日本人は銃剣で子どもを殺していたのよ——「親日」と「反日」の狭間で

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李 琴峰 【Profile】

「親日台湾」という言葉に違和感

日本に住んでいると、初対面の人から「出身はどこ?」と聞かれるときがある。それなりに日本語を巧みに操っているので、ほとんどの場合、相手は日本の地名が返ってくるのを想定している。そこで「台湾」と答えるとちょっとしたカミングアウトになるのだ。

ありがたいことに、「台湾」と答えて嫌がられることはあまりない。逆に、「私、すごく台湾が好き!」と言ってくれる人が多かった。東日本大震災以降、「台湾は親日国」という印象がかなり定着したように思われる。実際に台湾を旅行した日本人も「台湾人は日本人に優しい」と口々に言う。各分野での民間交流が進んでいることもあり、日本では今、ちょっとした「台湾ブーム」が起こっているようだ。嫌われるよりかはもちろん好かれる方がいいので、台湾出身者としてはこの状況をありがたく思っているが、一方、「親日台湾」といった言葉を耳にするたびに、少しばかり違和感を覚える。 

私自身はもちろん大の親日派と言えよう。自らの意思で日本語を学び、日本に移住し、こうして日本文学の作家として活動しているのだから、日本と日本語が好きという感情は誰にも決して否定させない。そしてふとした瞬間に周りの人間を見回すと、類は友を呼ぶということだろうか、やはり同年代では日本好きな友人が多い。ところが不思議にも、私自身は成長過程において、「台湾は日本好きが多い」という印象は特に持ったことがなかった。

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李 琴峰LI Kotomi経歴・執筆一覧を見る

日中二言語作家、翻訳家。1989年台湾生まれ。2013年来日。2017年、初めて日本語で書いた小説『独り舞』で群像新人文学賞優秀作を受賞し、作家デビュー。2019年、『五つ数えれば三日月が』で芥川龍之介賞と野間文芸新人賞のダブル候補となる。2021年、『ポラリスが降り注ぐ夜』で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。『彼岸花が咲く島』が芥川賞を受賞。他の著書に『星月夜(ほしつきよる)』『生を祝う』、訳書『向日性植物』。
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