有縁千里来相会(縁でむすばれ、千里を越えて)――台湾に嫁いだ日本人妻たちの百年(下)

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栖来 ひかり 【Profile】

先輩たちが勝ち取ってくれた成果

その後も「居留問題を考える会」は移民法への働きかけを続け、当初掲げた「永久居留権」「日本人の台湾への帰化許可」「台湾人の母親を持つ子供の台湾国籍の取得(それまでは父系血統主義で、父親が台湾人の子供のみ台湾国籍が取得できた)」「全民健康保険への個人加入」「労働ビザなしで仕事ができる」という目標について、仲間の外国人グループらと協同した活動により法制度が確立していった。

わたしが台湾で少しばかりの印税を得たり講演活動をしても法的問題は生じることなく、病院に行けば世界一ともいわれる皆保険制度で安価な治療が受けられる。当たり前のように享受してきた今の居留環境だが、実はこれらが、多くの先輩たちの手によって勝ちとられた成果なのだと知る機会は少ない。

現在、「居留問題を考える会」は会員数480人を超える大所帯となったが、いまだ外国人には適用外の法制度などもあり、まだまだやることは多いと大成権さんは言う。 

「まるで、お悩み相談所かと思う時もあります。モラハラや離婚についてなど、しとしと雨の続く冬には特に会員からの相談が増えますね(笑)」

「居留問題を考える会」会長の大成権真弓氏(筆者撮影)
「居留問題を考える会」会長の大成権真弓氏(筆者撮影)

『二重国籍と日本』(ちくま新書、2019年)
『二重国籍と日本』(ちくま新書、2019年)

在台日本人が陰ながら深く関わってきた台湾の移民政策は、現在、アジアの中でもトップクラスと言われている。特に外国人配偶者への配慮に関しては、2005年より10年を期限として設置された「外籍配偶照顧輔導基金」(外国籍配偶者ケアサポート基金)に通算で 30 億元(日本円で約120億円)の資金が投入された。16年以降は「新住民発展基金」と名称を変えて毎年3億元程度の予算が計上され、多言語情報ウェブサイトの充実や、現地の言葉や台湾社会について学べる移住者向けの無料講座が各自治体の小学校で開かれるなど、調和の取れた多文化社会の構築に寄与している。しかし、DV(ドメスティックバイオレンス)や東南アジアから来た母親を持つ子供が学校でイジメを受けるなど、問題も少なくない。大成権さんがインタビューの最後に話してくれた、こんな言葉が印象的だった。

「移住者の次世代の子供たちは、ルーツの国との懸け橋となってくれる存在。彼らは国にとっても多くの可能性を秘めた宝物です。それをきちんと認識し、生かしていく教育方法や制度作りを進めることが、日本でも台湾でも、これからますます重要になってくるのではないでしょうか」

バナー写真=「大根の会」の創立メンバーの写真(筆者撮影、写真は1号会員の松下道子さん提供)

参考資料

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台湾在住ライター。1976年生まれ、山口県出身。京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。台湾に暮らす日日旅の如く新鮮なまなざしを持って、失われていく風景や忘れられた記憶を見つめ、掘り起こし、重層的な台湾の魅力を伝える。著書に『台湾と山口をつなぐ旅』(2017年、西日本出版社)、『時をかける台湾Y字路~記憶のワンダーランドへようこそ』(2019年、図書出版ヘウレーカ)、台日萬華鏡(2021年、玉山社)。 個人ブログ:『台北歳時記~taipei story

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