「生んでくれてありがとう」と両親に伝えたい:愛子さま初の成年記者会見
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東北の地震被災者にいち早くお見舞いの言葉
昨年12月に成人となった愛子さまの記者会見について、宮内庁が先週に日程を発表すると、それだけでニュースになるほど、多くの国民が今回の記者会見を楽しみにしていた。愛子さまの肉声を聞いた人はまだ少なく、お一人でどんなことを語られるのか、注目された。
会見の前夜遅く、東北で震度6強を観測する大きな地震があった。筆者は強い揺れを感じながら、愛子さまが明日の会見の中で、大地震のことをどのように話されるのかが気になっていた。
会見に臨まれた愛子さまは、記者側から最初に「成年皇族としての抱負」などの質問を受けると、「まずお答えに先立ちまして」と言って、こう述べられた。
「昨夜の地震により亡くなられた方がいらっしゃると伺いまして心が痛んでおります。ご遺族の皆様と被災された方々に心よりお見舞い申し上げます」。そして、頭をしばし下げられた。
愛子さまは初めての記者会見の冒頭に、まだ発生から間もない大きな災害について、被災者にお見舞いの言葉をいち早く伝え、国民に寄り添う皇室の姿をはっきりと見せられたのである。
「では、質問にお答えいたします」。愛子さまはこう述べて会見を続けられた。
「(昨年12月の)成年行事の折に、天皇陛下からいただきました勲章を初めて身に着けた時に、勲章の重みをひしひしと感じて、身の引き締まる思いがいたしました」
「成年皇族として初めて新年祝賀の儀に出席し、また年末年始に宮中祭祀(さいし)にも参列いたしました。自分が成年皇族の一員である自覚が芽生え、個々の行事に責任感を持って臨まなければならないと感じた瞬間でございました」
長所は「どこでも寝られる」こと
愛子さまは、「事前にいただいた一つ一つのご質問に対して、なるべく具体的に自分の言葉で、自分の思いを皆さんに知っていただけるようにと思って準備してまいりました」と話した通り、お人柄を知る上で、多くのことを語られた。
記者からご自分の長所・短所を問われると、長所は「どこでも寝られる」ことを挙げ、愛子さまはこんなエピソードを披露する。
「以前、栃木県にある那須の御用邸に着いた晩に、縁側にあるソファで寝てしまい、そのまま翌朝を迎えた、なんてこともございました」
短所は「自由で伸び伸びと育ったようで、少しマイペースな部分があるところだと自覚しております。また、小さい頃から人見知りのところがございますので、これから頑張って克服することができればと思います」
時折、ユーモアを交えて話す愛子さまの顔立ちは、母雅子皇后にも、祖母の上皇后さまにも似てきたと筆者は感じた。
「ボランティアとして被災地で活躍されている方々の様子を報道で目にしまして、自分の住んでいる街であるとかないとかに関係なく、人の役に立とうと懸命に活動されている姿に非常に感銘を受けました。私自身、災害ボランティアなどにも関心を持っております」
ご自分の結婚、そして眞子さんの結婚
ご自分の結婚、そして秋篠宮家の長女小室眞子さんの結婚についても、愛子さまは率直に答えられた。
「結婚は私にとってはまだ先のことのように感じられ、今まで意識したことはございません。理想のお相手については、特別これといったものはございませんが、一緒にいてお互いが笑顔になれるような関係が理想的ではないかと考えております」
「眞子さんは10歳年上でございますので、物心ついた時にはすでに頼りになるお姉さまのような存在で、周りを見渡し、自ら率先してお手伝いされる姿が特に印象に残っております。幼いころから、明るく優しく接していただいたことをありがたく思うとともに、いとことして末永いお幸せをお祈りしております」
「国民と苦楽を共にしながら務めを果たす」
また、皇室の一員としてのあり方に関する質問に、愛子さまはこう答えられた。
「私は幼いころから天皇、皇后両陛下や上皇、上皇后両陛下をはじめ皇室の皆さまが国民に寄り添われる姿や、真摯(しんし)にご公務に取り組まれる姿を拝見しながら育ちました。そのような中で、上皇陛下が折に触れておっしゃっていて、天皇陛下にも受け継がれている、『皇室は国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にしながら務めを果たす』ことが基本であり、最も大切にすべき精神であると私は認識しております。国民と苦楽を共にするということの一つは、被災地に心を寄せ続けることであるように思われます。
被災された方々の心の傷が癒えるのは容易なことではないと思いますし、また時間を要するものであると想像されます。そういった苦難の道を歩まれている方々に思いを寄せ続けるということも、大切にしていくことができればと思っております」
まだ20歳とは思えない、若き皇族の自覚が感じられた。ご両親の天皇、皇后両陛下への感謝の気持ちも、愛子さまは熱く語られた。
「両親は私の喜びを自分のことのように喜び、私が困っている時は自分のことのように悩み、親身に相談に乗ってくれました。私がどのような状況にありましても、一番近くで寄り添ってくれるかけがえのないありがたい存在でございます。両親からもらった大きな愛情や励ましが、私の支えになっておりました。これまでたくさんの愛情を注ぎ、育ててくださったことに深く感謝しております」
愛子さまは小学校時代に不登校となることもあったが、雅子さまが通学に付き添うなどして、懸命に我が子を支えられた。愛子さまはこの時のことも踏まえて語られたのだろう。
「(愛子さまの誕生に際して雅子さまが語られた)『生まれてきてくれてありがとう』という母の言葉に掛けて、私も『生んでくれてありがとう』と(両親に)伝えたいと思います。これからもどうかお体を大切に、長く一緒に時間を過ごせますように、という言葉も添えたいと思います」
母雅子さまはお世継ぎ問題に苦しんで体調を壊し、愛子さまの出産までに、いばらの道を歩んできた。出産後の記者会見で雅子さまは「子どもを見て、本当に生まれてきてありがとう、という気持ちでいっぱいになりました」と涙ぐまれた。横にいた陛下(当時は皇太子)がそっと雅子さまに手を添え、励まされた。両陛下にとって、一人娘からの「生んでくれてありがとう」は、最良の言葉となるに違いない。
天皇陛下の優しい人柄と、皇后さまの聡明さを継いで
記者からの質問は、緊迫するウクライナ情勢にも及んだが、愛子さまは堂々と答えられた。
「ウクライナ国内で多くの尊い命が失われていることに、非常に心を痛めております。現在の国際情勢は厳しいものがございますが、天皇陛下がお誕生日の記者会見の折におっしゃった言葉、『国と国との間ではさまざまな緊張関係が今も存在しますが、人と人との交流が国や地域の境界を超えて、お互いを認め合う平和な世界につながってほしいと願っている』と、私も同じ思いでおります」
約30分の会見を終え、愛子さまが天皇陛下の優しい人柄と、皇后さまの聡明さを継いだ女性に成長されたことを感じた国民は、筆者一人ではなかったのではないか。皇位継承問題の決着がついていないので、愛子さまの将来はまだ見えないが、天皇、皇后両陛下の一番そばで過ごされている愛子さまに、「次代の天皇に」と望む人がますます増えることを予感させる記者会見だったと思う。
バナー写真:初めての記者会見をなさる愛子さま=2022年3月17日、皇居・御所(ロイター)