雨水
文化 暮らし 環境・自然・生物- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
「雨水(うすい)」は、雪が雨へと変わり、氷がとけ始める季節。現代の暦では2月19日ごろにあたる。寒気が緩んで、雨水が大地や畑を潤し、草木の芽吹きを促す。そろそろ農作業の準備を始める頃だ。
三寒四温
3日ほど寒い日が続いた後に、4日ほど暖かい日が続く冬の時期の気象状況を表す言葉。ほぼ7日周期で寒暖を繰り返しながら天気が変化し、春に近づいていく(※1)。
北野天満宮の梅花祭(2月25日)
学者の家に生まれ、5歳で和歌を詠んだ平安時代の貴族・菅原道真(845-903)は、優秀だったため、今でも「学問の神」としてあがめられている。しかし、政敵・藤原時平(871-909)の策略により京都から福岡の大宰府に左遷され(901年)、失意のまま2年後に亡くなった。道真の死後、都で落雷などの天変地異が起こり、追放に加担した関係者に次々と厄災が降りかかった。当時の人々は、それらを呪いと考え、道真を天神(雷の神)としてまつり、大宰府天満宮(福岡県)を建立した。後に御霊を鎮めるため全国に約1万2000ある天満宮の総本社として、京都に北野天満宮が建てられた。梅を愛(め)でた道真をまつった「天満宮」には必ずといっていいほど梅が植えられている。京都・北野天満宮の梅花祭(2月25日)には参道に露店や骨董(こっとう)市が開かれ、多くの参拝者が訪れる。
奈良・東大寺の修二会(しゅにえ)(3月1日~14日)
奈良・東大寺では、毎年3月1~14日に1200年以上も続く仏教の行事、修二会が行われる。日々の過ちをざんげし、国家安寧や五穀豊穣(ほうじょう)、無病息災を祈願する。修二会は1250年以上続き、戦時中も一度も途切れることがなかった。3月12日の深夜に行われる「お水取り」は、若狭(福井県)から送られる水をくんで祈祷(きとう)し、御香水(おこうすい)とする儀式。木造の二月堂堂内を松明(たいまつ)を持った連行衆(れんぎょうしゅう)が、達陀(だったん)と呼ばれる荒行をして、松明を振り回し、回廊を走り抜ける。火の粉を浴びると一年間無病で過ごせるといわれ、大勢の人々が集まってくる。
ひな祭り・上巳の節句(3月3日)
ひな祭りは平安時代から続く行事。女の子の健やかな成長を祝って、ひな人形と桃の花を飾る。ひし形3段の「ひし餅」は、赤い部分は解毒作用のあるクチナシ、白は血圧を下げるヒシの実、緑は厄よけの力があるヨモギが使われた。ハマグリの吸い物や、ちらしずし、ひし餅、白酒で祝う。
ハマグリ
ひな祭りや結婚式に欠かせないハマグリは、2枚のかみ合わせが他の貝殻とは決して合わないことから、仲むつまじい夫婦の象徴とされている。平安時代から左右の貝に絵を描いて合わせる貝合わせという遊びが行われてきた。冬から春が旬で、酒蒸しは絶品。
「獺祭(だっさい)」の意味は?
日本酒の銘柄で知られる「獺祭」だが、言葉の意味は意外に知られていない。この頃になると、カワウソが、魚をたくさん取って、食べる前に目の前にずらりと並べる。その姿がまるで供物を並べて神様や先祖をおまつりしているように見えたことから、この言葉が生まれと言われる。
野焼き
昔は農薬などがなかったので、野山の枯れ草を焼くことで害虫を一掃し、草や虫の灰が、馬や牛の資料となる草の肥料となっていた。伝統行事としての野焼きは、1000年以上続き、今でも奈良の若草山、熊本の阿蘇などで行われる春の風物詩だ。
福寿草(フクジュソウ)
幸福と長寿を象徴する花。江戸時代(1603-1868年)には「福告げ(ふくつげ)草」と呼ばれ「福を招く」というおめでたい名前から、寄せ植えに使う鉢花として人気が高い。
イチゴ狩り
イチゴは、ビタミンCを豊富に含み、カルシウムも豊富で、イライラなどの精神不安を沈めてくれる効果が期待できる。地域によって異なるが、1月中旬ごろからイチゴ狩りが始まる。
監修:井上象英 (INOUE Shouei)、暦作家・暦法研究家・神道教師・東北福祉大学特任講師。『神宮館高島暦』の主筆を長年勤め、現在は講演や執筆活動を行う。
<参考文献>
- 『365日、暮らしのこよみ』井上象英
- 『日本の七十二候を楽しむ』白井明大
- 『おうち歳時記』中西利恵
- 『二十四節気に合わせて心と体を美しく整える』村上百代
バナー写真:八甲田山, 青森県 地獄沼 雪解け © フォトライブラリー
(※1) ^ 「日本の七十二候を楽しむ」白井明大著