日本人球団職員が語る台湾プロ野球ラミゴモンキーズの日本戦略

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今、台湾の野球ファンが最も注目、期待している選手は、台湾プロ野球で初めてポスティング制度により、2019年シーズンから北海道日本ハムファイターズに加わる王柏融(ワン・ボーロン)選手だろう。アマチュア時代から活躍していた王は、台湾プロ野球で2016年から2年連続で打率4割以上をマーク、17年には三冠王にも輝いた。

そして、その王が所属していた球団こそラミゴモンキーズだった。ラミゴは現在リーグ2連覇中で、人気、実力共にリーグをけん引するチームである。

ラミゴは近年、積極的に日本プロ野球チームとの交流を行っている。レベルの高い日本チームとの試合を通じたチーム強化だけでなく、日本における知名度の向上、日本人観光客への取り組みも重要な目的となっている。日本市場のマーケティング担当者として私からラミゴの日本戦略を紹介したいと思う。

千葉ロッテとの交流試合から日本でのPRを強化

ラミゴは、前身のラニューベアーズ時代から、試合や人材の交流など、日本球界とのつながりを持っていたが、継続的な関係の構築には至っていなかった。

より継続的で発展性のあるものを目指し、2014年10月末、ラミゴの本拠地、桃園国際棒球場で千葉ロッテマリーンズとの交流試合「桃園最強Power Series 2014 日台バトルカップ」を初めて開催した。多くの日本人に台湾野球やラミゴを知ってもらう機会となり、特に管楽器ではない電子音楽を用いた応援や、観客席にいてファンとの距離が近いキュートでセクシーな公式チアリーダーチームLamiGirlsに対して、大きな反響があった。また、この試合をきっかけにマリーンズとの関係が次第に深まっていった。

マリーンズの秋季キャンプに選手、コーチ数人を派遣した他、16年からはマリーンズの石垣島キャンプに合わせて4年連続で「アジアゲートウェイ交流戦Power Series in石垣島」開催している。19年には2月9、10日に行った。例年、ラミゴ旅行社が数百人規模の観戦ツアーを募り、日台のファン交流イベントも開いて石垣島の冬季観光促進にもつながっている。

17年、18年には、マリーンズを再度桃園に招待して交流試合を開催した他、3月14、15日には、マリーンズの本拠地、ZOZOマリンスタジアム(千葉市)で対戦。首都圏の野球ファンにもラミゴを知ってもらう機会が生まれた。これらの試合は、インターネットテレビサービスのパ・リーグTVで中継される。

こうした取り組みの結果、双方のファンがお互いに親しみを感じるようになり、公式戦中でも両チームファンが相手の試合で応援するなどの交流が見られるようになった。

日本の他球団との間では、18年2月28日と3月1日に北海道日本ハムファイターズと初めて札幌ドームで交流試合を開催。台湾から約200人の応援団が駆け付けた他、本拠地の試合さながらにLamiGirlsがパワフルな応援を繰り広げた。

2018年2月28日と3月1日、北海道日本ハムファイターズと交流試合を札幌ドームで初開催(筆者提供)
2018年2月28日と3月1日、北海道日本ハムファイターズと交流試合を札幌ドームで初開催(筆者提供)

19年2月28日と3月1日には、台北で東北楽天ゴールデンイーグルスとの交流試合を開催する。

LamiGirlsが日本プロ野球各球団のイベントに参加して、日本の野球ファンにラミゴを知ってもらう取り組みにも力を入れている。

日本のカルチャー人気にあやかり、イベントも同時開催

台湾では日本のカルチャーが高い人気を誇り、日本のプロ野球も人気がある。こうした中、ラミゴでは2017年シーズンから、日本をテーマとした「YOKOSO桃猿」を開催している。日本野球機構(NPB)の球団マスコットや日本の著名人をゲストとして招く他、日本のB級グルメ屋台も出店する。イベントは好評で、年1、2回、17年9月のイベントでは、試合後に歌手で元WANDSの上杉昇さんのライブを行い、台湾でも大人気のアニメ「スラムダンク」の主題歌「世界が終るまでは・・・」をファンと共に熱唱。球場全体が一つになる感動的なシーンが生まれた。

フェスタ「YOKOSO桃猿」を開催(筆者提供)
「YOKOSO桃猿」を開催(筆者提供)

18年5月、パシフィックリーグマーケティングとの提携で行われたイベントでは、パ・リーグ3球団のマスコットが桃園球場に一堂に会し、日本でもなかなか実現しない貴重なシーンにファンは大いに沸いた。

SNSを活用し、サービス向上にも注力

日本での認知度を高めるため、ツイッターやフェイスブックで日本語アカウント「ラミゴジャパン」を開設している他、日本の球場や台湾観光協会などでも日本語版のチラシを配布、また、台湾観光の日本語情報サイト「台北ナビ」では観戦チケットや応援ツアーの販売も行っている。桃園空港から鉄道一本で約20分、本拠地桃園国際球場の立地を最大限に生かして空港から直接観戦に来たり、試合後に深夜便で帰国するファンのために荷物の一時預かり所を設置するなどサービスを充実させている。

今後も日本人観光客への効果的なPRを実践

台湾観光の一環で一人でも多くの日本人に球場に足を運んでもらうことが現在のラミゴの最大の目標だ。そして、日本プロ野球各球団との関係では、一時的なものではなく長期的な交流を目指し、双方の球団やファンから愛される存在になりたい。王の北海道日本ハムファイターズ移籍というチャンスを生かし、より多くの人々にラミゴを知っていただける取り組みを行っていきたい。

日本の皆さん、今シーズンは是非、桃園国際球場にお越しください。

台湾プロ野球とは

1990年にリーグ戦を開始し、現在は富邦ガーディアンズ(新北)、ラミゴモンキーズ(桃園)、中信兄弟エレファンツ(台中)、統一7-ELEVENライオンズ(台南)の4チームで、前・後期各60試合、年間120試合のリーグ戦を行っている。

ラミゴモンキーズとは

前身球団はラニューベアーズ。2004~10年の間、台湾南部の高雄を本拠地としていたが、11年に本拠地を台湾北部の桃園に移し、チーム名をラミゴモンキーズと改め現在に至る。ラニュー、ラミゴは共にグループ企業。リーグの八百長問題などの不祥事で、桃園移転当初は観客動員数が低迷していたが、13年に応援スタイルを大きく転換したのと同時に清潔な観戦環境づくりに取り組んだ。その結果、若年層も楽しめる球場となり、以後、台湾球界一の観客動員数を誇っている。

バナー写真=パ・リーグ3球団のマスコットが桃園球場に一堂に会する(筆者提供)

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