命の尊厳を教えてくれる学校犬:立教女学院小学校のクレア |働く動物たち episode 2
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2003年から始まった学校犬
「わーっ、かわいいーっ!」
吉田太郎先生が1匹の犬を連れて入ってくると、1年生の教室は大騒ぎ。
「静かにしてね。きみたちだって、初めて会った人が大声を出したらビックリするでしょう? 犬も同じだよ」
犬は吉田先生と一緒に教室をひとまわりすると、のんびりと床に寝そべった。
アイメイト協会から預かっている盲導犬繁殖犬のクレア。
立教女学院小学校の“学校犬”だ。
立教女学院小学校に最初の学校犬がやってきたのは、2003年のこと。
きっかけは、学校になじめない児童がふともらした「学校に犬がいたら楽しいだろうな」という言葉だった。
これを聞いた吉田先生は、子どもたちの情緒を育むために、動物介在教育を取り入れようと、動き始めた。
「学校犬として理想の犬種選びには時間を費やしましたね。初めは小型で抜け毛が少ないトイプードルが適しているように思いましたが、元気いっぱいの小学生には、もっと手応えのある犬種がふさわしいのではないかと、テリア種で最も大型のエアデールテリアに決めました」
悲しい別れと新たな命の誕生
バディと名付けられた初代学校犬は毎日学校で児童たちと一緒に過ごし、2度の出産で命の誕生も教えてくれた。
「バディは12歳でこの世を去りました。その後、バディの娘で2代目のリンク、東日本大震災による原発事故後の福島保護犬シェルターから来たウィルも亡くしましたが、礼拝堂でお別れをしたことは、どの子どもたちの心にも、強く残っているようです」
現在は、クレアと、バディの姪にあたるベローナの2匹が毎日“登校”している。
クレアはこの春、4度目の出産をした。
「バディが来て以来、子どもたちは6年の間に少なくとも1回は学校犬の出産を経験しているんです。命の誕生を目の当たりにすると、自分も祝福されてこの世に生まれてきたんだということが、自然に伝わる気がしますね」
学校で生まれた子犬たちは、生後3日目から子どもたちに会わせ、日々成長する様子を見せてきた。
「母犬は子犬のオシッコやウンチをなめとって育てるのですが、それを見た子どもたちが『汚い!』って言うんですね。でも『きみたちが赤ちゃんのときにお父さんやお母さんは、汚いって言いながらオムツを替えたの?』って聞くと、『そんなことない』と言ってうれしそうな顔をします。これは1年生でも6年生でも反応は同じですね」
取材の日に初めて学校犬と対面した新1年生にはこの後、もうひとつサプライズがあった。
クレアが産んだ9匹の子犬たちとの「ふれあいタイム」が設けられたのだ。
おっかなびっくりで子犬を抱っこする子どもたちの間を心配そうに見回るクレア。
しかし、決してほえたり怒ったりはしない。
なぜなら、学校犬にとって子どもたちは信頼できる仲間だから。
Profile
名前:クレア
年齢:5歳 メス
主な仕事内容:毎日学校に行って、授業や行事に参加したり、休み時間に児童たちと一緒に遊んだりする。
勤務先:立教女学院小学校
東京都杉並区久我山4丁目29-60
バナー写真:1年生の教室で生徒と対面をする立教女学院小学校の学校犬、クレア 撮影:山口規子