芒種
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新暦6月6日頃を「芒種(ぼうしゅ)」と呼ぶ。大麦や麦など「芒(のぎ)」(種子の先端にトゲ上の細長い突起物)のあるイネ科の穀物の種をまく季節を迎えることが名前の由来。地域によって異なるが、田植えが始まる。
昔は暦の上で立春から数えて135日目の6月11日頃を「入梅」と呼んだ。現在は、地域や気候によって差が生じるため、気象庁が発表する「梅雨入り」が目安になっている。梅の実が熟して色づくころに降る雨だから「梅雨」と書くようになったと言われている。カビを防ぐための湿気対策グッズや雨具の準備、衣替えのタイミングを計るうえで、梅雨入りのニュースは関心が高い。この時期には、傘やレインコートなど、さまざまな雨具が店頭に並ぶ。
梅
梅が最盛期を迎え、スーパーや八百屋に出回る。梅酒用には熟す前の青いもの、梅干しには熟してきた黄色いものを用いる。完熟梅を砂糖と一緒に煮ると梅ジャムになる。
時の記念日(6月10日)
天智天皇(626~671)が即位していた671年、近江の大津宮(現在の滋賀県大津市)に水時計の漏刻を置いて鐘鼓で初めて時を知らせたことが『日本書紀』に記してある。これにちなんで太陽暦に換算した6月10日を「時の記念日」と定めたと言われている。昔は1日を12等分して十二支を当てはめ、鐘や太鼓を鳴らして時を知らせていた。食事は1日2食で、太鼓の音が八つ鳴る「八どき」(午後1時から3時)になるとおなかがすいてくるので、軽く間食を取ることが多かった。そのため、軽食を「おやつ」と呼ぶようになった。
アジサイ(紫陽花)
世界で広く親しまれているアジサイは、日本産の落葉低木。梅雨時に咲く花の代表格だ。花びらに見えるのはがくが変化したもので、正しくは中央にある丸く小さな部分が花。土壌が酸性だと青く、アルカリ性が強いと赤みが強い花が咲く。欧州では「東洋のバラ」と呼ばれ、盛んに品種改良が行われた。欧州産の「セイヨウアジサイ」は、大正時代に逆輸入され、日本でも広く流通した。
住吉大社の御田植神事(6月14日)
農耕の神をまつる住吉大社(大阪市住吉区)で行われる豊かな実りを祈願する行事。神前から授かった早苗で田植えを始める。神楽女(かぐらめ)8人による「八乙女舞」や鎧兜(よろいかぶと)で行う風流武者行事などが披露される。日本三大御田植祭の1つで、重要無形民俗文化財に指定されている。
ホタル狩り(6月中旬)
幻想的な光を放つホタルが舞う姿を鑑賞するホタル狩りは、夏の風物詩。日本人は古くから蛍と関わりがあり、『日本書紀』(720年)に記録がある。日本には約50種類の蛍がいるが、成虫が発光するのはゲンジボタル、ヘイケボタル、姫蛍など、わずかしかいない。水がきれいで流れが緩やかな川やその周辺の草むら、水田などに生息するが、環境の変化で見られる場所が減少。このため、各地で保全活動が広がっている。発光しながら空を舞うのは雄の求愛行動。その間、雌は草むらで不規則に光を放ち、雄を待つ。
父の日
6月第3日曜日。男手一つで育てられた米国の女性が、母の日と同じように父への感謝を表す日が必要だと提唱したのが始まり。父の日にはバラを送ることが多い。
和菓子の日(6月16日)
無病息災を願った仁明天皇が、848年6月16日に神前に菓子や餅を供え、元号を「嘉祥(かしょう)」に改元したことにちなんで、全国和菓子協会がこの日を「和菓子の日」と制定した。江戸時代の「嘉祥の祝い」は、無病息災を祈る行事として宮中や幕府でも重要な儀式となった。行事は明治時代になって廃れたが、1979年に「嘉祥の日」を「和菓子の日」として復活させた。
カレーライスの名脇役ラッキョウ
ラッキョウが旬を迎える。中国から伝わり、日本では酢漬けをカレーライスの付け合わせにすることが多い。ピクルスがない頃、代わりにラッキョウの甘酢漬けを出したのが始まりという。
スルメイカ
旬は5月から9月。全国で漁獲されるが、北海道や青森県が水揚げ地として知られる。生のイカの皮をむき、胴を細く切ったイカそうめんやもち米を身に詰めて甘辛く煮たいか飯、リング揚げや煮物にしても好まれる。乾燥させたスルメ(アタリメ)は、酒のつまみとして人気が高い。
スズキ
6月から8月が旬。名前の由来はすすいだように身が白いので「ススギ」から「スズキ」になったと言われる。夏の白身魚の代表格で、薄く切った刺し身を氷水で急激に冷やして身を引き締める「洗い」は、清涼感のある一品。揚げ物にしても身が柔らかい。
監修:井上象英 (INOUE Shōei)、暦作家・暦法研究家・神道教師・東北福祉大学特任講師。『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、講演や執筆活動を行う。
バナー写真=静岡富士山映す水田風景(PIXTA)