未曾有のコロナ危機にも「台湾式」の明るい対処法

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台湾政府のコロナ対策が注目されているが、台湾社会もまた、未曾有の危機をいかに乗り切るかについて、知恵を絞った取り組みを続けている。不眠不休で患者を助ける医療関係者や、営業面でダメージを受ける企業に対して人々の善意による支援の輪が広がり、社会が荒むことを食い止める好循環が起きている。

善意の行動がしやすい台湾

台湾では危機が起きるたびに多くのボランティアや寄付が行われる。個人によるボランティアもそうだが、台湾と日本との違いとして企業が支援活動に積極的であるように思う。これまで紹介した支援活動も個人ではなく企業または事業者によるものだ。寄付に関しては税金控除制度もある。

2月初旬、医療機関へのマスク不足が明らかになってきた時期に、経営する会社で備蓄しているマスクのうち1カ月分の1000枚を台南市医師会に寄付した。決して大きな数量ではないが、知り合いのマスコミ関係者や政治関係者から、政府管理となっているマスクを大量に持っていたことで逆に批判を浴びる可能性があると心配された。

しかし、早い段階から商業施設内の飲食店ではマスクの着用が強く促されており、マスクがなければ営業停止に追い込まれる可能性もあったことから危機管理としてスタッフへ支給するマスクの備蓄を確保するのは飲食企業として当然である。実際にマスクが政府管理に移行したばかりの混乱期では、すぐに撤回されたとはいえ、台湾当局は、企業に対し従業員にマスクを支給するのは義務であり、支給を拒めば罰金となると発表している。

また、私が備蓄していたマスクが日本で購入したものであったことから、日本もマスク不足であり日本で購入したマスクを台湾の医療関係者へ寄付する行動は、誤解が生じ反発を招く可能性があるという指摘も受けた。なぜこれほど心配されたかというと、台湾のネット民の反応は苛烈だからだ。いったん炎上すればそれはマスコミ媒体へも伝染し大きな批判を招きかねない。時に事業停止に追い込まれることさえある。

しかし、私は台湾人の良心と常識を信じていた。私のこれまでの経験では台湾人、台湾のマスコミは正しい善意の行動を売名行為だといったりして非難したりしない。逆にその行動の意義や背景を正しく理解、判断し応援してもくれる。実際にこの件がニュースとなった後、企業などから医療機関にマスクを寄付する動きが出始め、偶然だがその日の夜に台湾当局が医療機関へのマスク配給量を拡大することを発表した。

その他にも旧正月明けから不眠不休で国民のためにマスクを生産し続けているマスク工場スタッフへの炊き出しも行った。これはマスク製造工場のスタッフの努力と奮闘が台湾のマスク供給を支えており、その貢献は医療機関にも劣らないからである。なおこの活動には私の会社以外にも台南の有名店である異人館や永楽焼肉飯、ドリンクスタンド大手の迷客夏も賛同し2日間で各店の人気メニューで合計400食とドリンク400杯を提供した。

余談であるが、この活動後に多くの知り合いの飲食業社から「なぜ声を掛けてくれなかったのか」という連絡をもらった。新型コロナウイルスの影響で業績に大きな打撃を受け、経営的に苦しい状況でも自分のできることで頑張っている人を支援する――。台湾にはそのような文化が根付いていると思う。

台湾の大手ドリンクスタンド迷客夏もマスク工場スタッフにドリンク400杯を無料提供した(筆者撮影)
台湾の大手ドリンクスタンド迷客夏もマスク工場スタッフにドリンク400杯を無料提供した(筆者撮影)

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