立夏
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二十四節気の「立夏(りっか)」から、暦の上での夏が始まる。現代の暦では5月6日ごろに当たり、立秋(8月8日)の前日までが夏。生き物が活発に動き出し、新緑が美しくなる。行楽シーズンの到来だ。
「薫風」
「立夏」は晴れて暖かく、過ごしやすい日が多い。この時期に吹く爽やかな風を「薫風(くんぷう)」と呼び、俳句の世界では初夏の季語。森林浴などで感じる香りの正体は、フィトンチッドという揮発成分で抗菌作用があるとされる。木にかかる雨を若葉雨、緑雨、青雨と呼ぶ。
ホトトギス
初夏の訪れを告げるホトトギスは、『万葉集』『古今和歌集』『新古今和歌集』など数多くの歌集に登場している。漢字では「時鳥」「杜鵑」「郭公」「不如帰」などと書き、その年に初めて聞く鳴き声を「忍音(しのびね)」という季語で表す。
日本初の俳句雑誌『ホトトギス』は1897年、正岡子規の門下だった柳原極堂(1867―1957)が創刊した。子規、高浜虚子らによって今日まで続いており、夏目漱石が『吾が輩は猫である』『坊っちゃん』を発表したことでも知られる。
江戸時代後期(1821〜41年)の随筆集『甲子夜話』には、鳴かないホトトギスを前にした戦国武将の性格の違いを下記のように記している。
なかぬなら殺してしまへ時鳥 (織田信長)
鳴かずともなかして見せふ杜鵑 (豊臣秀吉)
なかぬなら鳴くまで待(て)よ郭公 (徳川家康)
岐阜・長良川の鵜(う)飼い(5月11日~10月15日)
夜の川にかがり火をたき、飼い慣らした鵜を操って川魚を取る伝統漁法「鵜飼い」。長良川の鵜飼いは、1300年前の奈良時代から続き、国の重要無形民族文化財に登録されている。魚を飲み込めないように鵜ののどに縄を巻いて川に放ち、口にくわえたアユを吐き出させる。
この日から10月15日まで漁が解禁となる。長良川の鵜匠は宮内庁に勤める国家公務員で、とれたアユは宮内庁へ献上される。
愛鳥週間(5月10日~16日)
毎年5月10日~16日は野鳥保護を目的に定めた「愛鳥週間」。日本鳥類保護連盟では、野鳥の保護と自然環境や生物多様性の重要性を普及・啓発している。
東京・浅草の三社祭
東京・浅草神社の例大祭・三社祭は、東京の三大祭りの1つ。1312年から始まったと言われ、5月第3週の金、土、日曜日に催される。100基を超えるみこしを法被(はっぴ)姿の男女が担いで町を練り歩く。初日に本社みこし・お霊(たま)入れの儀などを行い、2日目には例大祭式典、最終日にはみこし3基が町内を渡御(とぎょ)する。見どころは雷門前。門に下がる大きなちょうちんが畳まれ、神輿が威勢の良い掛け声とともに本殿に向かう。
京都・葵祭(5月15日)
京都の下鴨神社と上賀茂神社で行われる祭りで、京都三大祭りの1つ。欽明天皇の在位中(540~571年)、凶作に見舞われたり、飢餓や疫病が流行したりしたため、祭礼をしたのが始まりと言われる。鎌倉・室町時代に衰えてしまったが、江戸時代の元禄年間に復活した。御簾(みす)や御所車など全てに葵(あおい)かづらを飾ったことが名前の由来。15日の大行列は、500人以上が平安貴族の装束に身をまとい、京都御苑から上賀茂神社までの約8キロを練り歩く。
母の日
5月の第2日曜日は母の日だ。20世紀初め、米国人女性が白いカーネーションを教会に飾って亡き母をしのんだことが日本に伝わった。日本では赤いカーネーションが定番だが、最近は好きな色を選んで贈ることが増えてきた。
タケノコ
タケノコ(筍)は、竹かんむりに旬と書く。成長が速く、すぐ竹になるのでタケノコとして楽しめる期間は限られる。とれたてがおいしさの秘訣(ひけつ)で、時間がたつとえぐみが出る。天ぷら、炊き込みご飯、若竹煮、吸い物、焼き物などで楽しむ。
監修:井上象英 (INOUE Shōei)、暦作家・暦法研究家・神道教師・東北福祉大学特任講師。『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、講演や執筆活動を行う。
バナー写真=初夏のアオカエデ(ニッポンドットコム編集部)