東日本大震災から12年:被災地と復興の現状
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(2024年3月11日公開の記事 = 東日本大震災から13年 : 被災地と福島第一原発の現状)
巨大地震と大津波
2011年3月11日金曜日午後2時46分、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生。宮城県北部の栗原市で最大震度7を観測したほか、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の8県で震度6弱以上を観測した。その直後に福島県相馬市で9.3メートル以上、宮城県石巻市で8.6メートル以上、岩手県宮古市では8.5メートルの高さとなる大規模な津波が広範囲にわたって沿岸部に押し寄せた。発災直後の避難者は約47万人。仮設住宅などの入居は最大で約12万4000戸に及んだ。
政府が把握した人的被害は、震災発生から3カ月余りの6月20日時点で、死者約1万5000人、行方不明者約7500人、負傷者約5440人に達した。
今も3万1000人が避難
復興庁によると、災害関連死を含めてこれまでの死者は1万9759人、行方不明者は2553人、全壊した住家被害は12万2006棟。22年11月現在、今も3万1438人が避難生活をしている。避難生活の場は全国に及ぶが、うち関東に約1万3800人、東北各県に1万1000人が住んでいる。県外への避難者数は、福島県からが2万1000人、宮城県からが1300人、岩手県からが590人。
住宅、交通インフラ整備はほぼ完了
高台移転による宅地造成(計画約1万8000戸)、災害公営住宅の整備(計画約3万戸)など、住宅の再建・復興まちづくりの事業はほぼ完了。2021年12月に仙台市と青森県八戸市を結ぶ総延長359キロメートルの三陸沿岸道路が全線開通し、復興道路・復興支援道路のインフラ整備がほぼ完了した。鉄道は、20年3月にJR常磐線が全面開通している。
復興庁によると、被災3県(岩手、宮城、福島)の生産設備はほぼ復旧。農業・水産業をみると、津波被災農地の95%(22年9月末)で営農再開が可能に。被災3県の水産加工業は、再開を希望する施設のうち98%で業務を再開した(21年12月)。
原発事故の影響により長く操業自粛を余儀なくされていた福島県の沿岸漁業・底引き網漁業は、21年3月末をもって試験操業を終了。水揚げと流通量を段階的に拡大し、数年後の本格操業移行を目指す。
福島の現状:復興拠点の避難指示解除進む
東京電力福島第1原子力発電所事故による放射線物質の放出・拡散により、原発周辺の6町村の一部が現在も避難指示区域(帰還困難地域)に指定されている。同原発では、廃炉作業が続いている。
政府は、各町村の帰還困難地域のうち優先的に除染が進められている「特定復興再生拠点区域(復興拠点)」で、2022年6月から順次避難指示を解除。これまでに葛尾村、大熊町、双葉町で一部住民の帰還が実現した。23年にも浪江町、富岡町、飯舘村で復興拠点の解除が実現する見通し。をしかし、帰還を望む住民は今のところ、わずかな数にとどまっているのが実情だ。
原発「処理水」近く放出か
福島第1原発で増え続ける「処理水」(核燃料の冷却などに使った汚染水の放射性物質をろ過プロセスで取り除き、除去が難しいトリチウムなどが一部残存している水)について、政府は21年4月13日、これを薄めて海洋放出する計画を承認。ことし1月には「春から夏ごろ」の放出開始を見込むことを確認した。地元漁業者らは、放出に強く反対している。
原発事故賠償訴訟、刑事裁判などの経過
原発事故の避難者が国や東京電力に慰謝料などを求めた全国約30件の集団訴訟で、2022年11月に、国の指針通りの賠償額は「過少」とする判決が相次いで確定。東京電力は1月末、新たな支払い基準を公表した。慰謝料は1人当たり最高で280万円増額される。
福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電の勝俣恒久元会長(82)ら旧経営陣の被告3人の控訴審で、東京高裁は1月18日、一審東京地裁に続き、いずれも無罪の判決を言い渡した。判決は「巨大津波が襲来する現実的な予見可能性はなかった」とした。
一方、東電株主が旧経営陣に損害賠償を求めた訴訟では、東京地裁が22年7月、甚大な事故を招く規模の津波は予測できたとして3人を含む4人に約13兆円の賠償を命じる判決を出した(双方が控訴)。
バナー写真:JR双葉駅前で行われた住民有志らによる避難指示解除を祝うイベント=2022年8月30日未明、福島県双葉町(時事)