震災10年、東北・福島と台湾

福島「風評被害」打破の最前線は「最強の安全検査体制」

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震災から10年を経ても台湾は福島県など5県産の食品輸入を認めていない。輸入禁止を定めた台湾の住民投票の2年間の有効期間も11月24日に切れたが、解禁に向けた先行きはなお不透明だ。福島の食品は本当に安全になったのか。「放射能汚染」の風評を払拭するための努力を続ける福島の人々の現場を訪れた。

25万点を検査

2011年3月から始めた「緊急時環境放射線モニタリング」という形で行われてきた分析の対象点数は現時点で25万点を超えている。多いか少ないか、数字だけではわかりにくいだろう。それは、一つひとつ賽(さい)の河原に石を積み上げていくような営為に見えてしまう。

この日、私が見学した際には、柚子(ゆず)と柿、豚と鳥の検査が行われていた。検査場所は、二つに分けられている。一つは、検出器のある部屋。その手前で、検査のサンプルを作る作業があり、こちらもなかなか大変だ。

農業総合センターの放射線検査室の掲示板(仙波理撮影)
農業総合センターの放射線検査室の掲示板(仙波理撮影)

分析対象は、福島県の農水産品全般。野菜・果物は月・水・木に分析し、山菜やきのこは火・金、魚介類は月〜水、豚肉や鶏肉、馬肉などは木曜日と、作物ごとに曜日が決められている。

最初は下処理の工程だ。検査員が、サンプルごとに手袋をはめて、カッターなどの器具で肉や果物を切り刻み、できるだけ空気が入らないようにみっちり容器に詰め込んでいく。果物は5ミリ単位、肉はミンチ状にすると決まっている。一点につき作業時間20~30分はかかる。

検査前に食材を刻む2(仙波理撮影)
検査前に食材を刻む(仙波理撮影)

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