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2023年は卯年: ウサギにまつわるあれこれを 

文化 社会

2023年の干支(えと)は癸卯(みずのとう)。干支はもともと、古代中国の思想・陰陽五行説から発生したもので、本来は十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)の組み合わせだが、現代の日本では、十干に言及されることは少ない。動物と結びついた十二支は年賀状のイラストやその年を象徴するキャラクターとして使われることも多く、小さな子どもにまで定着している。卯年にちなみ、ウサギにまつわるあれこれを。

モフモフしてコロンと丸くてかわいいウサギ。ペットとして人気が高いのはネザーランドドワーフやホーランドロップなどの外来種。

日本にも古くからウサギが生息しており、伝説や童謡の題材となっている。日本固有種には、本州・四国・九州に広く分布するニホンノウサギ(ニホンノ+ウサギではなく、ニホン+ノウサギ)、北海道に生息するエゾユキウサギとエゾナキウサギ、奄美大島と徳之島にのみ生息するアマミノクロウサギがいる。特にアマミノクロウサギは世界で現存するウサギ科の中でも最も原始的なタイプで、「生きた化石」とも呼ばれる。

一番有名な神話 「因幡の白うさぎ」

サメをだました仕返しに毛皮を剥がれた上に、海の水で身体を洗って痛がる白うさぎに、大国主命(おおくにぬしのみこと)がガマの花の上に転がるように教え、傷が癒された ― 小学校の国語の教科書にも採用されている「いなばの白うさぎ」は古事記に収録されている物語。日本神話の中でも、最もよく知られているものの一つだ。

「因幡国」は現在の鳥取市周辺。因幡の白うさぎは同市の白兎(はくと)神社に祭られている。

うさぎ「おいしい」?

童謡『ふるさと』にもウサギが登場する。冒頭の “うさぎ追いしかの山 小鮒(こぶな)釣りしかの川” を子どもの頃は「うさぎおいしい」と思い込んでいたという人も少なくないようだ。「し」は古語で過去時制の助動詞。「うさぎを追いかけたあの山、小鮒を釣ったあの川」と故郷の情景を懐かしんでいる。

“リンゴのウサギさん” は子どものいる家庭ではおなじみのカット。こちらは「ウサギおいしい」。

卯の刻=日出

干支は、年、月、日、時間、方位などを示すためにも使われる。「子」から始まり時計回りに12等分すると、「卯」は東の方角。「卯の刻」は午前6時を中心とする前後2時間で、1日が動き出す時間に当たる。

うさぎにまつわることわざや慣用句

【脱兎のごとし】
逃げ出すウサギのように非常に素早い様子。もともとは、古代中国の兵法書「孫子」にある「はじめは処女のごとく、後は脱兎のごとし」=「はじめは処女のように弱々しくみせて敵を油断させ、後で脱兎のごとくすばやく行動すれば、敵はふせぎようもない」から来ている。(「孫子」は紀元前500年頃。現代のジェンダー感とは全く異なる時代の言い回し)

【うさぎに祭文】
うさぎに祭文を聞かせても意味がないのと同じで、いくら意見しても効き目がないことのたとえ。「馬の耳に念仏」とほぼ同義。

【うさぎの糞】
ものごとが途切れて続かないことのたとえ

【兎角】
「あれやこれや」「ともすれば」など、ものごとを漠然と指す言葉。兎も角も当て字。夏目漱石は『草枕』の冒頭で「兎角に人の世は住みにくい」と世間の窮屈さを嘆いた。

編集部より 
卯年にちなんで天然記念物のアマミノクロウサギの生態に迫るコンテンツを公開しました。30年以上にわたってアマミノクロウサギを追い続けている写真家の奇跡のショット満載です! 
【Photos 】アマミノクロウサギ : 世界自然遺産の島に生息する至宝

バナー写真・文中写真は全てPIXTA

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