Japan Data

2024年は辰年 : 辰と竜にまつわるあれこれを

暮らし 文化 歴史

2024年の干支(えと)は甲辰(きのえたつ)。干支はもともと、古代中国の思想・陰陽五行説から発生したもので、本来は十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)の組み合わせだが、現代の日本では、十干に言及されることは少ない。動物と結びついた十二支は年賀状のイラストやその年を象徴するキャラクターとして使われることも多く、小さな子どもにまで定着している。辰年にちなみ、タツ・リュウにまつわるあれこれを。

辰の刻 / 辰の方角

「辰」は「子」から始まる十二支の5番目。もともと干支は年、月、日、時間、方位などを示すためにも使われていたもので、「辰の刻」は午前8時を中心とする前後2時間で、現代でいえば丁度ラッシュアワーの時間帯。

辰の方角は東南東。江戸時代、深川あたりの芸者衆は「辰巳芸者」と呼ばれた。これは、江戸城からみて深川が辰巳(南東)の方角にあったから。

辰の刻(PIXTA)
(PIXTA)

北辰は北極星

北海道開拓使のシンボルに使われた青地に赤い五稜星を配した「北辰旗」。北辰とは北極星のこと。「辰」は東南東なのに、なぜ「北辰」が北極星?―― と考えてしまうが、「辰」は日・月・星やその総称=天体を表す言葉でもあり、北辰=北の星=北極星。現代剣道の基礎を築いたとされる江戸後期の剣術の流派「北辰一刀流」は、創始者である千葉家の北辰(北極星)信仰が名前の由来。

「竜」と「龍」

十二支にはそれぞれ動物が割り当てられているが、「辰」は「竜 / 龍」に結びついている。十二支では唯一の想像上の動物。

竜王、竜宮の神、竜宮様とも呼ばれ、水を司る水神として日本各地に祭られている。農山村では日照りの年は、竜神がすむとされる沼や淵で雨ごいをし、漁村で竜神に豊漁を願った。

神社などの手水舎(水盤舎)で竜が口から水を吐きしているのは、まさに水にまつわる神ならでは。

神社の手水舎には竜神様(PIXTA)
神社の手水舎には竜神様(PIXTA)

「竜」が常用漢字で、「龍」はその旧字。熟語では「竜巻」「登竜門」「恐竜」など「竜」を使うのが一般的。ウーロン茶を漢字で表記が「烏龍茶」なのは、本場台湾の表記に準じているからだろう。

「龍馬」か?「竜馬」か?

名前に「龍」の文字が入る有名人といえば、幕末の志士・坂本龍馬。龍馬をここまで有名人にしたのは、司馬遼太郎の歴史小説「竜馬がゆく」だと言われている。あれ? 「龍馬」「竜馬」どちらが正しいの?

高知県立坂本龍馬記念館によると、龍馬本人は一度も「竜馬」と書いたことはないとのこと。司馬遼太郎が小説の中で独自のリョウマを描くために、あえて龍馬の文字を使わなかったともいわれている。

坂本龍馬   出典 : 国立国会図書館「近代日本人の肖像」
坂本龍馬 出典 : 国立国会図書館「近代日本人の肖像

ちなみに、「龍」は1951年の内閣告示の人名漢字表に掲げられ、今でも子どもの名づけに使うことができる。

竜胆=リンドウ

秋になると鮮やかな青紫の花を咲かせるリンドウ。漢字では「竜胆」。根に薬効成分があり、胃腸薬などとして使われていた。熊胆(熊の胆のう)に匹敵するほど苦いことから竜の胆と名付けられたとか。

竜胆は、枝ざしなどもむつかしけれど、異花どもの皆霜枯れたるに、いと花やかなる色あひにてさし出でたる、いとをかし

清少納言は「枕草子」に「リンドウは枝ぶりがむさくるしいけれど、霜が降りて他の花が枯れてしまっても、鮮やかな色で咲いているのがステキ」と記している。

リンドウ(PIXTA)
リンドウ(PIXTA)

竜・龍にまつわることわざや慣用句

【竜頭蛇尾】
頭は竜なのに、尻尾は蛇。「なんだかスゴイのが来たなと身構えたら、そうでもなかった」「初めは勢いがよいが、終わりは振るわない」「期待外れの結果に終わる」などの意味で使う。

【画竜点睛を欠く】
「睛」は「ひとみ」「黒目」などの意味を持つ。竜の絵を描き、睛を点ずれば完成なのに…「点睛を欠く」ということは、最後の仕上げができていない。肝心なところが抜けていることを表す。

【龍のひげをなでる】
「虎の尾を踏む」と対で使うことが多い。無謀で危険なことのたとえ。

バナー画像 : PIXTA

レシピ 干支 辰年