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地雷ゼロの世界に向けた日本の決意

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地雷は単なる武器ではない。戦争が終わって数十年たっても死をもたらす脅威だ。この対人地雷根絶に取り組んでいる団体、英国の「ヘイロー・トラスト」が東京でイベントを開催し、今なお多くの課題を抱える地雷除去活動への協力を訴えた。

戦争のレガシー:地雷

世界中の紛争地域にばらまかれた対人地雷を除去するために、日本をはじめ多くの国々が資金援助を行い、無数の地雷を除去してきた。それにもかかわらず、今もまだ数え切れないほどの地雷が埋まったままで、毎年数千人もの罪のない人々を無差別に殺傷し続けている。しかもその多くは子どもだ。 

過去20年間にわたって、紛争の及ぼす長期的影響を記録し続けてきた英国の報道写真家ジャイルズ・ドゥーリー氏は、地雷を「戦争のレガシー」と呼んでいる。

爆発物と起爆装置から作られた手製爆発装置(IED)の被害者でもあるドゥーリー氏は、地雷除去活動の強力な推進者だ。2011年、ドゥーリー氏はアフガニスタンで取材中、IEDによって両足と左腕を失った。けがを治療し人生を立て直すまでの長期にわたる闘いや、耐え難い傷の痛みなど、彼の体験を聞くと、多くの人が日々受けている被害をより身近に感じ、理解することができる。ドゥーリー氏は今でもアンゴラ、カンボジア、シリアなど紛争の傷痕が残る地域を訪れては被害に遭った人々の写真を撮り続け、惨状を伝えている。それらの写真は『Legacy of War (戦争のレガシー)』と名付けた自らのホームページに掲載され、被害者の声と共に、長期的に対人地雷がもたらす悲惨な現状を伝えている。

IEDによって自らが受けた傷や、現在行っている地雷被害者を撮影する活動について語るジャイルズ・ドゥーリー氏
IEDによって自らが受けた傷や、現在行っている地雷被害者を撮影する活動について語るジャイルズ・ドゥーリー氏

ドゥーリー氏はメッセージを携えて東京を訪れた。英国の地雷除去専門ヘイロー・トラスト(HALO Trust:Hazardous Areas Life-Support Organization)と、日本のAAR Japan(難民を助ける会)が6月11日に開催したLandmine Free 2025キャンペーン・イベント「地雷ゼロを目指す夕べ」に出席するためだ。イベントには日本の政治家や海外の外交官も数多く出席した。

地雷の意識啓発を推進

「IEDや不発弾(UXO)の話は、それによって人生を破壊された人々の話でもあります」とドゥーリー氏は言う。和平宣言の数十年後に娘ときょうだいを不発弾で亡くしたラオスの女性。両足を無くし仕事も失って防水シートの上に置かれた犬のバスケットの中で寝起きするカンボジアの男性。これまでに出会った人々から耳にするのは痛ましい話ばかりだ。「けがの痛みだけではありません。二度と働けなくなることで、その一家は働き手を失います。家族全員が影響を受けるのです」

6月11日のイベントで対人地雷とその除去を説明
6月11日のイベントで対人地雷とその除去を説明

ヘイロー・トラスト代表のジェームズ・コーワン氏も、世界から地雷を無くすことの重要性を唱える一人としてスピーチに立った。「地雷が無くなれば、その国は正常な状態に戻ります。観光業や産業、農業を再開し、人々が再び普通の生活を送れるようになるのです」。世界で最も古く最大の人道的地雷除去組織のヘイロー・トラストと、日本で最も古くから活動する国際NGOの一つAARは、地雷除去活動への支援を強化するよう日本政府に働き掛けている。

「Landmine Free 2025」キャンペーンについて説明するヘイロー・トラスト代表のジェームズ・コーワン氏
「Landmine Free 2025」キャンペーンについて説明するヘイロー・トラスト代表のジェームズ・コーワン氏

地雷除去へのコミットメント

1997年、日本など130カ国を超える国々は、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲を禁止するオタワ条約(対人地雷全面禁止条約)に署名した。また2014年には、日本は他の締約国と共に「2025年までに世界から地雷をなくす」という野心的な目標に合意した。日本は現在も主要な資金拠出国だが、近年、援助額が減少している。「地雷・クラスター爆弾モニター報告書」によると、地雷除去活動への日本の支援額は、13年の62億円から17年には36億円と4割以上減少した。

公明党の山口那津男代表(左)やバシール・モハバット駐日アフガニスタン大使(右)らの要人もイベントに参加
公明党の山口那津男代表(左)やバシール・モハバット駐日アフガニスタン大使(右)らの要人もイベントに参加

「地雷ゼロを目指す夕べ」はこの問題への国内の関心を集めるために開催され、大勢の参加者が集まった。イベントでは、公明党の山口那津男代表と自民党の外務省政務官・辻清人議員が共にスピーチをした。野党では、立憲民主党の会派に属する岡田克也議員らの姿もあった。会場では世界での地雷除去活動を記録したパネル写真が展示され、英国のヘンリー王子からのビデオメッセージが流された。ヘンリー王子は、亡き母のダイアナ妃が生前積極的に関わっていた地雷除去活動を引き継いでいる。

2013年にアンゴラの地雷原を訪れた英国のヘンリー王子(右)。母の故ダイアナ妃同様、ヘンリー王子も地雷除去活動を熱心に支援している(提供:ヘイロー)
2013年にアンゴラの地雷原を訪れた英国のヘンリー王子(右)。母の故ダイアナ妃同様、ヘンリー王子も地雷除去活動を熱心に支援している(提供:ヘイロー)

日本が果たす役割

AAR理事長の長有紀枝(おさ・ゆきえ)氏は、2025年地雷ゼロの目標を達成するよう日本や他の資金援助国に働き掛けるべきだと強調する。「日本の地雷問題への関心は、オタワ条約が調印されてから、徐々に低下しています」と長氏は指摘する。「最近、国連の持続可能な開発目標(SDGs)が注目されていますが、地雷の問題もSDGsに密接に関連し、象徴する課題であることをもっと認識する必要があります」

AARの地雷除去活動について説明する同理事長・長有紀枝氏
AARの地雷除去活動について説明する同理事長・長有紀枝氏

コーワン氏は、日本の拠出額は減少しているが、それでも日本は長年にわたり継続的に地雷除去活動を支援している数少ない国の一つだと付け加えた。「日本は世界中の地雷除去活動に資金援助を行っている国としてとても高く評価されています。1997年当時の機運を再び取り戻すべき時が来たのです」

ドゥーリー氏は、同イベントで呼び掛けた心打つメッセージの中で、地雷の問題は一人ひとりの人生に関わる問題だと訴え、地雷を早急に取り除かなければ、地雷がもたらす身体的・心理的影響が「今後数世代にわたって」続くだろうと述べた。彼が特に気に掛けているのは子どものことだ。

「地雷の被害を受けた子どもたちに会うたびに、自分が日々感じている痛みや、心理的影響、そしてけがによってに失ったチャンスについて考えます。また、毎朝目覚めると、今日も世界のどこかに、自分と同じように地雷でけがをし、同じような現実に直面している子どもがいるのだということを考えます。私がこうして活動を続けているのは、いつの日か、朝目が覚めた時に、もう地雷でけがをする子どもはいないのだと思える日が来ると信じているからです。それは実現可能なのです」

左からジャイルズ・ドゥーリー氏、ジェームス・シングルトン(ニッポンドットコム)、AAR Japan理事長の長有紀枝氏、ヘイロー・トラスト代表のジェームズ・コーワン氏
左からジャイルズ・ドゥーリー氏、ジェームス・シングルトン(ニッポンドットコム)、AAR Japan理事長の長有紀枝氏、ヘイロー・トラスト代表のジェームズ・コーワン氏

原文英語

取材・文=ジェームズ・シングルトン(ニッポンドットコム英語部)

バナー写真:スリランカ・ムハマライの地雷原で見つかった地雷「P 4」を運ぶ現地の地雷除去員。写真提供:アリソン・ジョイス

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