新幹線
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九州から北海道までを結ぶ
日本で初めての新幹線、東海道新幹線(東京-新大阪間)は、1964年の東京五輪直前に開業した。世界で初めて時速200キロ超で運行する「夢の超特急」と呼ばれ、日本の戦後復興と高度経済成長の象徴となった。72年には山陽新幹線が新大阪-岡山間で開業。75年に博多まで延伸され、新幹線は九州に到達した。
82年に東北新幹線(大宮-盛岡間)、上越新幹線(大宮-新潟間)が開業し、路線は東京から北にも広がった。一方で新幹線を生んだ国鉄は、経営難により87年に分割民営化。運行はJR各社に引き継がれた。
国鉄民営化の前後に新幹線の新規建設が財政的に困難になると、在来線を新幹線と同じ線路幅に改修する「ミニ新幹線」方式が考案された。この方式で92年に山形新幹線、97年に秋田新幹線が開業。ミニ新幹線区間は最高時速130キロだが、東北新幹線との直通運転が始まった。
民営化後は、新幹線の新たな路線は国の特殊法人(現在は独立行政法人)が建設し、JRに貸し出す仕組みが導入された。これにより97年には翌年の長野冬季五輪に向けて、北陸新幹線の高崎-長野間(長野新幹線)が開業。ミニ新幹線ではなく、専用の線路を時速260キロで走行可能な「フル規格」で整備された。
その後もフル規格の新幹線建設が相次いだ。東北新幹線は2003年に八戸、10年に新青森まで延伸。九州新幹線は04年に熊本-鹿児島中央間で開業し、11年に博多-熊本間が開通した。15年に北陸新幹線の長野-金沢間、16年に北海道新幹線の新青森-新函館北斗間が開業。九州から北海道までが新幹線網で結ばれた。
22年9月には西九州新幹線(武雄温泉-長崎間)、24年3月に北陸新幹線の金沢-敦賀間が開業。さらに、27年以降に中央リニア新幹線・品川-名古屋間、31年以降に北海道新幹線・新函館北斗-札幌間、46年に北陸新幹線・敦賀-新大阪間の開通が予定されている。
最速は東北新幹線の時速320キロ
東海道新幹線が1964年に開業した時の最高時速は210キロ。ひかり号は東京から新大阪までを最短3時間10分で結んだ。86年に時速220キロとなり、東京-新大阪間は3時間を切った。92年には時速は270キロまで向上し、新たに登場したのぞみ号が同区間の所要時間を2時間半に大幅短縮。2015年からは時速285キロ、最短2時間22分で運行している。
東北新幹線も82年開業当初の最高時速は210キロだったが、85年に240キロ、92年に275キロ、11年に300キロと速度アップを続けた。13年からは時速320キロで走行し、これが全ての新幹線の中で最速となっている。
「新幹線のお医者さん」ドクターイエロー
新幹線は高速であることに加え、過密ダイヤで運行されることも大きな特徴だ。東海道新幹線の1日平均列車本数は340本以上で、ピーク時は3分間隔で運行される。東北・上越・北陸・北海道新幹線の列車も合計で1日320本を上回る。このように高速かつ過密ダイヤで列車が走る新幹線には、設備の安全を保つための専用車両がある。
東海道・山陽新幹線の電気軌道総合試験車は、黄色の車体から「ドクターイエロー」の名で親しまれている。「新幹線のお医者さん」として、東京―博多間を10日に1回程度、最高時速270キロで走行しながら、架線、信号、線路などの設備の検測を行う。普段なかなか出会えないため、「見ると幸せが訪れる」とも言われる。
「新幹線劇場」とも言われる7分間の車内清掃
新幹線は速度や安全性の面だけでなく、サービス面でもハイレベルを追求している。その一例が発着駅での車内清掃だ。
JR東日本の場合、新幹線が東京駅に到着してから、次の乗客が乗り込むまでの「折り返し」時間は12分ほど。乗客の降車に2分、乗車に3分かかり、清掃時間は7分間しかないが、そのわずかな時間での完璧な仕事ぶりは、「新幹線劇場」とも呼ばれている。清掃スタッフは、1チーム22人。列車の入線前にホームに整列し、到着すると深々と礼をして乗客を迎える。1両当たり2人ほどで約100席のゴミを集め、座席の向きを手動で変えて、テーブルや窓枠をすべて拭き、枕カバーを取り換える。清掃が終了するとスタッフがホームに再びずらりと並び、一礼して去っていく。この一連の様子に、乗客から拍手が起こることもある。
リニア&次世代車両
新幹線の進化は現在も続いている。JR東海は2015年にリニア中央新幹線の建設工事を開始。最高時速500キロの超電導磁気浮上式リニアモーターカーにより、品川から名古屋まで最短40分で結ぶ計画だ。ただ、静岡県内の区間は、静岡県がトンネル工事に伴う水資源問題を懸念して未着工状態が続いており、当初予定していた27年開業は困難な情勢となっている。
一方JR東日本は、東北・北海道新幹線の高速化を見据えて次世代車両「ALFA-X」を開発中だ。リニア以外では世界最高となる時速360キロでの営業運転を目指す。31年以降に予定する北海道新幹線の札幌延伸までに導入する意向だ。同社は上越新幹線で自動運転実験も行っている。時期は未定だが、将来の実用化を目指している。
バナー写真:開業に向けた車両走行試験でJR長崎駅に到着した西九州新幹線の車両=2022年5月10日、長崎市(時事)