大人気! 中国発「TikTok」に女の子たちはなぜハマる?

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中国発の短編動画共有アプリ「TikTok(抖音)」は最近、日本でも小学生から大人まで大人気で、特に女の子たちがキュートなダンスや変身メイクなどを次々にアップしては「いいね」の数やフォロワー数を競い合っている。

YouTubeもInstagramもTwitterもあるのに、日本の女の子たちはなぜ、こんなにもTikTokにハマるのか? それはきっと、「誰でも気軽に動画がアップできて、しかもかわいく“盛れる”(“化粧”したり修正したりすることができる)」「Instagramほど『映え(ばえ=見映えの略)』を気にしてがんばらなくてもいいし、YouTubeほど映像を作り込まなくてもいい」「高速再生で何だか耳から離れない音楽と、まねしたくなる面白い動きの宝庫」「15秒の短さだから撮っても見ても疲れないし、飽きない」といった特徴があるからだ。この辺は製造元の中国と同じような反応だろう。

特に「盛れる」というポイントは美容整形へのハードルが高い小中高生など、日本の女の子には魅力的だった。TikTokの映像の世界では、誰でも簡単に目が大きくてあごが尖った中国の人気女優のような顔になれる。日本の若い女の子の中には目をぱっちり二重にしたくてアイテープを張って理想の顔づくりに日々努力している子が少なくないのだ。

また、TikTokで投稿が多い手や上半身を中心に動かすダンスは、人気動画を見てまねをしながら、ちょっと練習したらできるので、わくわく感と達成感が得られやすい。さらに友達同士、「双子コーデ」で踊ることでテンションも上がる。

フォロワー数1位は愛知県の小学6年生

そんな盛り上がりを見せるTikTok。日本でフォロワー数1位と言われているのは、愛知県に住む小学6年生の「Hinata」さんだ。1月末の時点でフォロワー数は250万人、投稿した作品数は479本、「いいね」の数は合わせて5760万を超えた。流行の韓国風メイクで切なげな表情を浮かべながらダンスしたかと思えば、破壊力抜群の変顔もドカン。そんな彼女の投稿をまねするだけでなく、かわいいこと、面白いことを追求するその姿に憧れる小学生女子が急増中だ。彼女の人気ぶりは多くのテレビ番組でも紹介され、存在感はさらに高まった。

日本のTikTokフォロワー数1位野々山ひなたさん、提供:株式会社クラージュ
日本のTikTokフォロワー数1位Hinataさん、提供:株式会社クラージュ

TikTokは2017年10月に日本でリリースされた。ただリリース直後から爆発的な人気を集めたわけではなく、女子高生を中心に面白さが口コミで伝わり、ユーザー数がじわじわと増えていったという形だ。芸能人などインフルエンサーが使って魅力をアピールしなくとも口コミ先行で日本の普通の女の子たちに面白がられるという状況は、運営元も想定していなかったという。TikTokは「女の子たちに人気のアプリ」としてマスコミに多く取り上げられ、芸能人たちの利用も注目されるようになった。18年に入ると人気お笑い芸人やタレントを起用したテレビCMの効果もあってぐんと知名度が上がり、ユーザー数は爆発的に増えた。

TikTokはこうした流れで日本人の間に浸透したのだが、身近になりすぎて中国企業が生み出したアプリであることを知らない人も多い。電機メーカーのソニーが海外進出してその製品があまりに米国内で普通に存在するようになった結果、「ソニーはわが国の会社だと思っていた」と言う米国人が結構いるようなものだ。

Hinataさんの自己紹介動画

(YouTubeから、提供:株式会社クラージュ)

日中間でカバー曲の相互流行も

それでも、TikTokから広がる世界の中で中国と日本のつながりがじわじわと強まっているようにみえる。

例えば、TikTokに使われたことで少し前の日本の歌の中国語カバー曲が中国で爆発的にヒットした現象がある。「買辣椒也用券(「唐辛子を買うのにも券を使う」の意)」という変わった名前の女性歌手が歌う「起風了」(「風立ちぬ」の意)は原曲が日本の人気ミュージシャン、高橋優が作った「ヤキモチ」という歌で、2014年に発売したアルバムに収録された。中国語圏でも人気のドラマ「深夜食堂3」の主題歌になった無骨な男のバラードであるこの曲を、彼女は切なく繊細な高音で歌い上げている。高橋優はアコースティックギターをかき鳴らしながら若者のもがきや苦しみをややだみ声で代弁し、多くのファンを引き付けているアーティスト。聴く者の胸を締め付けるような情感豊かな曲作りには定評があり、その印象的なメロディーが中国のTikTokユーザーたちの心に刺さりやすかったのではなかろうか。

一方で、中国のTikTokで人気の曲「生僻字」(「滅多に使わない文字」の意)が日本の別の動画サイトで日本語カバーされ、さらに中国に“逆輸入”されて注目を集めたこともある。日本でのタイトルは「四字熟語」。原曲と同じように漢字の奥深さを歌った内容だが、日本語での漢字の発音が中国の人々には新鮮に聴こえたようで、中国からも多くの人たちがこの動画を見た。

映像や音楽を通じて無限に共感が広がり、国を超えて人々がつながり合うことができるTikTok。すでに中国と日本をつなぐ新しい形の文化交流ツールとなっているようだ。

バナー写真: 小学生の女子がTikTokで変顔アピール中 筆者撮影

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