
女優・成海璃子、体を張った新作『ゴーストマスター』を語る
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壁ドンから始まる地獄絵図
12月6日(金)より全国公開の映画『ゴーストマスター』。TSUTAYAが映像作品の企画を公募し、受賞作を映画化する「TCP」(ツタヤクリエイターズプログラム)」で、第2回(2016年)準グランプリに輝いた。深夜ドラマや短編映画など、さまざまな映像制作の「ブラック」な現場を体験してきたというヤングポール監督が、その鬱憤を悪霊の邪悪なエネルギーに託して思う存分放出するホラータッチの作品だ。
懐かしさと新感覚が同居するホラーコメディ『ゴーストマスター』。三浦貴大(写真)と成海璃子がダブル主演を務める ©2019「ゴーストマスター」製作委員会
舞台は、学園ラブストーリーのロケが行われている廃校。流行に便乗して低予算で企画された、いわゆる「壁ドン」映画の撮影現場だ。金もうけにしか興味のないプロデューサーと、適当に仕事を片付けたい監督の下、映画を深く愛するスタッフが働く。主演俳優が「そもそも壁ドンとは何か」と悩み始めて撮影が中断してしまい、助監督の黒沢明(三浦貴大)が事態の収拾を押し付けられる。
「劇中劇」の主演・桜庭勇也役の板垣瑞生と、ヒロイン・牧村百瀬役の永尾まりや。よくある学園ラブストーリーのワンシーンと思いきや、このあと…。 ©2019「ゴーストマスター」製作委員会
見るからに何かが起こりそうな廃校の教室がロケ現場 ©2019「ゴーストマスター」製作委員会
巨匠と同じ名前を持つ、ホラー映画オタクの彼は、「いつか監督になる」という夢を唯一の心の支えに過酷な労働環境に耐えてきた。しかし現場の混乱に苛立つ人々の心ない発言によって思いは砕かれ、大切に温めてきた脚本「ゴーストマスター」は悪霊に憑依されてしまう。
主人公・黒沢明(三浦貴大)は女優・渡良瀬真奈(成海璃子)を主演にした監督作品の撮影を夢見るが… ©2019「ゴーストマスター」製作委員会
現場は「ゴーストマスター」が猛威を振るう阿鼻叫喚の地獄絵図と化し、ホラーやスプラッターにサイバーパンクの要素を織り交ぜながら、アクションからSFまで、さまざまなジャンルの映画をリミックスしたシーンが展開していく。物語のテーマも「究極の映画愛とは何か」という方向へと導かれる。
現場で権力をふるった「壁ドン」映画の監督・土田(川瀬陽太)も「ゴーストマスター」の餌食に ©2019「ゴーストマスター」製作委員会
たとえ何が起ころうとも、現場ではカメラを止めちゃいけない! ©2019「ゴーストマスター」製作委員会
「あんなにひどい現場は…」
ヒロインは「アクション俳優を父に持つ2世女優」という設定の渡良瀬真奈。現場を仕事と割り切ってクールにこなしながら、最終的には黒沢をはじめとするスタッフの映画愛を全身で受け止める。この特殊メイクや激しいアクションが求められる役柄を、成海璃子が演じた。子役からテレビや映画で活躍し、来年にはドラマデビューから20年を迎える彼女に、今回の撮影の舞台裏や映画への思いについて聞いた。
——数々の作品に出演してきた成海さんから見て、あの「映画の中の映画」の撮影現場をどう思いましたか。
さすがにあそこまでひどい現場は経験したことがないです(笑)。「キラキラ系の壁ドン映画が流行っているから撮ろう」みたいな現場は、正直キツイだろうなあと思います。やっぱり自信を持って面白いってオススメできる作品を届けたいですから。
——映画には、そんな現場ながら一生懸命に仕事するスタッフたちも登場しますね。
私は結構クールに考えるタイプなので、あそこまで映画愛をストレートに出すのは、ちょっと恥ずかしいかなあと…。
——でも成海さん自身も、映画に懸ける思いは特別ですよね?
もちろん私も映画の仕事がすごく好きですが、「食べられなくてもやる」っていう選択肢は自分にはないですね。テレビドラマも年間に1本は絶対出たいし、CMにも、舞台にも、そして映画にも出る。そういうふうにちゃんとバランスよくやりたいと心掛けています。
——作る喜びだけではやっていけないと?
たとえどんなに思い入れのある映画を作っても、お客さんに観てもらえなければ意味がないと思うんです。それこそ「スクリーンに映っているものがすべて」だと思うから、自分が現場でどれだけ頑張ったかなんて関係ないんです。
——『ゴーストマスター』自体の撮影現場はどうでしたか。
撮影は去年の6月で、校舎の屋上や体育館のシーンはものすごく暑くて、かなり過酷でしたね。でも、脚本を読んだ時点で大変だろうなと覚悟していましたから(笑)。