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「選択的夫婦別姓導入を」―国連が4回目の勧告 : 夫婦別姓をめぐる動き

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先進国で唯一「夫婦同姓」が義務化されている日本。国連の女性差別撤廃委員会から4回目の選択的夫婦別姓の導入を勧告された。法的な拘束力はないものの、いつまでもスルーし続ける?

国連女性差別撤廃委員会は、2024年10月に8年ぶりに実施した対日審査の結果として、選択的夫婦別姓の導入に向けた法改正を勧告した。さらに、女性皇族による皇位継承を認めていない皇室典範の改正を勧告した。同委員会は、専門家23人で構成し、性差に基づく不平等の是正を目指す女性差別撤廃条約について、日本など締約国189カ国の履行状況を定期的に調査している。日本が夫婦別姓導入の勧告は、2003年、09年、16年に続いて4回目。

民法750条は「夫婦の同氏(=同姓、同名字)」を規定している。別姓も選択可能な国際結婚を除き、法律的に「結婚」するためには、夫婦のどちらかが姓(名字)を変えなければならない。

条文では「夫又は妻の氏を称する」となっているが、厚生労働省の人口動態統計調査によると、2023年の婚姻件数47万4741件のうち、妻の姓を選んだのは2万6344組で、全体の5.5%。多くの女性にとって、「結婚=姓を変える」ことが避けて通れない問題となっている。

妻と夫のどちらの姓を選択しているか?

日本の「姓」をめぐる動き

江戸時代 農民・町民は氏を名乗ることは許されない / 武家の女性は結婚後も実家の氏を名乗る

1870年(明治3) 平民に氏の使用を認める

1875年(明治8) 徴税や兵籍管理のため氏を義務化

1876年(明治9) 夫婦別氏=妻は実家の氏を用いることを規定

1896年(明治31) 旧・民法が夫婦同氏(妻は夫の家の姓を)を規定

1947年(昭和22) 民法(現法)が「夫または妻の氏を称する」として、夫婦同氏を規定

1985年 女性差別撤廃条約締結

1988年 国立大学の助研究者が、仕事上、旧姓の使用を求めて提訴。93年敗訴、96年高裁で和解

1996年 法制審議会が選択的夫婦別姓制度を導入する民法改正案要綱を答申

2001年 国家公務員の通称使用が認められる

2002年 法務省が別姓法案準備するるも、自民党内の反発が強く提出に至らず

2003年 国連の女性差別撤廃委員会が選択制導入を勧告

2006年 パスポートの通称併記が認められる

2009年 女性差別撤廃委員会が2度目の選択制導入を勧告

2010年 法務相が別姓法案準備するも、連立与党内で意見の食い違いがあり提出に至らず

2011年  「夫婦同姓定める民法規定は違憲」として5人が初提訴

2015年 最高裁が「夫婦同氏を定める民法は合憲」判断。「夫婦同氏は社会に定着し、家族の呼称を一つに定めることには合理性がある」

2016年 女性差別撤廃委員会が3度目の選択制導入を勧告

2018年 妻の姓を選択し、仕事では旧姓を使用しているソフトウエア開発会社サイボウズの青野慶久社長らが「夫婦同姓規定によって仕事に支障をきたした」として国に損害賠償を求める

2019年 東京地裁が国に損害賠償を求めた青野慶久氏らの請求棄却 

2021年 最高裁大法廷が家事審判で再び「夫婦同氏」規定を合憲とする決定

2024年6月 経団連が選択的夫婦別姓制度の一刻を早い実現を政府に求める提言をまとめる

2024年10月 女性差別撤廃委員会から4度目の選択制導入勧告

バナー写真:PIXTA

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