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2019年を象徴する増税とラグビー : 三省堂・小学館の辞書に入るかもしれない言葉

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辞書編集部が選ぶ、流行語ではなく、後世にまで残る言葉は…。

毎年12月に出版社や検索エンジン各社が発表する「今年の新語」「今年、最も検索された言葉」は、1年の総括として注目されている。それぞれに選考基準は異なるが、小学館と三省堂は発行する辞書の編集部や編集者を中心とする選考委員会が、単なる流行語ではなく、辞書に収録するにふさわしい後世まで残る言葉を選定している。

三省堂の新語大賞は「―ペイ」

スマートフォンを利用するキャッシュレス決済サービスが急速に普及している。日本では2014年のLINE Payを皮切りに、Amazon Pay、Origami Pay、楽天ペイ、ファミペイ、ゆうちょPayなどが次々とサービスを開始。2018年末にはPayPayが高いポイント還元キャンペーンと、独特のリズムの連呼型テレビCMで話題となった。

三省堂は、数年前から広まっている「―ペイ」を19年の新語大賞に選定した。三省堂「新明解国語辞典」編集部による「―ペイ」の語釈はなかなか辛辣(しんらつ)だ。

スマートフォンにインストールしたアプリを使い、キャッシュレスで支払いを行うサービス。経済産業省が進めようとしているキャッシュレス決済に伴い、さまざまな支払い方法が広まっている。キャッシュバックキャンペーンやポイント還元、軽減税率などを有利にする方法として用いられている。消費税の10%への引き上げに際して、現金を使用しないことで、増税の実感を少しでも減らすための方法として広めた仕組みとも考えられる。

つまり、 「―ペイ」サービスが支払い方法として定着したのも、新語に選ばれたのも、消費税増税があったからこそということだ。 

小学館は「イートイン脱税」

消費税増税にあたっては、食料品には8%の「軽減税率」が適用されるようになった。ただし、「外食」は軽減税率の適用外となる。同じコンビニで弁当でも、「持ち帰って食べる場合は軽減税率8%」「コンビニ内の飲食スペースで食べれば外食として10%税率」という、消費者にはふに落ちない仕組み。小学館が今年の大賞に選んだのは、「食品を持ち帰り税率の8%で会計して、イートインで食べること」を意味する「イートイン脱税」。数百円単位の小さな買い物で、数円分の「脱税」とは大げさなような気もするが、やはり消費税増税は日々の生活に影響があり、小さな抜け道を通ろうとする人が少なからずいたということだろう。

「にわか」を歓迎したラグビーW杯

三省堂は2位に「にわか」、小学館は次点に「にわかファン」を選んだ。「にわか」はもともと、「急に~になる」の意味で使われる言葉で、「にわかファン」=「急にファンになった人」はどちらかといえば、蔑称的な文脈で使われることが多かった。

ラクビーW杯では、予選プールで日本の快進撃に、ルールも知らなかった人までがテレビにかじりつき、パブリックビューイングの会場に生で足を運ぶようになった。「にわかでごめんなさい」と謙遜モードだった新参ファンを、古くからのファンが「ようこそ、ラグビーの奥深い世界へ!」と温かく迎え入れたことで、日本全体が熱く盛り上がった。

三省堂  辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2019」

1 ―ペイ (本文参照) 
2 にわか (本文参照) 
3 あおり運転 前方を走る車を威嚇し、重大な事故を引き起こしかねない悪質・危険な運転
4 反社 反社会的勢力の略
5 サブスク 定額サービス、音楽や動画配信などで広く普及
6 電凸 「電話で突撃」の略
7 カスハラ カスタマー・ハラスメントの略
8 垂直避難 災害などの際に、建物内で上階に逃げたり、地上階に逃げること
9 置き配 宅配便の置き場所を指定して、留守中でも受け取れようにする
10 ASMR 聴覚や視覚への刺激によって、脳が快感を覚える反応

三省堂の辞書編集部がまとめた選評・語釈はこちら。表中の語釈は編集部で簡略化したもの。

小学館「大辞泉が選ぶ新語大賞2019」

大賞 イートイン脱税 (本文参照)
次点 にわかファン (本文参照)
次点 闇営業 芸能人が事務所を通さずに仕事を受ける。特に、裏社会

小学館の選考結果発表の語釈・選評はこちら。表中の語釈は編集部で簡略化したもの。

バナー写真 : 三省堂「今年の新語2019」の大賞発表風景

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