大学院生の16%は借金300万円以上!? : 深刻な高学歴ワーキングプア問題
経済・ビジネス 教育 仕事・労働 社会
「末は博士か大臣か」―かつては、子どもの将来に期待を込める言葉だった。ところが、今や、博士になっても、大学内でポストが得られず、期付きの不安定な研究職を転々とする「高学歴ワーキングプア」になりかねない。博士を目指人が減少しているという。
- English
- 日本語
- 简体字
- 繁體字
- Français
- Español
- العربية
- Русский
文部科学省の科学技術・学術政策研究所の調査で、2020年度に大学院修士課程を修了した人の35.9%が返済義務のある奨学金や借金を抱えていることが分かった。借入金がある人の半分(全体の16.5%)は300万円以上だった。
分野別では、「理学」「工学」「農学」は借金を抱えている人の割合40%を超えるなど、文系に比べて理系の方が経済的に厳しい状態に置かれているようだ。特に、医歯薬学系を含む「保健」は、借金が300万円以上の人の割合が22.9%だった。
修士課程修了者の進学率は2000年度の16.7%をピークに漸減傾向が続き20年度は9.4%ま低下している。背景には、経済的な事情があると言われる。
博士課程を修了しても、大学内のポストは限られているため、准教授、教授への道が約束されているわけではない。任期付きの研究職として不安定な生活を強いられる「高学歴ワーキングプア」が社会問題化している。一方で、民間企業も博士号取得者の採用にそれほど積極的ではなく、学部卒業生との待遇の差が小さい。
修士課程から進学ではなく、就職を選択した人にその理由を聞いたところ、「社会に出たい」「経済的に自立したい」がともに6割を超えた。その一方で、「進学すると経済的見通しが立たない」38.3%、「進学のコストに対して、生涯賃金などのパフォーマンスが悪い」30.6%など、博士課程まで進んでも、経済的な保障がないことへの不安が透けて見える。
修士に在籍する観点から、博士課程進学者を増やすための効果的な政策を聞いたところ、「博士後期課程での給与支給」「若手研究者の研究環境改善」「産業界における博士取得者に対する給与等処遇改善」などが多かった。
バナー写真 : PIXTA