おせち料理
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日本の正月に欠かせない「おせち料理」は、中国から伝わったと言われ、新しい年に幸せをもたらす「年神さま」を迎える料理だ。
5月5日(端午)や、7月7日(七夕)の節句にお供えしていた料理が、いつしか正月の「おせち(御節)料理」と呼ばれるようになった。「おせち」という言葉は平安時代からあったが、今のような料理の原型は江戸時代(1603-1868)中期以降に生まれた。
おせちには縁起を担ぐ食材が多く使われ、海や山の幸をそろえ、見た目も鮮やかで栄養的なバランスも取れている。1年中忙しく働く女性たちが正月くらいは休めるようにと、日持ちのする料理が中心になっている。
盛り付ける器は、正方形で外側が黒塗り、内側が朱塗りの重箱。祝い事が重ねてやってくるようにとの願いが込められる。地域で違いがあるが、重箱を3~5段重ねて、一番上の「一の重」はめでたい「祝い肴(さかな)」や酒のつまみになる「口取り」、「二の重」は焼き物や酢の物、「三の重」は海や山の幸の焼き物、「与(四)(※1)の重」は煮物を入れることが多い。「五の重」は福を詰めておくために、空にしておく。
一の重に詰める「祝い肴」は、関東では、「黒豆」「数の子」「田作り」の3種。京都をはじめ関西では、「黒豆」「数の子」「たたきゴボウ」が多い。
おせち料理の数々
おせち料理には、それぞれ縁起のよい名前が付いている。言葉には力が備わっているという言霊信仰が日本にはあり、口にした言葉の意味通りのことが現実に起きると信じられてきた。そこで、良いことが起こるように縁起がいいと言われる食べ物を具材にするようになった。
黒豆
まめまめしく(元気に)働けるようにという語呂合わせ。黒大豆をしょうゆと砂糖で長時間煮る。黒豆は、風邪を予防するビタミンB群を豊富に含む。
数の子
ニシンの魚卵で、子孫繁栄を意味する。みりんとしょうゆとだしで下味をつけ、かつお節をかけて食べる。
田作り
乾燥させたカタクチイワシの稚魚を炒ってから、甘辛いたれに絡めたもの。江戸時代にイワシを田んぼの肥料にしたところ、たくさん米が収穫できたことから、田を作るものとして「田作り」と呼ばれるようになった。ごまめとも呼ばれ、五穀豊穣(ほうじょう)を表す。カルシウムが多く、骨を丈夫にする。
たたきゴボウ
ゴボウをたたいて繊維を崩してゆでた後、三杯酢とゴマを合わせた衣とあえたもの。ゴボウは土の中に根を深く張り成長することから、「家族が土地に根付いて代々続きますように」という願いが込められている。食物繊維が多く、整腸作用やコレステロール排出の効果が期待できる。
紅白かまぼこ
魚肉のすり身を半円形に整えて蒸した紅白のかまぼこは、初日の出を連想させる。紅白はおめでたい色の組み合わせで、赤は邪気を払い、白は清らかな心という意味がある。
栗きんとん
甘露煮にした栗をサツマイモで作ったあんとあえる。黄金色を金などに見立てて、商売繁盛や金運上昇を願う。ねっとりと粘り気が強くて、甘い栗きんとんは、おせちの定番。子どもに人気だ。
昆布巻き
「よろこぶ(養老昆布)」の語呂合わせで、縁起が良い。「巻」は書物を意味し、学問や教養が身に付くとの願いも込められている。かんぴょうで結んだ巻物のような昆布巻きの中の魚は、地域によって異なる。「二親(ニシン)」と漢字が当てられることから、両親の長生きを祈りってニシンが一般的とされているが、サケなども使われる。
だて巻き
白身魚のすり身と卵を擦り合わせ、砂糖やみりんで甘く味付けてから四角く焼いたものを巻きすで巻いて仕上げる。「だて(伊達)」はおしゃれや華やかさを表す言葉。「巻」は書物を意味し、学業成就を祈って食べる。
紅白なます
紅色はめでたさ、白は神聖を表す紅白なますは、千切りにしたニンジンとダイコンを甘酢であえる。ダイコンにはでんぷんの消化を助けるジアスターゼやビタミンCが豊富。ニンジンに多く含まれるベータカロテンは、疲労回復に効果がある。
エビ
エビはゆでたり焼いたりすると背が丸くなることから、腰が曲がるまで長生きできるようにという長寿の願いを込めている。
タイ
尾頭付きのタイは、「めでタイ」に通じる語呂合わせから縁起の良い食材として祝い膳に使われる。マダイは赤みを帯びているため、魔よけの効果があると信じられてきた。
煮しめ
根菜類やこんにゃく、干しシイタケをだしで煮て、しょうゆ、砂糖で味付ける。具材は地域によって異なるが、親芋から多くの子芋が育つことから子孫繁栄を意味するサトイモ、、穴があり先が見通せるというレンコン、長生きすると言われるカメに見立てた干しシイタケ、縁結びを意味する手綱こんにゃく、大きな芽が出て出世をイメージさせるクワイのほか、梅の形に切ったニンジン、ゴボウなどが一般的。
元日の朝、「あけましておめでとうございます」と新年のあいさつを交わし、それぞれの地方に伝わる餅を入れた雑煮とおせち料理を、両端を細く削った白木の祝い箸で食べる。
最近は、伝統的なおせち料理に加えて洋風や和洋折衷、中華風などバリエーションが増えた。もともとは家庭ごとに工夫を凝らす料理だが、老舗の旅館や料亭、著名なシェフが作るおせち料理をインターネットで予約して購入する家庭も増えている。
写真
- 正月の食卓 Daid Z
- その他の写真=PIXTA
(※1) ^ 四は死と同じ発音で縁起が悪いので、代わりに「与」が使われた