清明
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「清明(せいめい)」は、春の日差しを受け、全ての命が、清らかに輝き出す頃。新暦の4月5日ごろからをいう。江戸時代中期に書かれた暦の解説書『こよみ便覧』(1787年)に出てくる「清浄明潔(全てのものが清らかで明るいこと)」の略。桜、モクレン、ハナミズキなどが咲き、野鳥がさえずり、爽やかな風がそよぐ。生命(いのち)が輝く季節の到来だ。
花筏(はないかだ)
散った桜の花びらが、池や川の水面(みなも)に浮かぶ様子を筏(いかだ)に見立てて「花筏」と呼び、俳句や茶の湯などで晩春の季語として使う。東京の千鳥ヶ淵や青森の弘前公園外堀の花筏は、特に有名だ。
ハナミズキ
1912年に東京市(当時)が米・ワシントンD.C.に桜の苗木を寄贈し、その返礼としてハナミズキが贈られた。東京・日比谷公園に植樹された北米産のハナミズキは、日本中に広まり、桜と入れ替わるように咲く。
花祭り(灌仏会):釈迦(しゃか)の誕生日(4月8日)
「灌仏会(かんぶつえ)」は、釈迦の誕生を祝う日。寺では水盤に小さな釈迦像を置いて花を飾り、参拝者は甘茶を注ぐ。今は「花祭り」と呼ばれている。
潮干狩り
遠浅の砂浜で、大潮の日の引き潮時に、熊手でアサリやハマグリなどの貝を掘る。青空の下での潮干狩りは、家族連れに人気だ。
この時期は一年の中でも昼間の潮の引きが大きくなるため、潮干狩りに適している。アサリは、春と秋に旬を迎え、ふっくらとしうまみが凝縮されている。酒蒸し、みそ汁、炊き込みご飯、ボンゴレパスタとさまざまな料理で楽しめる。
初ガツオ
生で食べるようになったのは江戸時代ごろと言われている。旬は、春から夏の初ガツオと、秋の戻りガツオの年2回。「初ガツオ」はさっぱりした味なので、皮目を強火であぶった「たたき」にするとおいしい。「たたき」は、食中毒予防のために表面をあぶったのが始まりという説もある。カツオを干して削ったかつお節は、日本料理のだしをとるために欠かせない食材だ。
ツバメ渡来
ツバメは4月頃に、遠く南の国から日本に渡来する。ツバメが巣をかける家は、縁起が良く、商売繁盛や子孫繁栄の印とされている。
タンポポ
コンクリートの隙間からでも花を咲かせる生命力の強いタンポポには、日本固有種と外来種がある。日本固有種は、受粉にハチなど昆虫の媒介が必要で、3~5月にだけ花を咲かせる。
初虹
立春以降に初めて現れる春の虹を指す。「虹」は夏の季語だが、「初虹」は晩春の季語。
アスパラガスとウド
山菜のウドやアスパラガスが、旬を迎える。栽培されるウドは、江戸時代からの伝統野菜。穂先は天ぷらに、茎は炒めてきんぴらに、またゆでて、からし酢みそあえにするとおいしい。
アスパラガスは、グリーン、ホワイト、紫など色の違いで目も楽しませてくれ、疲労回復を助けるアスパラギン酸を多く含む。(※1)
ホタルイカ
体内に発光器をもち、青く光る体長5~7センチメートルのイカ。水深200~600メートルの深海に生息し、産卵が終わると、そのまま浜に打ち上げられるので「身投げ」といわれている。富山湾で、1~5月に大群が海面近くに光る姿を見せるのは「ホタルイカ群遊海面」として国の特別天然記念物に指定されている。身が締まっているのに柔らかくて甘みがある。さしみや沖漬け(しょうゆ漬け)、ゆでてもおいしい。
監修:井上象英 (INOUE Shōei)、暦作家・暦法研究家・神道教師・東北福祉大学特任講師。『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、講演や執筆活動を行う。
バナー写真=タンポポとテントウムシ(PIXTA)
(※1) ^ 「日本の72候を楽しむ」白井明大著