台南に婿入りした日本人公務員は結婚式で何を考えたか

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阿部 真行 【Profile】

台南市政府で働く「日本人公務員」がいる。群馬県の小さな町から派遣され、そのまま台南に暮らし続けて6年。とうとう台南の女性と結婚してしまった。台南と日本をつなぐ人材が、結婚式で目撃したカルチャー・ギャップと感動とは。

「言語交換」で知り合った妻

私の妻は台南市政府の同僚などではなく、行政とは関係ない仕事に就いている。台湾に来た当初、私の中国語はとても仕事で通用するレベルではなかったため、周りの人たちにけっこう迷惑をかけていた。台南市の職場の同僚が「色々な人と直接話して実践を積んだ方がはやく上達する」と紹介してくれたのが「言語交換」と呼ばれる勉強方法だ。これは台湾人に日本語を教えて、私は中国語を教えてもらうことだが、職場以外の多くの知り合いを作ることができたので、貴重な経験だった。そして、この言語交換仲間の誕生日パーティーにたまたま参加していたのが現在の結婚相手である。日本でもそうだが、台湾でも至るところに出会い、人の縁があるので面白い!

結婚式・披露宴は、以下のように、私の故郷である群馬県で一度(2017年9月3日)、そして台南市では二度(2017年11月11日と12日)実施した。合計三度も式を行ったことになる。

①9月3日 群馬県猿ヶ京温泉で披露宴→本人主催。
②11月11日 台南市で1000人披露宴→本人主催。
③11月12日 台南市政府主催による合同結婚式→台南市政府民生局主催。

日本での披露宴には家族や親戚だけでなく、台南市政府国際関係科の上司や同僚も駆け付けてくれた。日本に出発する前に皆が気にしていたのは「日本の式にご祝儀をいくら包んだらよいのか?」ということだった。

日本のご祝儀は台湾と比べてちょっと高い。友人や同僚だと3万円、家族や親族だと5~10万円になるだろう。数字の決まりもあって、3や5といった奇数が良いとされる。2は「二つに割れる」から結婚式で不向きと言われ、4は発音が「死」を連想させるのでお祝い事に向かないとされる。

台湾からわざわざ飛行機に乗って挙式に参加してくれる家族や友人らにご祝儀までもらうのは申し訳ない気持ちもあったが、皆、「日本式のやり方で出席したい」と言ってくれたので、ありがたく受け入れることにした。

日本の披露宴式場は地元の猿ヶ京ホテル。この式場を決めたのは当時のみなかみ町町長・岸良昌氏だ。「阿部を台南に派遣したのは私だ。その阿部が台南との交流成果として結婚までするのだから、私がしっかり見届ける必要がある」と、かなり強引に日程と場所を決めてくれた。強引ではあったが、その言葉通り、町長はその後、11月11日、12日の台湾挙式にも出席してくれた。実は、岸町長は、その年の10月の町長選挙で落選してしまい、11月は私人として駆け付けてくれたのだ。これには私をはじめ台湾側家族や友人も本当に驚き感動した。

また、日本では式場が狭かったため招待できなかった友人も多かったのだが、皆、「台湾の式に行くからいいよ」と言ってくれて、群馬や京都、滋賀、そしてシンガポールの各地から台南に集まってくれた。これらの友人の中には、9月3日、11月11日、12日の全てに出席してくれた友人もいて、本当にありがたかった。

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阿部 真行ABE Masayuki経歴・執筆一覧を見る

大東文化大学外国語学部卒。高校講師などを経て2005年からみなかみ町職員。2013年6月から台南市へ渡る。現地での役職は「台南市政府対日事務相談顧問」。日台双方の国家資格を取得し、インバウンドを主とした交流を推進中。現地大学で講師も務める。

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