島々の悲歌——沖縄、琉球と台湾(前編)

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李 琴峰 【Profile】

10月31日、朝起きてスマホを手に取ると、思わず目を瞠(みは)った――首里城全焼のニュースを見たのだ。

LINEニュースの速報写真の中で、首里城はめらめらと燃え上がる炎に包まれて骨組みしか残っておらず、深夜の暗闇は炎に照らされて赤銅色に染まっている。記憶の中の色鮮やかな朱塗りの門扉や柱、金色の竜の装飾が施される唐玻豐(からはふ)など、もはやどこにもない。

首里城焼失の僅か3週間前、私は取材旅行で沖縄に滞在し、かつて琉球王府のあったこの王城も訪ねた。だから余計に首里城の火災は私に大きなショックを与え、また諸行無常の感をもたらしたのだ。

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日中二言語作家、翻訳家。1989年台湾生まれ。2013年来日。2017年、初めて日本語で書いた小説『独り舞』で群像新人文学賞優秀作を受賞し、作家デビュー。2019年、『五つ数えれば三日月が』で芥川龍之介賞と野間文芸新人賞のダブル候補となる。2021年、『ポラリスが降り注ぐ夜』で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。『彼岸花が咲く島』が芥川賞を受賞。他の著書に『星月夜(ほしつきよる)』『生を祝う』、訳書『向日性植物』。
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