ニッポンの金メダル候補

岡本碧優:新種目スケートボード女子、世界ランク1位の15歳―東京五輪の金メダル候補たち(7)

スポーツ 東京2020

東京五輪で新採用された4競技の一つがスケートボードだ。背景には、若い世代の間での関心を高めたいという国際オリンピック委員会の思惑がある。そのスケートボードで「パーク」と呼ばれる種目は、お椀を複数組み合わせたような形状のくぼ地のコースで行われ、加速して空中で繰り出す技の採点で勝負が決まる。同種目で金メダルを有望視される選手が、15歳の中学3年生、岡本碧優(みすぐ)である。

小学6年生で日本代表に

空中高く跳び上がるスケートボーダーの姿に憧れ、自分もそうなりたいと思った。

岡本は愛知県高浜市生まれ。兄の影響で小学2年生の頃にスケートボードにのめリ込むと、瞬く間に頭角を現した。国内の大会で好成績を残し、小学6年生になった2018年には日本代表として世界選手権に出場、5位入賞を果たした。スケートボード、特に女子のトップ選手においては、身軽で敏捷性に富む十代が多いとはいえ、彼女の才能は突出していた。

世界のスケートボード界で脚光を浴びるようになった岡本は、さらに貪欲に高みを目指す。

「もっとスケートボードをしたい、上手になりたい」

そう思ったとき、岡本は決断した。男子の第一人者である笹岡健介の実家に下宿し、笹岡の兄で指導に定評のあるプロスケートボーダー、拳道(けんと)に教えを請うことにしたのだ。

笹岡家は隣県の岐阜にあるとはいえ、小学6年生で家を離れるというのは、やはり思い切った選択だ。そこに躊躇(ちゅうちょ)がなかったのは、スケートボードへの強い思いからだった。

女子初の「バックサイド540」

笹岡とともに練習に打ち込んだ成果は、成績やパフォーマンスに如実に表れた。

2019年、東京五輪予選対象大会の一つである国際大会「デューツアー」で優勝。この大会では、女子で史上初めて、空中で後ろ向きに体を一回転半する「バックサイド540」という高難度の技を成功させ、ファンや関係者を驚嘆させた。

その後も、ストリートスポーツにとっての大舞台「X(エックス)ゲーム」をはじめ、国際大会で次々に優勝。現在も世界ランキング1位を維持し、目標としてきた東京五輪代表の座も手に入れた。

「自分の滑り」の先にあるメダル

中学3年生で迎える東京五輪では、優勝候補の筆頭に挙げられている。重圧がのしかかって不思議はない。

ただ、岡本にその気配はない。

「もっと技を増やして、自分の滑りができればと思います」

身長141センチの体でダイナミックな技を繰り出し、見る人々を惹きつける岡本の根底にあるのは、もっと難しい技を披露したい、もっと上達したいという一貫した思いだ。

そこにぶれがない限り、プレッシャーをかいくぐって栄冠を手に入れることは難しくない。

試合は8月4日。東京の空に、岡本は高く舞い上がる。

バナー写真:デューツアーのパーク女子決勝で滑走する岡本(2021年5月23日、アメリカ・アイオワ州モデイン)AFP=時事

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