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デジタルネイティブのZ世代を象徴する「タイパ」:三省堂の辞書編集者が選ぶ2022年の新語

言語 社会

単なる流行語ではない、後世まで残りそうな新語として辞書編集者が激論の末に選んだ「タイパ」。かつてはじっくり鑑賞する映画も飛ばして観るという時代を象徴している。

『三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2022」』の選考会が11月30日、都内で開催された。大賞には、時間効率、時間対効果を表す「タイパ」が選ばれた。

 動画まで飛ばしてみる時代を象徴

「今年のヒット商品」「今年の新語・流行語」「今年のヒット曲」― 年末はランキング発表が目白押し。三省堂は、単純なヒットや人気とは一線を画し、「辞書に収録するにふさわしい後世まで残る言葉」を選定するのが特長。

「費やした時間に対して得られる成果・満足度の割合」を意味する「タイパ」は

録画したドラマや映画を倍速で視聴する、粗筋だけ分かるように編集されたファスト映画を見る、音楽のさびのみを聞くなどの行動に見られる、できるだけ時間を掛けずに効率よく成果を得ようとする風潮の中で多く使われる / 『大辞林』編集部語釈

1995~2010年頃に生まれた「Z世代」は、「タイパ」に敏感だという。インターネットの世界に情報が溢れ、無限にコンテンツが提供されるようになる時代の変化を目の当たりにしてきたデジタルネイティブ世代にとって、タイパを意識して、時間を効率的に使うことが、コンテンツの海に溺れないための知恵なのかもしれない。

『三省堂国語辞典』の飯間浩明編集委員は「今まで、映画やドラマはじっくり鑑賞するものだった。(インターネット上にあふれる)映画もドラマも数をこなさないと、友だちとの会話についていけない」という時代を映す言葉だという。

また、辞書編集者の心をつかんだのは、「パフォーマンス」をたった1文字の「パ」に置き換える “アクロバティックな短縮” だという。先例である「コスパ=コストパフォーマンス」がすっかり市民権を得ているからこそ、「タイパ」も広く使われるようになりつつあるが、「パシフィック・リーグをパ・リーグと略して以来の、大胆さ」だという。

三省堂  辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2022」

1 タイパ タイムパフォーマンスの略。費やした時間に対して得られる満足度の割合。昔は映画も音楽も、じっくり何度も楽しむものだったが、今ではタイパの高いものが好まれる時代
2 構文 文や句として成り立つように、単語などを文法的な要素に従って並べたもの。転じて、特定の階層や人物に沿って文章のまとまり作り上げたもの。「おじさん構文=おじさんのメールなどにありがちな、絵文字や親しげな言い回しを散りばめた長い文章」
3 きまず(気まず) 気まずい、あるいは、違和感やとまどいを感じるとき、ひいては、それほど気まずくないときにも「きまず」と使う感嘆詞。気まずさの極みを「きまゼット(Z)」とも表す
4 メタバース ネットワーク上に構築される、三次元グラフィックの仮想空間。利用者は、VRゴーグルなどを用いて仮想空間に参加する
5 〇〇くない 相手に同意を求める気持ちを表す接尾語。「でしょう?」「くないか?」「くね?」の意味で語尾につける
6 ガクチカ 」生時代に、学業・サークル活動、アルバイトなどで、特に「」を入れたことを略して「ガクチカ」。就活の面接や、エントリーシートで必ず問われるため、自分の見せ方に頭を悩ませる
7 一生 生まれてから死ぬまでの生涯、という意味から転じて、「ずっと」「長らく」の意味で俗用されるようになった。「きょうは眠くて、一生寝てた」
8 酷暑日 一日の最高気温が摂氏40度を超える日の呼称。日本気象協会の用語
9 闇落ち 今までは社会性や品性を保っていた人が、社会通念から外れた行いをするようになること
10 リスキリング 社会人が学び直すことで新たに技能の習得をすること。別の職種に転職する場合だけでなく、これまでの職種にありながらも新たな技能が必要とされる場合に、学び直しをするケースも多い

表中の語釈は三省堂による。

バナー写真:三省堂「今年の新語2022」の大賞発表風景(2022年11月30日)

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