傘:雨にも、風にも、日差しにも強い
暮らし 気象・災害- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
湿度の高い梅雨シーズンが到来すると、傘が手放せなくなる。例年、6月から7月に梅雨明けが宣言されると、日差しの強い夏がやってくる。夏の訪れとともに雨傘に代わって出番が増えるのが、日傘だ。近年は、性別や年齢を問わないデザインの晴雨兼用タイプが人気だ。
日々進化
「Waterfront」のロゴで知られる洋傘トップメーカーのシューズセレクションによると、傘の進化は目覚ましく、機能性や使いやすさで差別化を図った商品が多いという。例えば、折りたたみ式でも自動開閉ができたり、たたみやすい折り目や形状記憶加工を施したり、携帯電話より軽くしたものが売られている。素材にもこだわり、グラスファイバーやステンレスを使って耐久性を高めたり、撥水(はっすい)加工をして、手をぬらさずにたためたり、工夫されている。
日傘は、紫外線(UV)カット率が90%以上で晴雨兼用がほぼ標準装備になってきた。さらに遮熱率を上げるために傘の内側を黒くして光の反射を防ぎ、地面からの照り返しが顔に当たりにくくしたものも人気だ。
かつては百貨店を中心に女性を対象に売られていた高価な日傘も、価格が手頃になったため、若い人たちにも身近になった。熱中症のリスクを減らそうと、環境省が男性にも日傘の使用を呼びかけていることもあり、店頭には男性向けの日傘が増えてきた。TPOに合わせた傘選びが、ファッションの一役を担っている中、ここ数年は、特徴があって長く使え、愛着が持てそうなものを選ぶ傾向にあるという。
1人あたり4.2本
民間気象会社のウェザーニュースによる2022年5月の調査では、1人当たりの全国平均傘所有数は4.2本、東京都平均は4.9本だ。一番使う雨具のトップは「長い傘」で47%、次いで「ビニール傘」26%、「折りたたみ」21%だった。男女別では「長い傘」の利用が男性39%に対し、女性は62%。女性は「雨の日のおしゃれ」「(お気に入りの)傘で気分を上げたい」などの理由で、長い傘を使っていることが分かった。
傘の歴史
日本の傘の歴史は古く諸説あるが、鎌倉時代(1185-1333年)の絵巻物にさし傘とかぶり笠が描かれている。室町時代(1333-1568年)になると、竹の骨組みに和紙を張って油を塗るなどの防水加工を施した和傘が作られるようになった。1690年に創業して以来、伝統的な和傘の製造・販売を手掛ける辻倉(京都市)によると、和傘は江戸時代(1603-1868年)に全国的に広がったものの、1880年代後半に洋傘が登場すると、急速に衰退したという。洋装に合い、耐久性に勝り、軽くて手頃な価格の洋傘に軍配が上がった。
1928年になると、ドイツで生まれた折りたたみ傘が世界的に大ヒット。持ち運びに便利なことから日本でも広がった。
1958年には、東京・浅草の傘メーカー「ホワイトローズ」が、世界で初めてビニール傘を発明。透明で視界がクリアな傘は、1964年の東京オリンピックがきっかけで世界中に知られるようになった。発売当初は高価だったが、海外で大量生産されるようになり、コンビニなどで、1本500〜1000円程度で手に入るようになった。最近は、機能性を高めた高級ビニール傘も出回っている。
一時は衰退した和傘だが、京都では舞妓(まいこ)や芸妓(げいこ)が使い続けたり、旅館・料亭の送迎時やインテリアとして使われることもあったりして、その良さが見直され、観光客や若い人の間で静かなブームを呼ぶようになった。浮世絵や版画など和風のデザインが好まれている。
落とし物の定番
2021年の1年間で東京都内の落とし物として交番や警察署などに届いた傘は、25万670本だった。このうち所有者の分からないビニール傘は保管されず、すぐ処分されるため、使い捨てが問題視されている。
このような現状を受け、日本の使い捨て傘を2030年までにゼロにする民間のプロジェクトが始まった。傘のシェアリングサービスを運営する企業と国内大手企業8社が共同で傘の貸し出しや返却スポットの設置場所を増やして、環境負荷を減らすのが狙いだ。
バナー写真:「Water Front」店内。撮影=ニッポンドットコム。
協力:シューズセレクション