
高額療養費問題:負担増を「当面凍結」に追い込んだがん患者らの悲痛な声
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この制度は、がん治療など高額な治療を受けた場合、患者の負担が重くならないように、毎月の医療費の自己負担に上限を設けるもの。政府は当初、自己負担額を今年8月を皮切りに2026、27年の計3段階にわたって引き上げる考えだった。
しかし、患者団体や野党だけではなく、与党の一部からも反対の声が強まり、第2、3段階の引き上げを見送ることになった。さらに、石破茂首相はこのほど、第1段階の8月からの引き上げも見送る方針を表明。ただ、「秋までに改めて検討する」として、夏の参院選後の引き上げ再開に含みを持たせている。
全国がん患者団体連合会は、600人以上の患者の声を集めた大部のアンケート調査を石破首相に渡し、負担増への反対を訴えたほか、全国保険医団体連合会も調査を実施している。
全国がん患者団体連合会などから「高額療養費制度」に関するアンケートを受け取る石破茂首相ら(時事)
全保連の調査(1月30日~2月16日実施、284件が回答)によると、がんと診断されると、治療のため、会社を休職せざるを得なくなることもあり、「年収が下がった」との回答割合が52.1%に上った。治療費が最もかかった時期の年間治療費(自己負担分)については、「50万~100万円未満」が41%と最も多かった。
現状でも経済的に苦しいなかで、自己負担額を引き上げるとどうなるのか。治療への影響を尋ねる(複数回答)と、「治療回数を減らす」との回答が61%、「治療を中断する」が46%を占め、治療を犠牲にせざるを得ない悲痛な状況が浮かび上がる。
同調査の自由記述にはさまざまな声が寄せられており、肺がんにかかった30代男性は「治療をがんばってきたが、負担額が引き上げられれば、治療を断念すると思う。子供たちのこれからのお金を食いつぶす訳にはいかない」と記している。
バナー写真:PIXTA