インタビューで垣間見たオードリー・タンの素顔

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近藤 弥生子 【Profile】

台湾のデジタル大臣、オードリー・タン(唐鳳)氏に今、日本から熱い視線が注がれている。筆者は2019年12月に公開されたYahooニュースの特集記事『「国民が参加するからこそ、政治は前に進める」――38歳の台湾「デジタル大臣」オードリー・タンに聞く』で彼女へのインタビューを行った。そこで垣間見たオードリーさんの素顔とは。

クラウドでの記事確認に、本人が現れる

特集記事が公開される前、オードリーさん本人に内容確認を行った時のこと。

筆者はクラウド上で同時編集できる「Googleドキュメント」を使用してファイルを提出した。

すると、ドキュメント上にオードリーさんが降臨したのだ。

同じドキュメント上にオードリーさんがいる。そして降臨するやいなや、すさまじい速さで原稿を確認し、コメントを残していく動きが手に取るように分かった。

オードリーさんがコメントで残してくれた訂正箇所について、何度かドキュメント上でやりとりをすると、彼女はきっちり「解決」ボタンを押し、颯爽とドキュメントを去っていった。

小さなところまで真摯に仕事をされる姿勢に、完全に敬服してしまった。

確認のやり取りは公開直前まで続き、細部までチェックしてくれた(筆者撮影)
確認のやり取りは公開直前まで続き、細部までチェックしてくれた(筆者撮影)

IQではなくEQで人を見る台湾 

オードリーさんが日本で紹介される際、常に取り沙汰されるのが「IQ180」というフレーズだ。だがここ台湾では「天才」という表現はされても、IQを取り上げることはあまりない。

過去にオードリーさん自身「大人になってからIQ(知能指数)を語ることはあまり意味をなさない」と語っていることが影響していると思われるが、筆者が台湾で感じる「台湾人は人物を見るときにEQ(Emotional Quality:心や感情の知能指数)を重視する」といった点も、少なからず影響していると考えられる。

どんなに頭が良くても、相手を尊重した言動が取れない人間は「EQが低い」とみなされ、台湾でここまで支持されることはないだろう。

筆者も今回紹介したようなエピソードの節々に、彼女のEQの高さを感じた。

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台湾台北在住の編集・ライター。日本語・中国語(繁体字)でのコンテンツ制作を行う草月藤編集有限公司を主宰。雑誌『&Premium』で「台北の朝ごはん」「日用品探索」を連載中。プライベートでは二児の母。ブログ「心跳台灣」を運営(www.yaephone.com)。

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