Japan Data

東日本大震災から13年:被災地と福島第1原発の現状

社会 防災

2011年の東日本大震災発生から3月11日で 13年。被災地と福島第1原発をめぐる、この1年の新たな動きをまとめた。

原発「処理水」放出を開始

東京電力は2023年8月24日、福島第1原発から出た「処理水」(核燃料の冷却などに使った汚染水の放射性物質をろ過プロセスで取り除き、除去が難しいトリチウムなどが一部残存している水)の海洋放出を開始した。23年度は約3万1200トンの水を4回に分けて海に放出する。

政府は21年4月、処理水の海洋放出を決定し、国際原子力機関(IAEA)に安全性の調査を依頼。IAEAは23年7月、海洋放出が国際的な安全基準に合致していると結論付ける報告書を公表した。

全国漁業協同組合連合会は6月、海洋放出に反対する特別決議を採択。中国税関は放出開始当日の8月24日、日本の水産物の輸入を全面的に停止すると発表した。

東京電力福島第1原子力発電所=2023年8月24日(時事)
東京電力福島第1原子力発電所=2023年8月24日(時事)

「特定帰還居住地域」を新設

東京電力福島第1原発事故による放射線物質の放出・拡散により、原発周辺の7市町村の一部が現在も避難指示区域(帰還困難地域)に指定されている。

福島県の避難指示区域(2024年2月末時点)

政府は帰還困難地域のうち、6町村で優先的に除染を進める「特定復興再生拠点区域(復興拠点)」を定め、2022年6月から順次避難指示を解除し、23年5月にはすべての復興拠点が解除された。大熊町、双葉町などの復興拠点ではインフラ整備が進む一方、避難先からの帰還を望む住民は今のところ、わずかな数にとどまっているのが実情だ。

23年6月の法改正に伴い、政府は復興拠点外の帰還困難区域でも避難指示解除が可能となる「特定帰還居住地域」を新設した。住民が帰還を希望した場合、市町村が計画を作成・申請し、同区域に指定されれば国費で住宅の周辺や道路などを除染できる。これまでに大熊町、双葉町、浪江町、富岡町で計画が認定され、除染作業が始まっている。

原発集団訴訟などの動き

原発事故の避難者が国や東京電力に慰謝料などを求めた全国約30件の集団訴訟のうち、避難指示地域に一時指定された川俣町山木屋地区の323人による訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は2024年2月14日、299人に一審の地裁判決より約5億円多い計約10億9900万円の支払いを東電に命じた。集団訴訟を巡っては、22年11月に、国の指針通りの賠償額は「過少」とする判決が相次ぎ、国の賠償基準が見直されていた。

南相馬市や双葉町など9市町村から避難した住民が東電に慰謝料を求めて福島地裁いわき支部に起こした集団訴訟で、原告87人のうち84人が23年10月に賠償金の支払いと謝罪を条件に東電と和解した。弁護団によると、原発集団訴訟での和解は全国で初めて。背景には、これも国の賠償基準見直しがあるとみられる。新潟の避難者訴訟の控訴審(東京高裁)でも、一部の原告が1月31日付けで和解した。

東日本大震災とは

2011年3月11日金曜日午後2時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生。宮城県北部の栗原市で最大震度7を観測したほか、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の8県で震度6弱以上を観測した。その直後に福島県相馬市で9.3メートル以上、宮城県石巻市で8.6メートル以上、岩手県宮古市では8.5メートルの高さとなる大規模な津波が広範囲にわたって沿岸部に押し寄せた。発災直後の避難者は約47万人。仮設住宅などの入居は最大で約12万4000戸に及んだ。

政府が把握した人的被害は、震災発生から3カ月余りの6月20日時点で、死者約1万5000人、行方不明者約7500人、負傷者約5440人に達した。

復興庁によると、災害関連死を含めてこれまでの死者は1万9765人、行方不明者は2553人、全壊した住家被害は12万2039棟。24年2月現在、2万9328人が避難生活をしている。

避難者数の推移

バナー写真:福島県双葉町で復興支援団体が主催した記念イベント「ただいま おかえり 双葉の夏」に集まった人々=2023年8月26日(時事)

福島 復興 東日本大震災 福島第一原発 福島第1原発