寒露
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「寒露」は、現代の暦で10月8日ごろ。空気が澄み、露が冷たく感じる。収穫の秋を迎え、運動会や感謝祭が各地で催される。ガンやカモなど冬鳥が続々と日本に渡ってくる。涼しい夜に虫の音が響き渡る。
運動会・体育祭
小中高校などで年に1度開かれる運動会。秋の開催が一般的だったが、台風や暑さを避けて春に開催する学校も増えている。
日本初の運動会は、1874(明治7)年3月に東京・築地にあった海軍兵学寮で行われた「競闘遊戯会」だと言われている。英国人教師が自国の「アスレチック・スポーツ」を取り入れたのがきっかけとされる。1890年代には全国の小学校に広がり、体育的行事に位置付けられた。中高校の中には体育祭と呼ぶところもある。
時代とともに運動会の運営も変わり、子どもの写真を撮るための場所取りをしなくて済むよう、事前に整理券を配布したり、学年ごとに入れ替えをしたりする小学校が増えている。
長崎くんち(10月7日~9日)
長崎市の諏訪神社で江戸時代から380年続く大祭。旧暦の9月9日に開かれ、9はめでたい陽の数字とされていたことから、9日(くにち)を「くんち」と呼ぶようになったのが、長崎くんちの語源と言われている。
長崎くんちは、市内の町が交代で7年に1度、踊りを奉納する「踊町(おどりちょう)」を担う。踊町の先頭は、100キロを超える傘鉾(かさほこ)を1人で担ぎ上げる。その年によって出し物は異なるが、36人で約1トンの太鼓山を宙に飛ばす息の合った演技や、龍が玉を追いかける姿を生きているかのように表現する龍踊(じゃおどり)などは圧巻。
祭りの期間中、くんち料理と呼ばれる小豆ご飯、ダイコンとザクロで作るざくろなます、どじょう汁などを食べる風習がある。
伊勢神宮・神嘗祭(10月15日~17日)
伊勢神宮(三重県伊勢市)で行われる神嘗祭(かんなめさい)は、その年の最初に収穫した穀物を天照大神にささげて五穀豊穣(ほうじょう)に感謝する祭り。天皇陛下が皇居内の水田で栽培し収穫された初穂や、各都道府県の農家からの献上米がささげられる。
ムラサキシキブ(紫式部)
ムラサキシキブは、日本原産の落葉低木。秋の深まりとともに、実が熟して紫色になる。英語名は、Japanese beautyberry。紫の実の色を『源氏物語』の作者に例えて名づけたと言われる。白い実を付けるシロシキブもある。
京都・鞍馬の火祭(10月22日)
京都・由岐(ゆき)神社の例祭・鞍馬の火祭りは、京都三大奇祭の一つ。平安時代に、由岐明神が京都御所から鞍馬へ移されたとき、鴨川のアシでたいまつを作り、各家にかがり火をたいた行列が祭りの始まりという。大たいまつの中を神輿(みこし)が火の粉をかぶりながら練り歩く。たいまつは、最後に鞍馬寺の山門前にひしめき合う。
虫聞き
日本では昔から、秋に鳴く虫の声に耳を傾け、親しんできた。平安時代には、野山で虫の声を聞いて酒宴を楽しみ、江戸時代になると「虫売り」が商売になった。コオロギの鳴き声は、『万葉集』や『源氏物語』にも歌が収められている。俳句の世界で虫は「秋の鳴く虫」を指す。スズムシやコオロギ、キリギリスなどの虫の音は、童謡にもなっている。
リンゴ
「1日1個のリンゴで医者いらず」ということわざがあるほど栄養価が高い。カリウム、カルシウム、鉄分、食物繊維、ビタミンCを含み、生活習慣病の予防効果も期待される。全国の収穫量の約6割を青森県が占め、ジュース、ジャム、シードルなどの果実酒、スイーツなどの加工品も豊富だ。現在出回っているのはどれも明治になって日本に入って来た西洋リンゴで、「ふじ」「つがる」「王林」などの品種がある。
シメジ
一般に「シメジ」の名で売られているのは、かさが茶色くて丸いブナシメジや、かさが平らのヒラタケ。一方、ホンシメジは、広葉樹やアカマツなどの林に自生し、うま味が強い。ブナシメジもヒラタケも、うま味成分のアミノ酸が多く、くせがないのでどんな料理とも相性がいい。
サバ
「青魚の王様」と言われるほど栄養豊富なサバ。1年中出回っているが、秋サバは、脂がのって特においしいとされる。旬は秋から冬にかけて。高い抗酸化作用があるミネラルの一種が含まれ、ガン予防やアンチエイジングなどの効果が期待される。塩焼き、みそ煮、しめさば、刺し身など、さまざまな味わい方がある。
監修:井上象英 (INOUE Shōei)、暦作家・暦法研究家・神道教師・東北福祉大学特任講師。『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は講演や執筆活動を行う。
バナー写真=山形県・月山登山道脇に咲くリンドウ(PIXTA)