インタビューで垣間見たオードリー・タンの素顔

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近藤 弥生子 【Profile】

台湾のデジタル大臣、オードリー・タン(唐鳳)氏に今、日本から熱い視線が注がれている。筆者は2019年12月に公開されたYahooニュースの特集記事『「国民が参加するからこそ、政治は前に進める」――38歳の台湾「デジタル大臣」オードリー・タンに聞く』で彼女へのインタビューを行った。そこで垣間見たオードリーさんの素顔とは。

「開かれた政府」を体現する敷居の低さ

デジタル大臣という身分にありながら、人との間に壁を感じさせないのは彼女の素晴らしいところだ。

オードリーさんは毎週水曜日、台北市内の「社会創新実験センター」という場所にいることになっており、誰でも会いに行くことができる。午前10時から午後2時までは予約なしで自由に会いに行くことができる。午後2時から午後5時までは予約制で、こちらから予約を申し込める。

これは「開かれた政府」を自ら実践していると言って良い。

日本の国会に相当する行政院の購買部入り口。一般客も自由に入れるようになっている。Yahooニュース特集でオードリーさんが買い物をしているのはこちらの場所だ(筆者撮影)
日本の国会に相当する行政院の購買部入り口。一般客も自由に入れるようになっている。Yahooニュース特集でオードリーさんが買い物をしているのはこちらの場所だ(筆者撮影)

Yahooニュースの特集取材で、編集を担当した神田憲行・編集部デスクは、自身は多数の著書を持つ取材経験豊富なノンフィクションライターだ。そんな神田氏も自身のツイッターでオードリーさんについての感想を「取材申請して2日でOK、2時間の予定の取材時間をさらに1時間延長させてくれる。人との敷居が非常に低い。なるほど、傑物だと思いました」と語っている。

また、オードリーさんはこちらの質問に耳を傾け、それに対する情報を圧倒的なボリュームで回答してくれる。

それには深いレベルでヒアリングを行う高度な「傾聴」と、想定を超えた回答で相手に気付きを与える能力が必要だ。米アップルや台湾の電気製品メーカーBenQといった大企業でコンサルタントとして活躍するオードリーさんの姿を思い浮かべさせられた。

受け答えの速さもさることながら、話すスピードも相当なものだった。

「目の前に知の巨人がいる」そう思いながら夢中でインタビューに臨み、2時間の予定が3時間に及んだ。取材後は頭の中が情報で溢れていた。

行政院内の廊下をオードリーさんとともに歩く。身長180センチの彼女は歩くのも速かった(筆者撮影)
行政院内の廊下をオードリーさんとともに歩く。身長180センチの彼女は歩くのも速かった(筆者撮影)

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台湾台北在住の編集・ライター。日本語・中国語(繁体字)でのコンテンツ制作を行う草月藤編集有限公司を主宰。雑誌『&Premium』で「台北の朝ごはん」「日用品探索」を連載中。プライベートでは二児の母。ブログ「心跳台灣」を運営(www.yaephone.com)。

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