突出する日本の半導体産業支援 : 工場新増設に補助金、3年で3.9兆円
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財務相の諮問機関である財政制度等審議会が提示した資料で、日本政府の半導体産業への支援が欧米各国と比べて格段と手厚いことが浮き彫りとなった。
半導体はスマートフォンや人工知能(AI)などのIT機器はもちろんのこと、家電などほとんどの電子機器に組み込まれている。鉄道や電気、水道など社会インフラの制御にも不可欠だ。このため、各国が半導体を「戦略物資」と位置付けて産業支援策を打ち出し、工場誘致にしのぎを削っている。
日本が経済安全保障の観点から過去3年間の補正予算に計上した半導体産業への支援額は約3兆9000億円で、国内総生産(GDP)の0.71%に相当する。内訳では、半導体受託製造世界最大手で熊本県菊陽町に工場を建設した台湾積体電路製造(TSMC)に対する1兆2080億円と、次世代半導体の国産化を目指すラピダス(東京)9200億円が大きい。
米国の半導体産業支援は5年間で約7.1兆円と額では日本を上回るが、GDP比では0.21%と3分の1以下。ドイツは2.5兆円、0.41%で、対GDP比では日本の支援規模が突出している。
1989年の世界半導体売上高ランキングでは、トップ10にNECや東芝、日立、富士通など日本の総合電機メーカー6社が名を連ねた。しかし、韓国メーカーの台頭などで徐々に競争力を失い、90年代末から2000年代にかけては撤退が相次いだ。
99年、NECと日立製作所の半導体メモリー事業が統合してエルピーダメモリを設立したが、12年に会社更生法適用申請。03年には日立と三菱電機の合弁でルネサステクノロジ(現ルネサスエレクトロニクス)がつくられた。2000年代に入って、官民一体の最先端半導体開発を目指す国策プロジェクトがいくつも動き出したが、日本の地位復権には至らなかった。
バナー写真 : PIXTA