日本の原子力発電所マップ 2021年版
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福島第1原発の事故から10年を経て、2021年3月時点で日本国内で稼働している原発は9基(定期検査中のものも含む)。いずれも、事故を起こした福島第1とはタイプが異なる「加圧水型」で、西日本に集中している。東京電力は新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働を目指しているが、今年に入って同原発での不祥事が相次いで発覚、地元の不信感は強まり、再稼働への道のりは険しくなった。
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東日本大震災の発生前、日本には54基の原発があり、日本で使う電力の30%前後を原子力で賄っていた。しかし、東京電力の福島第1原子力発電所の事故により、原発に対する不信感や不安感が強まり、原発の位置づけは大きく変わった。
事故から10年が経過した2021年3月時点で地元の同意を得て再稼働した原発は大飯(関西電力)、高浜(関西電力)、玄海(九州電力)、川内(九州電力)、伊方(四国電力)の5発電所の9基のみ。西日本エリアに集中しており、いずれも事故を起こした「沸騰水型」の福島第1原発とはタイプが異なる「加圧水型」だ。一方、東日本大震災以降に廃炉が決定した原発は21基に上る。
2020年11月、宮城県の村井嘉浩知事が女川原発2号機(東北電力)の再稼働への同意を表明した。女川原発は、震災で屋外重油タンクが倒壊、冷却系が浸水するなどの被害があり、さらに、福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉であるため、地元住民からは慎重な意見も根強い。一方で、発電所の稼働は地元に雇用を創出し、自治体に核燃料税、固定資産税などの収入増も期待されることから、「最後まで悩んだ」上での受け入れ表明だった。
一方、柏崎刈羽原発(東京電力)では、2020年3月以降、外部からの侵入を検知できない状態が続いていた。原子力規制委員会は21年3月16日、「核物質防護上、重大な事態になり得る状況にあった」として、4段階評価のうち最も深刻なレベルと判断した。同原発では、20年9月に、他人のIDカードで中央制御室に入室する事案が発生するなど不祥事が相次いでいる。東電は、収益改善の柱として柏崎刈羽に再稼働を目指してきたが、度重なる不祥事で、地元同意は遠のいた。
東日本大震災以降の原発をめぐる主な動き
11年3月 | 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故 |
12年5月 | 泊原発(北海道電力)3号機が運転停止、42年ぶりに国内の原発稼働ゼロ |
12年6月 | 原発の運転期間が原則40年までに延長 |
12年7月 | 大飯原発(関西電力)3、4号機が再稼働 (原発ゼロ2カ月ぶり解消) |
12年9月 | 原子力規制委員会発足 |
13年7月 | 自然災害やテロ攻撃に備える原発の新規制基準施行 |
13年9月 | 大飯原発3、4号機が定期検査入り、再び原発ゼロ |
14年4月 | 第4次エネルギー基本計画閣議決定「原発は重要なベースロード電源」と位置付ける一方で、「再生可能エネルギーの導入などで原発依存度は可能な限り低減」 |
15年8、10月 | 川内原発(九州電力)1、2号機再稼働 (新基準施行後最初の再稼働、原発ゼロ1年11カ月ぶり解消) |
16年1、2月 | 高浜原発(関西電力)3、4号機再稼働 |
16年8月 | 伊方原発(四国電力)3号機再稼働 |
18年3月、5月 | 大飯原発3、4号機再稼働 |
18年3月、6月 | 玄海原発(九州電力)3、4号機再稼働 |
18年7月 | 第5次エネルギー基本計画閣議決定 「2030年度に原発による発電比率を20~22%にする」 |
20年11月 | 宮城県の村井嘉浩知事が女川原発(東北電力)再稼働に同意。事故を起こした福島第1と同じ沸騰水型としては初。 東北電は2020年度以降の稼働目指す |
20年12月 | 大阪地裁が大飯原発3・4号機の設置許可取り消し命じる(国は控訴) |
21年1月 | 柏崎刈羽原発(東京電力)で20年9月に中央制御室に入室するIDカードが不正使用されていたことが発覚 |
21年3月 | 柏崎刈羽原発で20年3月以降、外部からの侵入を検知する設備が故障し、十分な代替措置が取られていなかったと原子力規制委員会が発表 |
21年4月 | 政府は、福島第1原発でたまり続けるトリチウムを含む処理水を、希釈した上で、海洋放出する方針を決定 |
21年4月 | 柏崎刈羽原発のテロ対策に不備があった問題で、原子力規制委員会が、状況の改善が追加検査で確認されるまで同原発内での核燃料の移動を禁じる是正措置命令を正式決定。再稼働の準備は凍結 |
21年4月 | 福井県の杉本達治知事が運転開始から40年を超える美浜原発(関西電力)3号機と高浜原発(関西電力)1・2号機の再稼働に同意を表明。福島第1原発の事故後、原則40年とされた運転期間を超える原発の再稼働に地元が同意したのは初めて |
バナー写真 : 柏崎刈羽原子力発電所(PIXTA)