
村重杏奈、ホラー映画『悪鬼のウイルス』主演でスクリーンデビュー 撮影中の恐怖体験を語る
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『悪鬼のウイルス』は、二宮敦人が2015年に発表したホラー小説。20年に漫画化もされ、累計45万部のヒットを記録した。これを22年に『オカムロさん』で長編デビューした新鋭、松野友喜人監督が映画化。都市伝説をめぐる疑似ドキュメンタリーの手法にアクションを織り交ぜた新感覚ホラーに仕上げた。
映画『悪鬼のウイルス』 ©2025二宮敦人・TOブックス/映画『悪鬼のウイルス』製作委員会
智樹(太田将熙)、日名子(村重杏奈)、颯太(桑山隆太)、奈々枝(華村あすか)の4人は「都市伝説バスターズ」を名乗るYouTuber。都市伝説の現場に潜入取材する動画シリーズを撮影している。
4人はある日、神隠しのうわさがある千葉県の「旧石尾村」へ撮影に訪れた。だがその後、全員が消息不明になる。家族から捜索願を受けた警察は、村外れのトンネル付近で4人が借りていたレンタカーを発見。残されたビデオカメラには戦慄(せんりつ)の映像が残されていた──。
神隠しのうわさがある村に乗り込んだ「都市伝説バスターズ」。左から颯太(桑山隆太)、奈々枝(華村あすか)、日名子(村重杏奈)、智樹(太田将熙) ©2025二宮敦人・TOブックス/映画『悪鬼のウイルス』製作委員会
オファーを受けて悩んだ理由
ヒロイン・日名子を演じた村重杏奈はアイドルグループHKT48の出身。HKT48は、東京・秋葉原、名古屋・栄、大阪・難波に続くAKB48グループ全国展開の第4弾として福岡・博多をベースに2011年10月に誕生した。村重はその第1期生だ。
「アイドルを目指していたわけじゃなくて、芸能人、スターになりたいと思っていました。『テレビに出たい!』という超ミーハー心で、13歳の時にオーディションに応募したんです」
2021年まで10年間活動しHKT48を「卒業」。その後バラエティー番組に数々出演するうち、明るいキャラクターと奔放な発言が人気を呼び、2023年には「ブレイクタレント」の上位にランクインした。
そして2025年、『悪鬼のウイルス』でついに映画初出演を果たす。それもいきなりの主演だ。
―子供の頃の「スターになりたい」という夢が実現しつつありますね。
「主演すごいねー!」って言われるんですけど、実はあまり主演っぽくないんですよ。これで女優です、とか言うのは恥ずかしい。女優で活躍しているみなさんは、もっともっとプロですし。今回は周りに助けてもらった主演だと思っています。
―オファーが来たときの気持ちは?
お話をいただいたのがバラエティー番組に出始めて1年くらいで、ちょうど出演本数を気にしている時期。10日間くらいテレビのスケジュールが取れなくなると聞いて、まずそこが悩みどころだったんです。でも周りから「大きな経験になる」「仕事はバラエティーだけじゃない」と言われて。「じゃあ、頑張ってみます」って。
©2025二宮敦人・TOブックス/映画『悪鬼のウイルス』製作委員会
―撮影前に不安はありましたか。
めちゃくちゃ不安でしたね。台本の見方も知らなかったし、セリフってどうやって覚えるんだろうとか。相談する相手もいなかったので、どうしようって……。
―どのくらいの間、悩んだんですか?
台本をいただいて3日後には顔合わせがあったんですよ。その3日間は途方に暮れていました。とりあえず、台本だけは完璧に頭に入れてから行こうと思って、やり方も分からないまま、録音とかして自分なりに覚えていきました。
ベテラン俳優、田中要次も出演 ©2025二宮敦人・TOブックス/映画『悪鬼のウイルス』製作委員会
―ホラー映画でしたが、怖いのは大丈夫?
めちゃくちゃ無理です。でもなぜかバラエティーで心霊ロケに行かされることが多くて。耐性はありましたし、これも縁なのかなと。私が心霊ロケに行くと必ず「出る」んですよ。だから「撮れ高」は最高なんです。今回もバラエティーで得た謎の自信だけはありました。
―やっぱり「出た」んですか?
スタッフの人数も多いし、初めてのことばかりで、そこまで気が回らなかったですね。でもシンプルに怖かったです。深夜の撮影が多かったし、森の中や殺風景なコンクリートの建物で撮るシーンが多かったので。
待っていた真の恐怖体験
映画は、日名子ら4人が消息不明になる前に何が起きたかを追って展開する。やがて地元に暮らす謎の女子高生マイ(吉田伶香)が登場し、村の秘密が少しずつ明らかになっていく。そこに男女間の微妙な関係が絡んでくる。
松野友喜人監督の前作『オカムロさん』に主演した吉田伶香がマイ役で登場 ©2025二宮敦人・TOブックス/映画『悪鬼のウイルス』製作委員会
―日名子の役についてはどうでしたか。
私と真逆でお嬢様。育ちがよくて上品で、女の子らしくて、でもちょっと腹黒いところもある。会ったことのないタイプでしたね。日名子は智樹に思いを寄せているんですけど、その一方で襲ってくる相手と戦わなきゃいけない。何とかして智樹を自分につなぎとめようと誘惑する。「でも上品なんでしょ?」って頭がパニックになりました。自分とリンクするところが全然なかったのが怖かったですね。ホラーよりも怖かったです。
迫りくる敵におびえる日名子と智樹 ©2025二宮敦人・TOブックス/映画『悪鬼のウイルス』製作委員会
―撮影期間中は緊張しましたか。
初主演というだけで緊張しますよね。その上、時間がないのもプレッシャーでした。1つシーンを撮ったら、もう2度と撮らないわけじゃないですか。1回1回、取り返しがつかないので、もう神経がぶち切れるくらいの研ぎ澄まされ具合でしたね。
―バラエティーの仕事との違いは大きかったですか?
バラエティーは自分のエピソードをいかに面白く話すかなんですけど、お芝居って誰かになり切らなきゃいけない。今まで「村重一本」でやってきたので、いざ別の人になってくださいと言われると、人ってこんなに戸惑うんだな、みたいな。初めて「村重を殺した」瞬間でしたね(笑)。監督には、日名子になる瞬間に目が変わって、ポテンシャルが高かったと言ってもらえて。難しかったですけど、演じられてよかったなと思いました。
―撮影の合間には、バラエティー番組の収録で東京に戻ることもあったそうですね。切り替えが大変だったのでは?
けっこうこんがらがった10日間でした。撮影にいない間はほかのメンバーがLINEで報告してくれて、向かう車の中でLINEの写真を台本と突き合わせながら、空気感を確認していましたね。最初、ホラー映画と聞いて、撮影期間中ずっと暗い雰囲気で過ごすのかなあと不安だったんですけど、チームのみんなと楽屋が一緒で、シリアスなシーンの合間もジャンケンしたり、お菓子を分け合ったりして(笑)。殺風景なところで撮影して帰ってきても、そこの空間だけは学校の放課後みたいな雰囲気で、唯一ホッとできる場所でした。そのおかげでメリハリを付けて頑張れたのかなと思います。
©2025二宮敦人・TOブックス/映画『悪鬼のウイルス』製作委員会
―それがなかったら、かなりつらかった?
どうしてもしんどい瞬間はたくさんあって、ホテルに帰って「ハァ~」みたいな。で、テレビで自分が出ているバラエティーを観て、「そうそう、これが村重だよ!」って。今回は唯一、ドリフみたいに牛乳を吹き出すシーンがあって、あそこだけ村重に戻れました。
何事も挑戦あるのみ
―今後、どんな役に挑戦したいですか?
それがまったくなくて(笑)。今回いかに大変かを思い知らされたので。最初は主演と聞いて、不安はありつつ期待してもらっているワクワク感もあったんですが、撮影に入るとそれが一気になくなって。もっと厳しい現場もいっぱいあるでしょうから、このチームじゃなかったらって思うとちょっと怖いですね。でも挑戦はしたいので、ヒロインの「オモロ親友」とか、近所のうるさいおばさん役とかやってみたいです。
©2025二宮敦人・TOブックス/映画『悪鬼のウイルス』製作委員会
―1つ作品を終えて、自信になったのでは?
それはありますね。撮影期間中はいっぱい考えたけど、考えた分だけ成長できたと思うので。何でも挑戦していくのが村重だと思っています。何事もやってみないことには分からない、やると決めたからには逃げずにぶつかってみようと。
―新しいことに挑戦する姿が、人に勇気を与えますよね。
そうなっていたらいいなと思います。人の心を動かすってすごく難しいことなので今回の作品を観てもらったり、取材の記事を読んでもらったりして、誰かの背中を押すきっかけになればうれしいです。
―芸能活動の新たな一歩になりましたか。
そこまで大きな話ではないと思います(笑)。ただ村重には、こういう一面もあるんだよと。勇気を持って挑戦したこと、そこは見てほしいですね。
撮影:五十嵐 一晴
ヘアメイク:YUMBOU(イルミニ) スタイリスト:櫻井 かおり
取材・文:松本 卓也(ニッポンドットコム)
©2025二宮敦人・TOブックス/映画『悪鬼のウイルス』製作委員会
作品情報
- 出演:村重 杏奈
太田 将熙 桑山 隆太(WATWING) 華村 あすか 吉田 伶香
大熊 杏優 町田 大和 角 由紀子 鳥之海 凪紗 田中 要次 - プロデューサー:山本 清史
- 監督・編集:松野 友喜人
- 脚本:山本 清史、小田 康平
- アクション監督:三元 雅芸
- 原作:二宮敦人「悪鬼のウイルス」(TO文庫刊)
- 配給:イオンエンターテイメント
- 製作年:2025年
- 製作国:日本
- 上映時間:99分
- 公式サイト:demon-virus.movie/
- 2025年1月24日(金)より全国公開中
予告編
バナー写真:映画『悪鬼のウイルス』主演の村重杏奈(撮影:五十嵐一晴)