真鍋淑郎氏にノーベル物理学賞 : 日本出身のノーベル賞受賞者一覧
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気候変動や地球温暖化がグローバルな課題として本格的に意識されるようになったのは、地球環境サミットの開催、京都議定書の採択などがあった1990年代以降。ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏は、1958年に渡米、大気と海洋の数値計算モデルを結合し、気候変動の仕組みをシミュレーションを可能にする「気候モデル」の手法を確立。1971年には「大気中の二酸化炭素濃度増加による将来の気候変化予測」の論文を発表するなど、現在の地球温暖化や気象研究の礎を築いた。
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2021年のノーベル物理学賞は、二酸化炭素などの温暖化ガスによって、地球温暖化が引き起こされることを理論的に示したプリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎氏ら3人が受賞することが決まった。真鍋氏は日本出身で、米国籍を取得している。
日本出身者のノーベル賞受賞は29人目(米国籍の南部陽一郎氏、中村修二氏、真鍋氏、英国籍のカズオ・イシグロ氏も含む)。物理学賞は、日本で最初の物理学賞受賞者となった湯川秀樹氏(1949年)以降、朝永振一郎氏(65年)、江崎玲於奈氏(73年)、小柴昌俊氏(2002年)、南部陽一郎氏(08年)、小林誠氏(08年)、益川敏英氏(08年)、中村修二氏(14年)、天野浩氏(14年)、赤崎勇氏(14年)、梶田隆章氏(15年)が受賞しており、真鍋氏は12人目となる。
真鍋淑郎氏のプロフィール
1931年9月21日 愛媛県新宮村(現・四国中央市)生まれ。53年東京大学理学部卒業、58年同大理学博士号取得。68年米国海洋大気庁上席研究官、米プリンストン大学大気海洋科学講座・教授待遇講師、1972~80年米国学術会議気候変動委員、85~87年プリンストン大学大気海洋科学講座委員会委員長、90年米科学アカデミー会員選任
受賞年 | 賞 | 氏名、業績 |
---|---|---|
2021 | 物理学賞 | 真鍋淑郎(まなべ・しゅくろう)=米国籍 米プリンストン大上席研究員 二酸化炭素濃度の上昇が地球温暖化に影響する予測モデルを発表 |
2019 | 化学賞 | 吉野彰(よしの・あきら) 旭化成名誉フェロー リチウムイオン電池の発明 |
2018 | 医学生理学賞 | 本庶佑(ほんじょ・たすく) 京都大学特別教授 がんの免疫療法の開発 |
2017 | 文学賞 | カズオ・イシグロ = 英国籍 作家 感情に強く訴える小説群 |
2016 | 医学生理学賞 | 大隅良典(おおすみ・よしのり) 東京工業大学栄誉教授 細胞内で不要なたんぱく質を分解、リサイクルする「オートファジー(自食作用)」の仕組みを解明 |
2015 | 物理学賞 | 梶田隆章(かじた・たかあき) 東京大学宇宙線研究所所長 業績:素粒子ニュートリノの振動を発見した功績 |
医学生理学賞 | 大村智(おおむら・さとし) 北里大学特別栄誉教授 業績:寄生虫による感染症の治療薬開発に貢献 | |
2014 | 物理学賞 | 赤崎勇(あかさき・いさむ) 名城大学教授、名古屋大学名誉教授 業績:青色発光ダイオード(LED)の開発に貢献 |
天野浩(あまの・ひろし) 名古屋大学教授 業績:同上 | ||
中村修二(なかむら・しゅうじ)=米国籍 米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授 業績:同上 | ||
2012 | 医学生理学賞 | 山中伸弥(やまなか・しんや) 京都大学iPS細胞研究所長・教授(受賞時) 業績:さまざまな組織の細胞になる能力がある「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を開発 |
2010 | 化学賞 | 根岸英一 (ねぎし・えいいち) 米パデュー大学特別教授(受賞時) 業績:「有機合成におけるパラジウム触媒を用いたクロスカップリング」に成功 |
鈴木章 (すずき・あきら) 北海道大学名誉教授(受賞時) 業績:同上 | ||
2008 | 物理学賞 | 南部陽一郎 (なんぶ・よういちろう)=米国籍 米シカゴ大学名誉教授 業績:「自発的対称性の破れ」の発見 |
小林誠 (こばやし・まこと) 高エネルギー加速器研究機構名誉教授(受賞時) 業績:「CP対称性の破れ」を理論的に説明した「小林・益川理論」を提唱 | ||
益川敏英 (ますかわ・としひで) 京都大学名誉教授(受賞時) 業績:同上 | ||
化学賞 | 下村脩 (しもむら・おさむ) 米ボストン大学名誉教授(受賞時) 業績:「緑色蛍光タンパク質(GFP)」の発見・開発 | |
2002 | 化学賞 | 田中耕一 (たなか・こういち) 島津製作所フェロー(受賞時) 業績:生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発 |
物理学賞 | 小柴昌俊 (こしば・まさとし) 東京大学名誉教授(受賞時) 業績:岐阜県に建設された素粒子観測装置、カミオカンデで素粒子ニュートリノを世界で初めて観測 | |
2001 | 化学賞 | 野依良治 (のより・りょうじ) 名古屋大学理学部教授(受賞時) 業績:ルテニウム錯体触媒による不斉合成反応の研究 |
2000 | 化学賞 | 白川英樹 (しらかわ・ひでき) 筑波大学名誉教授(受賞時) 業績:電気を通すプラスチック、ポリアセチレンの発見 |
1994 | 文学賞 | 大江健三郎 (おおえ・けんざぶろう) 作家 業績:『個人的な体験』(1964)などの作品を通じ、現実と神話が密接に凝縮された想像の世界をつくりだし、現代における人間の様相を衝撃的に描いた |
1987 | 医学生理学賞 | 利根川進 (とねがわ・すすむ) 米マサチューセッツ工科大学教授(受賞時) 業績:「抗体の多様性生成の遺伝的原理」の発見 |
1981 | 化学賞 | 福井謙一 (ふくい・けんいち) 京都大学工学部教授(受賞時) 業績:化学反応と分子の電子状態に関する「フロンティア電子理論」を樹立 |
1974 | 平和賞 | 佐藤栄作 (さとう・えいさく) 元首相 業績:非核三原則を提唱するなど太平洋地域の平和に貢献 |
1973 | 物理学賞 | 江崎玲於奈(えさき・れおな) 米IBMワトソン研究所主任研究員(受賞時) 業績:半導体におけるトンネル現象の実験的発見 |
1968 | 文学賞 | 川端康成 (かわばた・やすなり) 作家 業績:代表作『伊豆の踊子』(1927)や『雪国』(1935-1937)を通じ、微細な感受性をもって日本人の心の神髄を表現した |
1965 | 物理学賞 | 朝永振一郎 (ともなが・しんいちろう) 東京教育大学教授(受賞時) 業績:水素原子のスペクトルの観測データと予測値のずれの解決に超多時間理論が有効であると考え、これを発展させた「繰り込み理論」を完成 |
1949 | 物理学賞 | 湯川秀樹 (ゆかわ・ひでき) 京都大学理学部教授(受賞時) 業績:原子核の陽子と中性子を結びつける粒子、中間子の実在を理論的に予言した |
バナー写真 : ノーベル物理学賞を受賞し、米プリンストン大学で会見する真鍋淑郎氏 (ロイター、2021年10月5日)