白露
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朝晩の温度差が大きくなって露を結ぶ様子を「白露(はくろ)」という。現代の暦で9月8日ごろを指す。残暑の中にも秋の気配を感じる。
9月は和風月名で、「長月(ながつき)」と呼ぶ。夏至が過ぎて、9月になると急に夜が長く感じられることから「夜長月」となり、変化して「長月」と呼ぶようになった。
重陽の節句(9月9日)
五節句の一つで「菊の節句」とも言われ、長寿を祈る日。中国の陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)では奇数は「陽」で、縁起の良い数字とされ、陽数の中で最も大きい9が重なる9月9日を「重陽」と呼ぶようになった。現代では10月中旬に当たり、ちょうど菊が美しく咲く時期。中国では菊には邪気を払う力や、延命長寿の霊力があるとされていたことから、平安時代の宮中では花を飾ったり、酒に花びらを浮かべたり、詩歌を読んだりして楽しみながら無病息災を願った。江戸時代になると「重陽の節句」の行事食として栗ご飯を食べるようになり、菊酒が庶民の生活に定着するようになった。
敬老の日(9月の第3月曜日)
敬老の日は、日本独特の祝日。お年寄りを敬い、長寿を祝う。戦後、兵庫県野間谷村(現・多可町)で村主催の敬老会が開かれたことがきっかけで1947年、9月15日を「としよりの日」と定めたのが始まりだ。その後、1966年に「敬老の日」として国民の休日に加えられた。
シュウメイギク(秋明菊)
原産は中国。名前からして 菊の仲間だと誤解されるが、キンポウゲ科。英語名をJapanese Anemoneと言うだけあって、アネモネに似ている。
鶴岡八幡宮(神奈川県鎌倉市)の例大祭(9月14~16日)と流鏑馬(やぶさめ)(9月16日)
鶴岡八幡宮は、源頼義が1063年、京都の石清水八幡宮の分社を鎌倉・由比ガ浜にまつったのが始まり。その後、源頼朝が現在の場所に神社を移し、鎌倉幕府の拠点とした。鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』によると、1187年8月15日に放生会(ほうじょうえ=仏教の思想に基づき、捕獲した野生の生き物を元のすみかに放し、殺生を戒める儀式)と流鏑馬が行われ、鶴岡八幡宮例大祭となった。以来800年以上続いている。16日に行われる流鏑馬は、武士に扮(ふん)した射手が疾走する馬に乗って的を射抜く神事。流鏑馬にこと寄せて兵力を結集したと言われている。
セキレイ
二十四節気をさらに細かく分けた七十二候では、9月13日ころを「鶺鴒鳴(せきれいなく)」としていたので、セキレイは秋に鳴き始める鳥だと思われがちだが、鳴き声は1年中聞こえる。尾を上下に振りながら地面をたたくように歩く様子から「石だたき」とも呼ばれる。神話によると、日本列島をつくったと言われる夫婦のイザナギとイザナミにセキレイが子孫の残し方を教えたと伝えられることから、子孫繁栄を象徴する鳥とされている。
昆布
縄文時代から食べていたとされ、奈良時代の文献にすでに登場している。和食のうまみとなるだしを取るのに欠かせない食材だ。昆布のうま味成分がグルタミン酸であることは1908年、東京帝国大学教授の池田菊苗が発見した。天然と養殖があり、生産量の9割以上は北海道産。夏から秋にかけて収穫し、乾燥させて出荷する。
ナス
「秋ナスは嫁に食わすな」ということわざは、体を冷やさないように気遣う説と、おいしいので食べさせないという説がある。焼く、煮る、揚げる、漬けるなど用途が広い万能選手。品種も多く、丸ナス、長ナス、水ナスなど、各地には特徴を生かした郷土料理がある。
ナシ
中国ではナシを「百果の宗」(果物の王様)と呼び、珍重された。日本で出回っているのは「日本ナシ」「西洋ナシ」「中国ナシ」に分けられる。日本ナシは、シャリシャリとした食感と爽やかな甘み、みずみずしさが売り。クエン酸やアスパラギン酸など、疲労回復が期待される成分や食物繊維を豊富に含み、夏バテ予防にも効果的。
監修:井上象英 (INOUE Shōei)、暦作家・暦法研究家・神道教師・東北福祉大学特任講師。『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は講演や執筆活動を行う。
バナー写真:朝露をまとった稲穂(PIXTA)