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七福神の名前全部言えますか? : 家康が普及に一役、江戸期に広まった七福求める巡礼

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福々しいお顔の神さまが乗った宝船。「あっ、七福神だ!」となんとなくおめでたい気分になるけれど、全員の名前言えますか?

徳川家康の政治参謀でもあった上野寛永寺の開祖天海僧正が、寿命、富財、人望、清廉、威光、愛敬、大量(大きな度量)を七福とし「為政者のあるべき姿」と説いた。日本古来の守り神・恵比寿と、大陸から渡ってきた大黒天、弁財天、毘沙門天、布袋尊、福禄寿、寿老人を合わせた七福神を信心することで七つの福が備わるとして、七福神信仰が広く民衆にも広まったという。

恵比寿=清廉 : 釣り竿を持ち、大きなタイを抱える

日本列島を作ったとされるイザナギとイザナミの子ども「蛭子命/ひるこのみこと」は、生まれ持った障害のために、幼くして海に捨てられる不幸な運命を背負っていた。しかし、流れ着いた先で大切に育てられ、やがては福をもたらす神となった。

恵比寿は、「夷」「戎」「胡」などとも表記し、異郷から来た人、異邦人を指す。海に囲まれた日本の土着的な漂着物信仰がベースにあるとされる。

恵比寿(PIXTA)
恵比寿(PIXTA)

恵比須さまは、七福神の中でも、日本人にとってとりわけなじみ深い神様だ。というのも、プレミアムビールの草分け「エビスビール」のアイコンとして、スーパーやコンビニでもしばしばお目にかかるからだ。ちなみに、エビスビールは、先行して「大黒ビール」を販売していたメーカーに対抗するために冠した名前だとか。

JR山手線の恵比寿駅は、1901年にビールの積み下ろし専用駅として「恵比寿停車場」が誕生したのが始まり。福の神にちなんでつけたビールの商品名が駅の名前となり、街の名前にもなっている。エビスビールは100年以上にわたる人気商品、恵比寿の町も発展し、まさに福の神。

エビスビール(共同イメージズ)
エビスビール(共同イメージズ)

商業が栄えた江戸時代の関西地域では、恵比寿様に商売繁盛の御利益を求めた。中でも、西宮神社(兵庫県西宮市)や今宮戎神社(大阪市浪速区)は多くの信者を集め、毎年1月9日から11日まで3日間開催される「十日戎(とおかえびす)」は冬の風物詩ともいえる。「商売繁盛笹持って来い!」の掛け声が境内に響き、縁起物の福笹を買い求める人があふれる。西宮神社で1月10日早朝に行われる「開門神事福男選び」は、毎年ニュースでも取り上げられ、全国区の知名度を誇る。表大門が開いた瞬間、門前で待ち構えていた人たちがいっせいにダッシュし、本殿に最初にたどりついた人をその年の「福男」に選ぶ。

西宮神社での福男選び(時事)
西宮神社での福男選び(時事)

大黒天=富財 : 打ち出の小づちと大きな袋を持つ 

インドの暗黒をつかさどる神マハーカーラと、日本の大国主命(おおくにぬしのみこと)が習合したとされる。マハーカーラは「偉大な黒」を意味し、「大国」が「だいこく」とも読めることから、同一視されるようになったようだ。

大黒天(PIXTA)
大黒天(PIXTA)

弁財天=愛敬 : 琵琶(びわ)を弾く天女

インド神話で水の女神。音楽・弁舌・知恵の徳があり、本来であれば「弁才天」だが、日本では財福の神としての性格を持ち、「弁財天」の文字が当てられる。

弁財天(PIXTA)
弁財天(PIXTA)

各地にある「銭洗い弁天」は、金運のパワースポットとして人気。お金を弁天さまの霊水で洗えば、何倍にもなって戻ってくるとか? 東京近郊では、神奈川県鎌倉市の銭洗い弁天が有名。

金運のパワースポット銭洗弁天(PIXTA)
金運のパワースポット銭洗弁天(PIXTA)

毘沙門天=威光 : 甲冑(かっちゅう)姿

勇ましい甲冑姿の武神として戦国の武将から信仰を集めた。特に、上杉謙信は篤く毘沙門天を信仰したことで知られる。ただ、武神としての性格はインドから中国に伝わって際に後付けされたもので、インドでは、財宝を施す施財天だった。左手に宝塔、右手に宝棒を握る。

毘沙門天(PIXTA)
毘沙門天(PIXTA)

福禄寿=人望 : 長い頭、長いひげで鶴を従える

道教の神様での南極星の化身といわれる。子孫繁栄、財運招福、健康長寿のご利益をもたらす。寿老人と同一であるとも、双子であるとも言われる。

福禄寿(PIXTA)
福禄寿(PIXTA)

寿老人=寿命 : 白髪、白ひげで杖を持ちシカを伴う

中国の道教の神様で、見ると寿命が延びるといわれてきた南極星の化身といわれる。福禄寿と同一視されることも多い。ご利益は長寿延命、諸病平癒。

寿老人
寿老人(PIXTA)

布袋=大量 : 半裸の太鼓腹で大きな袋を持ち歩く

七福神の中で、唯一の実在した人物とされる。中国、唐末の禅僧・契此(かいし)がモデル。現代ならば迷惑条例違反で捕まりそうな半裸で市中を歩き、吉凶を占っていたという。笑門来福、夫婦円満の御利益がある。

布袋(PIXTA)
布袋(PIXTA)

七福神巡り

江戸の庶民にとって、七福神巡りは信仰であるとともに、ささやかなレジャーでもあった。都内では、「谷中七福神」や「山手七福神」「隅田川七福神」などが有名。全国各地にも数知れぬ七福神巡りコースが存在する。もともとは、正月の松の内に七福神巡りをするのが良しとされたが、最近では、観光振興の一環として、時期を限らず、小旅行やウオーキングコースとして宣伝に力を入れているところもある。

福神漬け

カレーライスの付け合わせとしておなじみの「福神漬け」は東京上野の漬物店「酒悦」が明治時代に売り出したのが元祖とされる。大根、なす、なた豆、レンコン、かぶ、しそ、瓜の7種類の野菜を細かく刻み、独自にブレンドしたしょう油に漬け込んだ。名前の由来は、「7種類の野菜を七福神になぞらえた」とも、「これさえあれば、おかずはいらないので節約できて財産がたまるから」とも言われる。

福神漬け(PIXTA)
福神漬け(PIXTA)

バナー写真 : PIXTA

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