処暑
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「処暑」は、新暦で8月23日ごろ。「処」には「落ち着く」の意味があり、文字通り暑さが和らぐころを指す。早い地域では稲刈りが始まる。台風シーズンと重なるため、注意が必要だ。
山梨県富士吉田市「吉田の火祭り」(8月26日~27日)
富士山の夏の登山シーズンに終わりを告げる祭りで、日本を代表する奇祭の一つ。北口本宮富士浅間神社と諏訪神社の例大祭で、国の重要無形民俗文化財に指定されている。26日は大神輿(みこし)や富士山をかたどった「御影(みかげ)」をかついで市内を練り歩き、日没とともに高さ3メートルのたいまつ約90本に火がともされ、街中が炎で染まる。
秋田県大仙市・全国花火競技大会「大曲の花火」(8月の最終土曜日)
全国の花火師が腕を競う大会で、日本三大花火大会の一つ。1910年に始まり、100年を超える歴史がある。花火の色や形を審査し、最も高い評価を得た花火師には、内閣総理大臣賞が付与される。
「二百十日(にひゃくとおか)」、「二百二十日(にひゃくはつか)」
立春から数えて210日目を「二百十日」、220日目を「二百二十日」と呼ぶ。新暦で二百十日は9月1日前後、二百二十日は9月11日ころになる。ともに台風が来たり、強風が吹いたりする特異日だったことから厄日とされていた。
日本独自の新しい暦・貞享(じょうきょう)暦を編さんした渋川春海(1639-1715)は、立春から210日目と220日目は海が荒れることが多いとの漁師からの伝聞を実体験したのがきっかけとなり、暦に盛り込んだと伝えられている。この頃になると、各地で嵐を鎮めるための「風(かざ)祭り」が行われる。
富山市八尾地区の「おわら風の盆」は、9月1~3日、風の神を鎮め、暴風被害の回避や豊作を願って行われる。三味線や太鼓、胡弓(こきゅう)の音に合わせて、編みがさを目深にかぶった男女の踊り手が「越中おわら節」を舞う。江戸時代から300年続く伝統行事は、北陸に秋の訪れを告げる。
防災の日(9月1日)
10万人以上の犠牲者を出した関東大震災が起きたのは、1923年のこの日。防災意識を高めるために1960年に9月1日を防災の日と定めた。日ごろから家族でハザードマップを確認したり、防災グッズを点検したり、災害時に備えたい。
秋の七草
秋の七草は、『万葉集』で歌人の山上憶良が秋に咲く草花7種を挙げて歌にしたことに由来する。
ハギ(萩)、キキョウ(桔梗)、クズ(葛)、フジバカマ(藤袴)、オミナエシ(女郎花)、ナデシコ(撫子)、オバナ(尾花=ススキ)が秋の七草。
トンボ
日本には約200種が生息しているといわれている。前にしか飛ばないトンボは戦国時代、「不退転」の象徴として「勝虫」と呼び、縁起がいいとされた。戦国武将・前田利家はかぶとの前立てにトンボを起用していた。一方、欧米では悪魔の縫い針、魔女の針などと呼ばれ、不吉な虫として扱われている。
イチジク(無花果)
旬は8月の終わりから10月にかけて。花が実の中に咲いて外からは見えないので、「無花果」という和名になった。そのままでも、ジャムやコンポートなど加工にも向く。
スダチ
昔から酢の代わりに使っていたことから「酢橘」(すだち)と呼ばれるようになったと言われる。最盛期は8~10月で、主産地は徳島県。上品な香りは食欲を高め、爽やかな酸味は風邪予防や疲労回復、美肌効果が期待できる。
マイワシ
1年中、水揚げされるが、梅雨時期から秋にかけてのマイワシは、脂がのるので旬の味覚として親しまれている。刺し身や塩焼き、すり身を丸めたつみれなど、料理法もさまざま。
監修:井上象英 (INOUE Shōei)、暦作家・暦法研究家・神道教師・東北福祉大学特任講師。『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、講演や執筆活動を行う。
バナー写真=滋賀県の長浜・北びわ湖大花火大会(PIXTA)