小満
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「小満(しょうまん)」は、麦の穂が育ち、命が満ち始める季節で、現代の暦では5月21日ごろ。農作物の成長を感じる時期なので、農家が小さく満足することから「小満」と呼ぶようになったと言われる。
アヤメ、カキツバタ、ハナショウブ
5月から6月にかけて、アヤメ、カキツバタ、ハナショウブが見頃になる。どれも似た花を咲かせるが、花びらに網目模様があるのがアヤメ、白い筋はカキツバタ、黄色い模様はハナショウブ。5月5日の端午の節句(こどもの日)に飾るのはハナショウブ。東京・根津美術館では毎年、庭のカキツバタの開花時期に合わせて尾形光琳作の国宝「燕子花(かきつばた)図屏風」を展示する。
ベニバナ
「紅色」は、もともとベニバナからきている。花の色は黄色。『万葉集』や『源氏物語』にも記載があり、平安時代から栽培し、染料として利用してきた。現在も山形県で盛んに栽培される。口紅、頰紅などの化粧品にもなる。染料「紅花」で何度も染めを重ねることで鮮やかな色が生まれる。
東京・湯島天満宮の天神祭(5月25日)
東京・湯島天満宮で例大祭「天神祭」が行われる。学問の神様・菅原道真をまつっていることから、受験シーズンになると合格祈願に訪れる人でにぎわう。
御給蚕(ごきゅうそう)
ふ化した蚕が、桑の葉を食べ始める頃。皇居では皇后陛下が皇居内にある紅葉山御養蚕所で蚕に桑を与える「御給桑」の儀をされる。繭から加工した生糸で織った絹織物は宮中の儀式や祭祀(さいし)で用いられる。
田植え
田植え始めに神を迎える行事を「さおり」という。「さ」は神を指し、天から神が降りてくることに由来する。地方によって「御田祭(おんださい、おんだまつり)」と呼ばれる祭りがあり、赤飯を炊くなどして豊作や無病息災を願う。
はしり梅雨
本格的に梅雨に入る前の数日間にわたって続く雨のことを「はしり梅雨」という。気象庁による「梅雨入り」の知らせが南から届き始める。
シジュウカラ
全国で見られるシジュウカラが繁殖期を迎える。黒い顔に白い頬、のどから腹を通ってしっぽまで続く黒いしま模様が特徴。初夏に卵を産み、子育てをする。
世界禁煙デー(5月31日)
世界保健機関(WHO)が1988年、毎年5月31日を世界禁煙デーに制定した。日本では世界禁煙デーが始まる前の1週間を「禁煙週間」とし、たばこと健康の正しい知識を広める取り組みを行っている。
衣替え
日本で6月と10月に衣替えをするのが一般的になったのは、明治政府が公務員や学生に洋式の制服を取り入れてから。今でも学校や一部の企業では6月から夏服、10月から冬服になる。
ソラマメ
さやが空に向かって伸びるように生育することから、この名がついたと言われる。さやの中は蚕がつくる繭のようなので「蚕豆」とも書く。鮮度が落ちやすいので、買ったらすぐに調理する。塩ゆでもよいし、焼そら豆も捨てがたい。サラダ、スープ、天ぷら、パスタ料理などにも春の香りを添える。香川県の郷土料理「しょうゆ豆」は、乾燥させたソラマメをいってから熱いうちにしょうゆ、砂糖、トウガラシを入れた調味液に浸して味をしみ込ませたもの。いっただけなので煮豆とは違い、かんだ時に口の中で砕けるのが特徴。
タコ
地域によってマダコが旬を迎える。日本では奈良時代に書かれた『出雲風土記」に名前が登場するほど、古くから親しまれているが、海外では「デビル・フィッシュ」(悪魔の魚)と呼ばれ、嫌う民族も多い。江戸時代、女性の好きな食べ物を語呂がいいように「イモ、タコ、ナンキン(カボチャ)」と呼んでいた。刺し身、唐揚げ、酢の物、たこ焼きなど日本の食卓に浸透している。
監修:井上象英 (INOUE Shōei)、暦作家・暦法研究家・神道教師・東北福祉大学特任講師。『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、講演や執筆活動を行う。
バナー写真=薫風になびく麦の穂(PIXTA)