日本を代表する秋の花 : 菊
文化 暮らし 社会
日本の秋を代表する花といえば菊。仏花・献花として用いられることが多いためか、不祝儀などのネガティブイメージもあるが、皇室やパスポートの紋章となっていることから分かるように、日本人にとっては古くから高貴で特別な存在だった。
- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
中国で古来、薬用や食用として栽培されていた菊が日本にもたらされたのは、平安時代頃。五節句の一つである「重陽の節句=9月9日」も中国から伝わったもので、菊花の薬効に、健康と不老長寿への願いを託した。
江戸時代前期頃から栽培熱が高まり、さまざまな品種が生み出されるようになった。菊花壇、菊人形など様々に仕立てた菊を観賞する風習も生まれた。幕末から明治初期には、本家の中国や欧州へ渡り、一大園芸ブームを巻き起こした。
皇室の紋章として菊花が使われるようになったのは、鎌倉時代初期の後鳥羽上皇が菊の意匠を好み、愛用したのが始まりといわれる。明治期に「十六弁八重菊花紋」が天皇家の家紋と定められ、大正15年の皇室儀制令で図形として細かく確定された。
菊は日本を代表するエディブル・フラワーでもある。湯がいてお浸しするのが一般的な食べ方で、ほのかな花の香りとほろ苦さ、シャキシャキとした食感が特徴。代表的な品種「延命楽(えんめいらく)」の産地・山形県では「もってのほか」の愛称で親しまれる。「天皇家の御紋である菊を食べるなど、もってのほか!」と言いながら食べるようだ。
多くの人が “飾り” と思い込んでいる刺身のツマなどに添えられる黄色い小菊も実は食用。といっても、丸ごと食べるわけではない。花びらを引き抜いてしょう油に散らして刺身にからませるようにして食べる。ほのかな香りと苦みがアクセントとなる。
バナー写真 : PIXTA