冬至
文化 暮らし 環境・自然・生物- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
太陽の位置が最も低くなり、北半球では日が一番短くなる「冬至」。現代のカレンダーで12月22日ごろに当たる。この日を境に昼間の時間が長くなっていく。東京の場合、太陽が一番高くなる夏至より日照時間が約5時間短くなる。徐々に寒さが厳しくなり、冬本番を迎える。
日本には、冬至にカボチャを食べ、ゆず湯に入る習慣がある。
ゆず湯(12月22日)
冬至に「ゆず湯」に入る風習がある。冬が旬のユズは香りが強く、湯船に浮かべると邪気をはらったり、風邪を予防したりするとされ、銭湯ができた江戸時代から客寄せのために始まったと言われている。丸ごと浮かべたり、切ったユズをガーゼなど布の袋に入れたりした湯に漬かり、無病息災を祈願する。血行が良くなり、香りにはリラックス効果がある。
カボチャ
「冬至の日にカボチャを食べると風邪をひかない」という言い伝えがある。昔は冬に新鮮な緑黄色野菜が不足したので、常温で長く保存できるカボチャは、貴重な栄養源だった。体内でビタミンAに変化するベータカロチンやビタミンCが豊富。煮物、天ぷら、ポタージュ、スイーツなどさまざまな料理が楽しめる。
シクラメン
燃え立つ炎のような花びらから、和名は篝火花(かがりびばな)と呼ばれる。美しい花とは裏腹に「豚のまんじゅう」との別名もある。英語で「sow bread」(雌豚のパン)と呼ばれたことから日本に伝わる際、「豚のまんじゅう」と訳された。豚がシクラメンの球根を食べたことに由来するという。花期が長いので重宝され、今ではさまざまな種類が出回り、クリスマスや歳暮などの贈答品として使われるようになった。
クリスマス(12月25日)
日本では、宗教的な祭事として祝う人は少ないが、
日本でチキンを食べるのは、米国や英国などで食べるローストターキー(七面鳥)の代わりに鶏肉が手に入りやすかったからだと言われている。クリスマスツリーは「聖樹」、クリスマスケーキは「聖菓」と書き、それぞれ俳句の季語になっている。
正月飾り
日付が12月26日に変わると、街中の飾り付けが一変して正月モードになる。門松は、年神様が降りてくる神聖な場所として、邪気を家に入れないようにする意味がある。戸口につるすしめ飾りも神様を迎える準備が整った場所であることを示す。
正月の準備は、12月28日までに済ませるのが理想だといいと言われている。29日は「苦(9)の日」、31日は「一夜飾り」「一夜餅」といわれ、葬式の「一夜飾り」を連想させることから、避けた方がいいとされている。
鏡餅
大小の餅2枚を重ねた鏡餅は、それぞれ意味がある。大きい餅は太陽、小さい餅は月と考えられ、福が重なることを願った。飾り方は地域によって異なるが、昆布、ウラジロ(シダ)、ユズリハ、ダイダイなどを大小の餅を2つ重ねた鏡餅と共に供える。
大みそか(12月31日)
大みそかは1年の最後の日。おせち料理の準備や掃除を終えて、年越しそばを食べる。細く長いそばは「長生き」を意味するほか、切れやすいことが「厄災や苦労を断つ」縁起の良い食べ物と言われている。一方、新年を迎える準備で忙しい大みそかには調理に手間のかからないそばを食べたとの説もある。大みそかから、新しい年が始まるころには、108あると言われる人間の煩悩を除去するための除夜の鐘が108回、寺院から聞こえる。
正月
正月は、睦月(むつき)とも呼ばれ、新年を祝う行事をする。新年に「あけましておめでとうございます」とあいさつするのは、「1年の始まりに神様が家にくることがおめでたい」との意味があると言われている。
初日の出(1月1日)
日本では古くから全てのものに神が宿ると信仰されていたので、日の出に合わせて無病息災や豊作祈願の習慣があった。中でも元日の日の出は年神様が現れるとして「ご来光」と呼び、1年が良い年であるように祈った。初日の出を拝するのは、江戸時代中期から始まったと言われる。
おせち料理
節句の日に神様に食べ物を備えたのが、おせち料理の始まり。やがて正月の料理を指して「おせち料理」と呼ぶようになった。おせち料理には家内安全、不老長寿、子孫繁栄、五穀豊穣(ほうじょう)などの意味が込められた食材を使い、1年の幸せを願って作った。普段から忙しく働く女性が、正月くらいは炊事から解放されるようにと、日持ちがする料理をそろえたと言われている。
雑煮
雑煮は、餅を食べることで年神様の魂を体内に取り込むとの意味がある。さまざまな具材を煮合わせていたのが語源となり、雑煮と呼ばれる。具材や味付けは、地域によって特徴がある。
お年玉
「年玉」は、神様に供える丸い鏡餅を指していた。年玉をいただくことで、1年の活力を分けてもらうとも考えられていた。現在は、年長者が子どもたちに与える正月の小遣いを「お年玉」と呼び、ポチ袋に入れて渡す。「これっぽっち」との気持ちを込めて渡すことが、ポチ袋の名前の由来になった。
初詣
年が明けると、近くの神社や寺に昨年の無事を感謝し、新たな年に家族の無病息災や願望達成を祈る初詣に出掛ける。ルーツは平安時代から始まった神社の氏子の家長が大みそかの夜から元日の朝にかけて、神社にこもって豊作や無病息災を祈った「年籠(としごも)り」だと言われている。これが大みそかに参拝する「除夜詣」と元日の「初詣」に分かれたと考えられている。
監修:井上象英 (INOUE Shōei)、暦作家・暦法研究家・神道教師・東北福祉大学特任講師。『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、講演や執筆活動を行う。
バナー写真=冬至にゆず湯に漬かるカピバラ(PIXTA)