台湾政府の姿からは、そのトップに立つ人々の柔軟性と、台湾の実力を高めることを最優先事項に据えた強い意思を感じさせる。

日本の内閣府に相当する台湾の行政院(筆者撮影)
日本の内閣府に相当する台湾の行政院(筆者撮影)

そして台湾社会も、そんな政治から目を離さずに見つめている。

台湾のリベラルな社会を守るために必要なものは支持するし、オードリーさんのように次々と実績を残す人物を起用した政府は肯定されていく。

自分と違うものを許容する社会と、国や自治体を政治家任せにするのではなく、自分たちが参加して作るのだという国民一人ひとりの強い当事者意識。

台湾は、それらが筆者自身に欠けていたということを気付かせてくれた。

バナー写真=行政院内にあるオードリーさんの執務室入口にて。左から2人目が筆者、3人目がオードリーさん(筆者提供)

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台湾台北在住の編集・ライター。日本語・中国語(繁体字)でのコンテンツ制作を行う草月藤編集有限公司を主宰。雑誌『&Premium』で「台北の朝ごはん」「日用品探索」を連載中。プライベートでは二児の母。ブログ「心跳台灣」を運営(www.yaephone.com)。

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