大寒
文化 暮らし 環境・自然・生物- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
二十四節気の最終節「大寒」は、1月20日ごろに当たる。厳寒期に入るが、日が次第に長くなり、少しずつ春に向かう。旧暦では大寒の次に訪れる「立春」を1年の始まりとしていたため、その前日の「節分」が1年の終わりとなる。節分には豆をまき、邪気を払う。
氷上ワカサギ釣り
氷が一定の厚さを満たした湖沼では、ワカサギの穴釣りが解禁される。温暖化の影響で凍らない湖や沼が増えているが、釣り上げたばかりのワカサギを天ぷらや唐揚げにして食べるのは、格別。
寒の時期の食文化
冬の厳寒期は、日本酒、みそ、しょうゆなど、発酵食品の仕込みに適していることから「寒仕込み」の食文化が発展してきた。寒の時期に仕込むと、雑菌が繁殖しにくく、ゆっくりと発酵するため、味が良くなると言われる。
この時期には「寒ざらし」と言って、冷たい水にソバの実や米を浸して寒風にさらして乾燥させることを「寒ざらし」と言う。寒に当てることで風味と甘さが増す。「寒ざらしそば」や長崎県島原市に伝わる「かんざらし」(白玉粉で作った団子に蜜をかけて食べる)は、この製法で作っている。
ロウバイ
江戸時代初期に中国から渡来したことから、唐梅(からうめ)と呼ばれた。梅に似た花を咲かせるが、ロウバイはロウバイ科の落葉低木で、バラ科の梅とは種類が異なる。ろう細工のような黄色い花びらと甘い香りが特徴。
ロウバイのように厳しい寒さの中でも咲く花は、春のさきがけを感じさせる。俳句には「春隣(はるとなり)」と言って、春が隣まで近づいていることを表す晩冬の季語がある。
ジョウビタキ
越冬のために日本に飛来する冬鳥。雄は胸の鮮やかなオレンジ色が特徴で、スズメよりやや小ぶり。火打ち石の音のような鳴き声を発することから「火たき」と名付けられたという。明るく開けた場所を好み、住宅地、公園、河原などに生息する。
初地蔵(1月24日)
毎月24日は地蔵菩薩(ぼさつ)の縁日で、その年最初の縁日を「初地蔵」と言う。親しみを込めて「お地蔵さま」と呼ぶ地蔵菩薩は、右手に錫杖(しゃくじょう)、左手に宝珠(ほうじゅ)を持って、子どもたちを守り、人々を苦しみから救ってくれる。「おばあちゃんの原宿」で知られる東京・巣鴨地蔵通り商店街にある高岩寺は地蔵菩薩が本尊。「とげぬき地蔵」でおなじみの高岩寺の縁日には、参道に多く商店が軒を連ね、高齢者向けの商品が並ぶ。
節分
「節分」には季節の分かれ目という意味があり、かつては立春、立夏、立秋、立冬のそれぞれ前日を節分と呼んでいた。後に旧暦で、冬から春へと季節の変わる立春を1年の始まりとするようになり、その前日だけを節分と呼ぶようになった。節分にいった大豆をまくのは、福運を呼び寄せ、鬼に象徴される災いや災難を退治するため。まいた後に無病息災を願って、年齢の数だけ豆を食べる。
全国の神社仏閣で節分の行事があるが、千葉県・成田山新勝寺や、東京・浅草寺など各地の寺では、年男年女の著名人による盛大な豆まきが行われる。
節分の日に、その年の恵方(縁起のいい方角)に向かって、太巻きずしを丸かじりする「恵方巻き」が注目されている。願い事を思い描きながら無言で1本を食べ切るのが恵方巻のスタイル。正月行事の「恵方参り」が形を変えて復活したとされる。
恵方巻きは、江戸時代末期から明治時代の初期に大阪の商人が商売繁盛を願って始めたものを、1977年に大阪にあるのり問屋の組合がキャンペーンを仕掛け、コンビニの販売戦略と相まって全国規模に広がったと言われている。
節分には、焼いたイワシの頭を葉付きのヒイラギの枝にさしたの「焼嗅(やいか)がし」「ヒイラギイワシ」を軒に飾る風習がある。臭いやとがったものには、魔よけの効果があるとされていたことに由来する。
ブリ
ブリは出世魚。成長過程で呼び名が変わり、関西では「ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ」、関東では「ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ」と地域でも異なる。ブリと呼ばれるまでに、約4年かかるとされる。寒ブリは刺し身、ぶり大根などの煮物、ぶりしゃぶなど、いろいろな味を楽しめる。
水菜
名前の由来は、畑の畝の間に水を引き、肥料を使わずに土と水だけで栽培したことだと言われている。京都で栽培が盛んだったため、「京菜」とも呼ばれる。かつては鍋料理や漬物がメインだったが、特有の辛みと香りが肉や魚の臭いを消すので、洋食との相性もいい。シャキシャキした食感は、サラダにもお勧め。
監修:井上象英 (INOUE Shōei)、暦作家・暦法研究家・神道教師・東北福祉大学特任講師。『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、講演や執筆活動を行う。
バナー写真=山形市にある蔵王温泉スキー場の樹氷(PIXTA)