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東日本大震災から9年:被災地と復興の現状

社会

2011年の東日本大震災発生から3月11日で丸9年。復興の現状と福島の状況をまとめた。

避難生活者は4万8000人

復興庁が2020年2月10日現在でまとめた震災による避難生活者は約4万8000人と、この1年で6000人減少した。災害公営住宅は計画の99%にあたる約3万戸が完成。津波で甚大な被害を受けた宮城県石巻市では20年1月、プレハブ型仮設住宅に入居していた最後の1世帯の退去が完了した。

震災後の避難生活による体調悪化、自殺などによる「震災関連死」は、この1年で38人増えた。

  2019 2020  
震災死者 1万5897人 1万5899人 警察庁、19年12月10日現在
行方不明者 2534人 2529人 同上
震災関連死 3701人 3739人 復興庁、19年9月末
避難生活者 約5万4000人 約4万8000人 復興庁、20年1月

常磐線が全面開通へ

復興庁によると、2018年度末までに被災地の住宅再建、防災集団移転、区画整理など「まちづくり」に関わる事業はほぼ終了した。防潮堤のかさ上げなど「海岸対策」は19年度末までに計画の99%が着工し、66%の工事が完了する予定。また、震災と原発事故で不通になっていたJR常磐線が3月14日に全面開通する。

被災3県(岩手県、宮城県、福島県)の製造品出荷額等は、震災前の水準まで回復。復興庁は、2020年3月末で農地復旧事業はおおむね完了するとしている。福島県の水産業は、漁港などのハード面の復興は進んでいるものの、原発事故の風評で低迷している。

産業

  2014 2018 2019
津波被災農地のうち、営農再開が可能となった面積の割合 63% 89% 92%
業務再開した水産加工施設の割合 80% 95% 96%

(復興庁、2020年3月)

19年に日本で開催したラグビー・ワールドカップ(W杯)では9月、岩手県釜石市で1次リーグの試合があり、復興を世界に強く印象付けた。

ラグビーW杯のフィジー-ウルグアイ戦で、両国の国旗を持って盛り上がる地元小学校の児童ら=2019年9月25日、岩手・釜石鵜住居復興スタジアム (時事)
ラグビーW杯のフィジー-ウルグアイ戦で、両国の国旗を持って盛り上がる地元小学校の児童ら=2019年9月25日、岩手・釜石鵜住居復興スタジアム (時事)

福島の現状:避難指示区域は徐々に縮小

東京電力福島第1原子力発電所事故による放射線物質の放出・拡散により、原発周辺の双葉町、大熊町、浪江町の一部などが現在も避難指示区域に指定されている。東京電力福島第1原発では、廃炉作業が続いている

避難指示区域は①放射線量が高く、立ち入り制限のある「帰還困難区域」、②「居住制限区域」、③住民の帰還に向けた復旧・復興準備を進める「避難指示解除準備区域」の3種類があったが、2014年4月から徐々に縮小し、現在は「帰還困難区域」が残るのみだ。避難指示が解除された地域では住民が戻る動きも出ている。

福島第1原発の立地自治体で全町避難が続いていた大熊町(人口約1万人)では、19年4月に避難指示の一部が解除され、町西部でようやく一部住民の帰還が実現した。また、20年3月にはJR常磐線の全線開通に合わせ、双葉町や大熊町、富岡町のJR線路や駅周辺も、新たに避難指示が解除された。

福島県によると、20年2月の時点で約4万人が避難生活を余儀なくされており、うち約3万人が県外で暮らす。県内の住宅、公共施設などの除染はおおむね終了し、空間放射線量は低下傾向にある。

東電旧経営陣3人に無罪判決

福島第1原発事故を巡っては、業務上過失致死傷罪で強制起訴された勝俣恒久・東電元会長ら旧経営陣3人の刑事裁判の判決が19年9月19日に東京地裁であり、永渕健一裁判長は全員に無罪を言い渡した。

検察役を務める指定弁護士は3人に禁錮5年を求刑していた。永渕裁判長は最大の争点だった巨大津波を予見できたか否かについて、「予見可能性を認めることはできない」と判断した。3人は08年から09年にかけて10メートルを超える予想津波高を聞いており、指定弁護士側は「予測を聞いた時点で安全対策を進める義務が生じた」と主張したが、判決は「3人の対応は特異ではない」と退けた。

震災の津波で犠牲となった石巻市立大川小学校の児童23人の遺族が市と県に約23億円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷は19年10月、市と県の上告を退ける決定をした。学校の防災体制に不備があったとして市と県に約14億3600万円の支払いを命じた二審の仙台高裁判決が確定した。

バナー写真:東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故により不通となっているJR常磐線で試運転が行われ、整備中の双葉駅に停車する列車=2019年12月18日、福島県双葉町(時事)

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