進化するニッポンのラーメン文化

至極の一杯 迷ったらココ! 名店ぞろいの東京&横浜「5大ラーメン横丁」の歩き方

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東京周辺は日本屈指のラーメン激戦区だけに、特に旅行者は何を食べるか迷いがち。そんなときには日本各地の名店が集まるスポット「ラーメン横丁」がお勧め。草分けの『新横浜ラーメン博物館(ラー博)』から最新の『東京ラーメン横丁』まで、東京・横浜の「5大ラーメン横丁」と“必食”の一杯を紹介する。

東京とその近郊には名だたるラーメン店が数知れずあり、旅行者や食べつけない人だと、どの店を選ぶべきか迷うこともあるだろう。そんな場合にお勧めしたいのが、銘店の味を気軽に楽しめる「ラーメン横丁」だ。

「ラーメン横丁」とは、全国の銘店が一堂に会し、好きなラーメンを選んで堪能できる食のテーマパークのこと。「ラーメンコンプレックス」などと呼ばれることもあるが、筆者としては親しみを込めて「横丁」と呼びたい。

「ラーメン横丁」のパイオニア『新横浜ラーメン博物館』

まずは1994年に世界初のラーメン専門のフードアミューズメントパークとして誕生した『新横浜ラーメン博物館』。「ラーメン横丁」のスタイルを全国に広めたパイオニアで、今なお絶大な人気を得ている。

館内地下エリアに広がる昭和のレトロな街並みには、北海道から沖縄まで全国各地の有名ラーメン店が並ぶほか、哀愁漂う喫茶店や駄菓子屋もあって昭和の雰囲気がたっぷり。ラーメンと一緒に古きよきニッポンを楽しめる。休日ともなれば、老若男女問わず多くの客でにぎわう人気の横丁だ。ちなみに『ラー博』から徒歩5分、最寄りの新横浜駅は、渋谷駅から最速25分、東京駅から新幹線で17分で到着する。

入居店は定期的に入れ替わるが、2024年7月時点では、山形県南陽市の赤湯温泉からみそラーメン『龍上海本店』、福岡市で大行列を作る『博多一双』など8店舗が営業している。

そんな『ラー博』で注目すべきは、明治43(1910)年に創業した『淺草 來々軒』の味を再現する「來々軒復活プロジェクト」だ。『來々軒』は「日本のラーメン発祥の店」として食文化にラーメンを根付かせるきっかけを作りながら、1976年に閉店した伝説のラーメン店。その味を史実や証言を元にラーメンを再現し、2020年に店舗がオープン。今も醤油(しょうゆ)ラーメンの原点を味わえる。

新横浜ラーメン博物館:『淺草 來々軒』の「らうめん」(980円)撮影:山川大介
新横浜ラーメン博物館:『淺草 來々軒』の「らうめん」(980円)撮影:山川大介

国産の豚、鶏、野菜に煮干しを加え、弱火でじっくり炊き上げたスープには素材のうま味が凝縮している。麺には明治時代の遺伝子を受け継ぐ小麦「さとのそら」を使用し、創業当時の製法の「らうめん(青竹打ち)」(1日100食限定)と昭和10(1935)年以降の機械製麺の「らうめん」を食べ比べできる。

メンマは台湾産の乾燥メンマを1週間かけて水で戻し、味付け。チャーシューは味をなじませてから、じか火のつるし焼きにする。手間暇かけた昔ながらの製法で再現した食べ逃せない一杯だ。

元祖は北の大地の繁華街に

ところで「ラーメン横丁」の歴史は意外に古く、1951年に札幌市中央区の繁華街ススキノに誕生した『公楽ラーメン名店街』が元祖とされている。7店舗が早朝まで営業していたので、お酒の後の“シメの一杯”に重宝されたという。71年に移転を経て『元祖さっぽろラーメン横丁』として開業し、現在は17店が軒を連ねる人気スポットとして親しまれている。

『元祖さっぽろラーメン横丁』外観 (PIXTA)
『元祖さっぽろラーメン横丁』外観 (PIXTA)

時が過ぎて平成に入ると『ラー博』の成功を受け、全国に「ラーメン横丁」が次々と生まれた。しかしその多くがラーメン店を集めただけで営業努力が伴わず苦戦し、経営難などを理由に閉業。その結果、今ではラーメンファンも認める“本物の横丁”だけが生き残っている。

都内屈指の人気 『ラーメン国技館 舞』

そんな流れにあって今なお人気なのが、2005年に開業した東京都港区の『アクアシティお台場』内にある『ラーメン国技館 舞』だ。お台場という土地柄、外国人観光客からも人気が高く、ランチタイムを過ぎても多くの人でにぎわう。天気のいい日はテラス席でレインボーブリッジを眺めながらラーメンを味わえる、東京観光の穴場でもある。

24年7月時点で味わえるのは、濃厚つけ麺が人気の『頑者(がんじゃ)』、打ちたての麺が味わえる『手打ち中華 玉(ぎょく)』など6店舗のラーメン。

中でもイチオシは『三代目 博多 だるま』。1963年に福岡市で創業した博多豚骨ラーメンの名店『だるま』のDNAを受け継ぐ人気店だ。メニューに迷ったら『ラーメン国技館 舞』限定の「極ラーメン」を味わえば間違いない。

ラーメン国技館 舞:『三代目 博多 だるま』の「極ラーメン」(1530円)撮影:山川大介
ラーメン国技館 舞:『三代目 博多 だるま』の「極ラーメン」(1530円)撮影:山川大介

替え玉前提のため丼になみなみと注がれた濃厚スープは、豚骨を16時間も炊き上げて作られる。そのスープに極細麺が絡めば濃厚ながらもしつこくない味わい。国産の豚肩ロースチャーシュー、手包みワンタンに加え、九州ブランドポークの角煮とブランド卵の卵黄をのせたぜいたくな一杯だ。

また、東京を代表する塩ラーメンの名店『せたが屋』による昼限定ブランド『ひるがお』も見逃せない。「塩つけ麺」や「辛味白湯(ぱいたん)塩ラーメン」など数あるメニューの中でもひときわ目を引く「特選和牛チャーシュー白湯麺」もまた、『ラーメン国技館 舞』でしか味わえない。

ラーメン国技館 舞:『ひるがお』の「特選和牛チャーシュー白湯麺」(2300円)撮影:山川大介
ラーメン国技館 舞:『ひるがお』の「特選和牛チャーシュー白湯麺」(2300円)撮影:山川大介

丼からはみ出る大きさの霜降り和牛ロースのチャーシューは低温調理によりとても柔らかく、口の中でとろけるような食感を楽しめる。白湯スープは濃厚ながらもまろやかな口当たりで、一口すすれば鶏のうま味が口の中に広がる。まさに限定ならではのぜいたくすぎる一杯だ。

3施設集中:東京駅の老舗『東京ラーメンストリート』

「5大ラーメン横丁」のうち、残る三つは東京駅周辺に集結している。まずは東京駅八重洲口に直結する東京駅一番街にある『東京ラーメンストリート』。東京駅で最初となる2009年にオープンし、今でも行列が絶えない「横丁」として名をはせている。

24年7月時点で味わえるのは、受賞歴多数の『斑鳩(いかるが)』、本店がミシュランガイドに掲載された『そらのいろNIPPON』など8店舗のラーメン。駅直結の好立地とあって行列が絶えない中、ひときわ長い列ができるのが、濃厚つけめんブームの立役者となった名店『六厘舎(ろくりんしゃ)』だ。

東京ラーメンストリート:『六厘舎』の「特製つけめん(並盛)」(1150円)撮影:山川大介
東京ラーメンストリート:『六厘舎』の「特製つけめん(並盛)」(1150円)撮影:山川大介

『六厘舎』の代名詞でもある超濃厚スープは、豚骨、鶏がら、魚介に野菜など大量の食材を長時間煮込んで仕上げられる。東京を代表する製麺所『浅草開化楼』による『六厘舎』専用の麺は、圧倒的なコシの強さで小麦の香りも豊か。ドロドロのつけ汁に浸してすすれば、その力強い味わいに誰もが驚くはず。

注目店が集結する『ラーメン激戦区』

『東京ラーメンストリート』1強だった東京駅だが、2019年に新たな横丁が鳴り物入りで登場。それが、丸の内側の商業施設『KITTE 丸の内』にオープンした『ラーメン激戦区』だ。

24年7月時点で味わえるのは、東京発のみそラーメン『ど・みそ』、フレンチのシェフが手がける中華そば『かね田』など5店舗のラーメン。目玉は、千葉県松戸市の『中華蕎麦 とみ田』の都内初となる直営店『松戸富田麺絆(めんばん)』だ。『中華蕎麦 とみ田』を世に広めた代表作の「濃厚豚骨魚介つけ麺」は、超濃厚なスープと香り高い自家製麺が特徴。「日本一のつけ麺」と称されるのも納得の一杯だ。業界をけん引する有名店の一杯を都内で気軽に食べられるのは、「横丁」ならではの魅力と言える。

ラーメン激戦区:『松戸富田麺絆』の「濃厚つけめん(並)」(1000円)撮影:山川大介
ラーメン激戦区:『松戸富田麺絆』の「濃厚つけめん(並)」(1000円)撮影:山川大介

東京駅第3のラーメンスポット『東京ラーメン横丁』

2022年には東京駅八重洲地下街に、第3の「横丁」として『東京ラーメン横丁』が誕生した。野菜マシマシのガッツリ系『ラーメン豚山』や新潟5大ラーメンのひとつ長岡生姜醤油(しょうがしょうゆ)系の『長岡食堂』など七つのブランドが出店する。中でも注目したいのは、『六厘舎』『とみ田』と並ぶつけ麺の名店『風雲児』だ。

魚介豚骨ベースのつけ麺が主流の中、『風雲児』はあえて鶏白湯で挑んで大行列を作りあげた。そのつけ麺があまりにも有名だが、実はラーメンもうまい。特徴的なスープは白濁するほど国産鶏をしっかり炊いてコクを出し、煮干しやかつお節もふんだんに使用。クリーミーな味わいで、つるつるもっちり食感の中太ストレート麺との相性も絶妙だ。

東京ラーメン横丁:『風雲児』の「得製らーめん」(1150円)撮影:山川大介
東京ラーメン横丁:『風雲児』の「得製らーめん」(1150円)撮影:山川大介

ここまで紹介してきた「5大ラーメン横丁」は、間違いなくうまい一杯に出会えるだけに、週末はもちろん平日でも行列必至となる。だが、どうせ訪れたなら2杯くらいは食べてみたいのが人の情。そんなときに挑みたいのがラーメンマニアなら当然の「連食」で、「横丁」ならハシゴするのにうってつけだ。時間配分を考えると、1軒目をオープン直後にするのがお薦め。ぜひチャレンジしてほしい。

バナー写真:昭和ノスタルジーあふれる雰囲気の『新横浜ラーメン博物館』館内。新横浜駅から徒歩5分で大人450円の入場料がかかる 撮影:山川大介

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