台湾の「先手防疫」と日本の「ホトケ防疫」、違いはどこから来るのか?

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世界から称賛を集めている台湾の新型コロナウイルス対策。逆に日本の方はその対応の緩さや遅れから、台湾の人々に「ホトケ防疫」ではないかと心配されている。台湾と日本の違いを、台湾から考えてみた。

世論ファーストの台湾

こうした日台の対応の違いは、なぜ生じたのだろうか?一番の理由は、各々の政治がどこを見ているかという話に尽きると感じる。

例えば、3月4日に中国の習近平国家主席の訪問が延期されたと同じ日に、中国からの入国制限が決定されたのは象徴的だ。日本の政治はこれまで、東京オリンピックや国際的な体裁、他国の顔色を見ながら対策をしてきた(あるいはしなかった)ように筆者の目には映る。

一方で、台湾の政治は明らかに「国民」を見ている感がある。台湾の有権者がそれだけ厳しいからだ。蔡英文政権は2018年の統一地方選挙で大敗した苦い経験もあり、少しでも手を抜けば世論によって政権を追われる緊張感を持って事に当たっているのが、ひしひしと伝わってくる。

おかげで、今年1月に再選を決めたばかりの蔡政権のその後の支持率は54%、防疫対応満足度は83%と、政府への高い信頼感となって表れている。自分が選んだ政府がさっそく高いパフォーマンスを発揮してくれている、そのことへの台湾有権者の満足感がはっきりと分かる。

しかし、社会の制度設計が全く異なる日本において、台湾の手法をそのまま取り入れることには、慎重になる必要がある。例えば、SARSのときに大型の院内感染が起こった事例を踏まえ、台湾では医療従事者の出国を禁止する方針が打ち出されたが、医療従事者は人権侵害と反発した。

台湾の化学兵が中国武漢市からの帰国者の荷物を消毒(中央流行疫情指揮中心提供)
台湾の化学兵が中国武漢市からの帰国者の荷物を消毒(中央流行疫情指揮中心提供)

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