当世風・日本の「二十四節気」:自然とともに生きる

大暑

文化 暮らし 環境・自然・生物

一年中で最も暑い時季「大暑」。小中高校や大学で夏休みが始まる。

二十四節気の中で、最も暑いころを指す「大暑」。現代の暦では、7月23日ごろから8月7日ごろまで。多くの地域で暑さがピークに達するのは、8月上旬。猛暑日や熱帯夜など、暑さを伝えるニュースが増える。

暑中見舞い

普段会えない人や世話になった人に送る季節のあいさつ状の一つ。小暑から立秋(8月8日ごろ)までが暑中見舞いを出す時期。立秋を過ぎると残暑見舞いと呼ぶ。

東京・隅田川花火大会(7月の最終土曜日)

歴史的記録に残る日本最古の花火大会。江戸時代の1733年に発生した大飢饉(ききん)の死者を弔うため、翌年の1733年に8代将軍・徳川吉宗が水神祭(すいじんさい)を行った。その時に音と煙で怨霊を退散させ、魂を慰めようと、「両国川(現在隅田川)開きの花火」を上げたのが原型とされている。花火を鑑賞するために隅田川には屋形船が運行され、高額にも関わらず人気が高い。

屋形船と隅田川花火大会(PIXTA)
屋形船と隅田川花火大会(PIXTA)

カブトムシ・クワガタムシ

どちらも子どもたちに人気だが、カブトムシの雄は頭と胸に長い角がある一方、クワガタムシの雄が持っているはさみは大あごの一部。どちらもほかの昆虫と戦ったり、雄同士で争ったりするときの武器になる。

カブトムシ(左)、ダイオウヒラタクワガタ(PIXTA)
カブトムシ(左)、ダイオウヒラタクワガタ(PIXTA)

カブトムシの名前の由来になった戦国武将のかぶとには鍬形(くわがた)の前立物がついている。(PIXTA)
カブトムシの名前の由来になった戦国武将のかぶとには鍬形(くわがた)の前立物がついている。(PIXTA)

打ち水

温暖化対策の一つに打ち水がある。暑さを和らげるための江戸時代からの暮らしの知恵。日が暮れてからの打ち水は気化熱の力で気温を下げるのに有効で、アスファルトより土の方が効果が高い。最近は地球に優しい日本の文化として見直されている。

打ち水(PIXTA)
打ち水(PIXTA)

うちわと扇子

暑いときに風を起こして涼を取るうちわと扇子。歴史はうちわが古く、中国から飛鳥時代にうちわの原型が伝わったと言われている。平安時代になり、うちわから折りたたんで携帯できる扇子へと改良された。着る物によって使い方が変わり、浴衣はうちわ、振袖などよそゆきには扇子を選ぶ場合が多い。近年は携帯小型扇風機の人気が高い。

うちわ(左)、扇子(PIXTA)
うちわ(左)、扇子(PIXTA)

大阪・天神祭(7月25日)

東京・神田祭、京都・祇園祭と並ぶ日本の三大祭りの一つ。菅原道真をまつった天満宮で、大阪の繁栄と発展、厄払いを祈念する祭りとして1000年の歴史を誇る。みこしが川に入る「船渡御(ふなとぎょ)」と大阪市中心部をみこしなどの行列が練り歩く「陸渡御」とがある。船渡御は陸渡御を終えた人々が船に乗り込み、御神霊を載せた御鳳輦船(ごほうれんせん)など約100艘(そう)が大川を行き交う。船上で催しがあるほか、奉納花火が打ち上げられ、祭りを盛り上げる。

天神祭の船渡御(PIXTA)
天神祭の船渡御(PIXTA)

東北三大祭り

弘前ねぷた祭(8月1~7日 *年によって異なる)ねぶた祭(毎年8月2~7日)

弘前ねぷた祭は、国の重要無形民俗文化財に指定されている。けがれなどを形代(かたしろ)に託して水に流すおはらいから派生したと言われている。青森ねぶた祭は、七夕の灯籠流しが形を変えたとされ、無病息災を祈る。

青森ねぶた祭、2022年8月2日(時事)
青森ねぶた祭、2022年8月2日(時事)

秋田竿燈(かんとう)まつり(8月3~6日)

厄よけやみそぎをして、五穀豊穣(ほうじょう)を祈る祭り。提灯46個をつるした竿燈を手のひら、額、肩、腰などに移す技が見どころになっている。国の重要無形民俗文化財に指定されている。

秋田竿燈まつり(時事)
秋田竿燈まつり(時事)

仙台七夕まつり(8月6日~8日)

仙台藩を築いた伊達政宗の時代から続く伝統ある祭り。全国的に行われる七夕と季節感を合わせるため、新暦に1カ月足して8月に行われるようになった。

仙台七夕まつり(PIXTA)
仙台七夕まつり(PIXTA)

広島平和記念日(8月6日)

1945年のこの日、広島市内に原子爆弾が投下され多くの人が犠牲になったため、広島市が世界平和を祈る日として制定した。平和祈念式典が行われ、原爆投下と同じ時刻の8時15分に、平和の鐘やサイレンを鳴らして、犠牲者の霊を慰めるとともに世界平和の実現を祈り、黙とうをささげる。

広島平和記念公園(PIXTA)
広島平和記念公園(PIXTA)

蝉時雨(せみしぐれ)

セミが一斉に鳴き出したり、泣き止んだりする様子を時雨に例えた言葉を蝉時雨という。夏の季語。鳴くのは雄で、雌への求愛行動。関東地方はアブラゼミやミンミンゼミ、西日本はクマゼミなど、地域によって種類が異なる。

夕立

夏の夕方に降る雨を夕立と言うが、近年では突然降り出す大雨を「ゲリラ豪雨」と呼ぶ。気象庁によると、夕立は夏だけに使う用語で、ゲリラ豪雨は局地的な大雨、集中豪雨を指す。ここ数十年で豪雨災害が多発しているので、注意が必要だ。

大はしあたけの夕立「廣重名所江戸百景」(1857) 歌川広重
大はしあたけの夕立「廣重名所江戸百景」(1857) 歌川広重

京都市・鴨川の納涼床、貴船の川床(5月1日~9月30日*鴨川納涼床は10月末まで延期する店舗もある)

鴨川の納涼床(のうりょうゆか)は、京都市内の中心部を流れる鴨川の川沿いに飲食店や旅館が高床式の座敷「納涼床」を設置し、食事が提供される。江戸時代初期からの歴史がある。一方、貴船の川床(かわどこ)は、貴船川の上に床を設け、食事する。市の中心部より気温が10度近く低いとされ、涼みながら料理を楽しめる。

鴨川の納涼床(左)と貴船の川床(PIXTA)
鴨川の納涼床(左)と貴船の川床(PIXTA)

ゴーヤー(ニガウリ)

ゴーヤーチャンプルー(PIXTA)
ゴーヤーチャンプルー(PIXTA)

豊富な ビタミンCと爽やかな苦みが売りのゴーヤー。チャンプルー、おひたし、肉詰めなど夏バテ予防にうってつけだ。

食べるだけでなく節電対策として株も上げている。苗から育ててベランダや窓につるや葉を茂らせると、緑のカーテンになる。今年の夏も電力不足の恐れがあるため、ゴーヤーを育てる人が増えそう。

ゴーヤーのグリーンカーテン(PIXTA)
ゴーヤーのグリーンカーテン(PIXTA)

トウガン(冬瓜)

冬の瓜と書くが、旬は夏。冷暗所で保存すれば、冬までもつことから漢字で「冬瓜」と書くようになった。平安時代の書物『本草和名』に記載がある。煮込みやスープなど、さっぱりした味とひすい色の果肉が夏向き。

トウガン(左)、トウガンのスープ(PIXTA)
トウガン(左)、トウガンのスープ(PIXTA)

エダマメ

すしやラーメンのように、海外でも「エダマメ」と呼ばれ人気がある。最近では地方の在来種が注目され、山形県鶴岡市の「だだちゃ豆」、新潟市の「新潟茶豆」、京都・兵庫にまたがる丹波地方の「丹波黒大豆」などが有名。このほか、その土地ならではの在来種があり、夏の食卓を豊かにしてくれる。

エダマメ(PIXTA)
エダマメ(PIXTA)

監修:井上象英(INOUE Shōei)、暦作家・暦法研究家・神道教師・東北福祉大学特任講師。『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、講演や執筆活動を行う。

バナー写真=長野県富士見町のヒマワリ畑(ニッポンドットコム)

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