ガーズィー・ビンザグル サウジアラビア大使に聞く:日本との国交樹立70年、友好関係は最も強固に

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サウジアラビアのガーズィー・ビンザグル大使に、2025年の国交樹立70年、エネルギーと地域安全保障分野における日本との協力、女性の地位向上について語ってもらった。(聞き手はニッポンドットコム理事長の赤阪清隆) 

ガーズィー・ビンザグル Ghazi Faisal BINZAGR

駐日サウジアラビア大使。アラビア半島で140年にわたり、貿易商を営む商家に生まれる。ニューメキシコ州立大学博士課程修了(経営と組織開発)。2013年からサウジアラビアの立法府である諮問評議会・シュラ評議会のメンバーを3期務めた後、20年に同評議会の外交委員会メンバー、23年からは副委員長を歴任。24年から現職。

2025年は国交樹立70年と大阪・関西万博

赤阪清隆 2025年はサウジアラビアと日本の国交樹立70年を迎える。記念行事の予定は?

ガーズィー・ビンザグル 来年は2025年国際博覧会(大阪・関西万博)も開催される。記念すべき重要な節目に大使を務めることができ、光栄だ。

記念行事については、現在、日本と協力して計画を立てている。過去70年に及ぶ関係の変遷を振り返り、今後70年間の両国の方向性を示すような活気に満ちた、さまざまな行事を考えている。

赤阪 大阪万博ではどのようなパビリオンを出展するのか?

ビンザグル サウジアラビアの精神、遺産、起源、未来を体現できる特別なものを準備する。パビリオンの色やデザインは砂漠のイメージを反映する予定だ。経済成長、活気ある社会、野心的な国家という3つの柱を基本にした計画「サウジビジョン2030」を掲げてから、サウジアラビア国内で起きた重要な変化を表現する。日本とサウジアラビアをつなぐ伝統的な側面、例えば投資、経済、エネルギーとエネルギー安全保障などに加え、両国のみならず世界全体に恩恵をもたらす新しいコラボレーションも紹介したい。

エネルギー分野で協力

赤阪 脱炭素、安全な水の確保、化石燃料からの脱却といった世界的な喫緊の課題に取り組むためには、テクノロジーは欠かせない。現在、進んでいる両国間での協力分野は?

ビンザグル 例えば、淡水化事業。日本は長い時間をかけて、製造過程の低コスト化、効率化に成功した。その結果、恒久的に水を提供する技術を日本は提供してきた。これは、粘り強く解決策を追求し、実用的な方法で技術を開発・応用する日本の強みを浮き彫りにしている。

サウジアラビアは従来の化石燃料から再生可能なエネルギーへシフトするためのエネルギー対策を生み出そうとしているので、日本と長期のパートナーシップを築くことは重要だ。

両国の関係機関で協力して、代替エネルギーの試験的プログラムを実施している。代替エネルギーのコスト低減をもたらし、従来のエネルギー源と同等もしくはそれ以下にするという成果を上げている。開発されたテクノロジーが単に感動的というだけでなく、より良い世界に向けた問題解決の可能性に、わくわくしている。

赤阪 日本やアジア諸国にとって、サウジアラビアは石油の供給源として不可欠だ。脱炭素化の流れの中で、石油からの移行にどのように対応していくのか?

ビンザグル 石油は長い間、日本を含む多くの国との関係を結ぶ中心的存在だった。しかし、石油への依存は経済的にも環境的にも持続可能ではないことを認識するようになった。その上でサウジアラビアが世界における石油のハブではなく、エネルギーのハブになるという考え方を受け入れた。伝統的エネルギーに替わるものをスムーズに取り入れていく一方、それらを既存の製造工程や構造、システムに円滑に組み込めるようにしていく。エネルギートランジション(移行)を単なるイデオロギー的宣言ではなく、現実のものにすることが重要だ。

ここでもまた、日本とのパートナーシップは不可欠で、両国ともに再生可能エネルギーへの移行に深く関わっている。利用できる技術に絶えず手を加え、それらの技術を新しいエコシステムに転換する必要性も認識している。例えば、天然ガスや石炭などの化石燃料を燃焼して取り出したブルー水素や水を電気分解してつくるグリーン水素など代替エネルギーのバリューチェーンやサプライチェーンにおいて、日本とサウジアラビアがパートナー関係を結ぶことは理想的だ。私たちの挑戦はまだ始まったばかりだが、目に見える成果と大きな可能性に期待している。

中東における地域安全保障

赤阪 中東の石油や天然ガスへの依存が大きい日本は、中東地域の紛争を注視している。中でも平和と地域の安全を確立するパートナーとしてサウジアラビアに期待してきた。サウジアラビアは、どのようにして長期的に安全保障に貢献するのか?

ビンザグル 中東に限らず紛争はどの地域でも勃発する。適切に対処しないと激化し、人類の発展や健康に損害を引き起こすだろう。安全保障と発展はまさに表裏一体だ。「サウジビジョン2030」を打ち出してから、サウジアラビアは包括的な社会経済の道筋を明確に示し、積極的に進めてきた。中東をはじめとする世界中の長期的紛争は、関わるすべての人たちに対し、公平なやり方で解決すべきである。長引く紛争は甚大な被害をもたらすだけだ。

サウジアラビアは重要資源に恵まれ、中東や世界の発展に寄与する大きな可能性があり、地理的にも重要な地域の中心にあることを、積極的に発言してきた。中東の平和と発展は、全世界共通の利益になると信じている。それは、中東が健全な経済力と全人類共通の利益に支えられているからだ。ただ、少し理想的に聞こえるかもしれないが、共通の利益だけ追求しても、より良い世界になるとは限らない。持続可能な経済、優れた統治、すべての人が享受すべき質の高い生活といった共通の価値観を共有する必要がある。それは、サウジアラビア人であろうと、日本人であろうと、国籍に関係なくすべての人に当てはまることだ。

サウジアラビアは、日本のような信頼できるパートナーと二国間、および多国間での協力関係が増えており、それぞれの地域や世界において重要な価値観を共有している。このような取り組みは安全保障や長期的発展のためには不可欠で、日本もサウジアラビアも、理にかなった方法で世界情勢に深く関与している。

声を上げるサウジアラビア

赤阪 「サウジビジョン2030」の下、サウジアラビア自体が変革しているが、世界と共有したいメッセージはあるか?

ビンザグル 今、世界中で難題が山積しているが、この時代にサウジアラビア人として生きることに誇りを持っている。ビジョンを持って生きている人にとっては、ピンチはチャンスになるかもしれない。「サウジビジョン2030」の根底にあるのは、サウジアラビアにとっての利益は、長い目で見ると他国にも利益になるという考えだ。サウジアラビアは長年にわたり、汚職、過激主義、非現実的なビジョンなど、持続可能な開発を妨げるすべてのことに対して、明確な判断を下してきた。

さらに、われわれは責任感や指導力を養い、理想と現実のバランス感覚を持つ必要がある。例えば、社会や地域におけるビジネスの活性化、活力ある社会形成のサポート、尊敬や思いやりの気持ちで他者と関わることが求められる。こうした考え方の根底にあるのは、1400年にわたるイスラムの歴史と、それ以前の数千年におよぶ誇り高き先史時代から形成されたサウジアラビアの伝統と価値観だ。

われわれはアラブ・アイデンティティーに誇りを持っている。アラブ・アイデンティティーには、アラビア半島の歴史や伝統に深いルーツがあり、言葉や遺産だけでなく、300年続く君主制国家としての誇りなど、グローバルな視野を持っている。「サウジビジョン2030」では、これらのアイデンティティーを力強く、効果的に表現している。

女性の地位向上を推進するために

赤阪 日本はジェンダー平等に関するさまざまな課題に直面しているが、サウジアラビアでは女性の地位向上に関する最近の政策からどんな教訓を得たのか?

ビンザグル 女性の社会参加に関して、サウジアラビアでは、職場や社会において極めて重要な役割を女性が担うという成果を短期間で遂げた。ジェンダーへの取り組み方も含めて、すべてが「サウジビジョン2030」の3本の柱に基づいている。その根底にあるのは、一人一人が最大限に能力を発揮できるように、そしてすべての国民が社会参画を実現するという信念だ。

単にある国で実行しているからという理由だけで、そのルールや規制を他国に押し付けることはできない。国民の地位向上のためには、ルーツややりたいことを尊重する一方で、過ちを正す努力を重ね、社会的に弱い立場の人が前進できるチャンスを見出せるようにしなければならない。

赤阪 最後に読者へメッセージを。

ビンザグル サウジアラビアはいま、かつてないほど外国人観光客にオープンだ。ぜひ、訪れて、サウジアラビアを体験してほしい。両国の人が友情を育み、お互いを理解して楽しんでほしい。

(原文英語。インタビューは2024年7月18日、東京・虎ノ門で行った。写真撮影:ニッポンドットコム)

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